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<食品製造>菓子製造 株式会社ブールミッシュ

●株式会社ブールミッシュ 吉田菊次郎(2007年12月20日更新)

全国のデパートを中心に100店舗以上を展開するブールミッシュの店主、吉田菊次郎氏。テレビ出演多数、著書は60冊を超え、2005年秋に天皇皇后両陛下の園遊会にも招待された。
29才のとき、渋谷の静かな通りで工場わずか5坪の小さな店を開業してから44年。ゼロからここまで積み上げた吉田社長に、ターニングポイントになった出来事についてお伺いした。

片道切符で渡ったフランスで神風が吹いた

吉田菊次郎社長は、父方も母方も菓子店という家に生まれた。父は、菓子店のほかにも手広く商売していたが、吉田社長が大学3年生のときに左前になり、4年生のときに倒産した。吉田社長も、大学3年生の頃から工場に入り、卒業後は菓子店に修業に出たが、負債返済に目処が立った頃、「やっぱりもう一度、吉田家の菓子店を作りたい」という思いが強くなった。なけなしのお金で片道切符を買い、退路を断った状況でフランスに旅立った。

代表取締役社長:吉田菊次郎
代表取締役社長:吉田菊次郎
フランスでは、何軒かの門を叩いたあと、一軒の菓子店に潜り込むことができた。そのうち、お菓子の世界コンクールがはじめて開催されると知り、自分も出ることにした。ここで個性を出すには、日本らしいものがよいと、姫路城を思いついた。いかにも東洋的で、エキゾチックな日本の城は、目につくだろうと思うものの、おぼろ気な記憶しかない日本の城は、ケーキにするには情報が足りない。

そこで、日本の友人に姫路城のプラモデルを送ってもらった。それぞれのパーツを計測して何倍かにし、瓦の1枚1枚まで手作りすると、6週間がかりでの製作となった。最後は徹夜の連続で、完成したときは立っているのもやっとの状態だった。

しかし、自分の作品を持って会場に入った途端、打ちひしがれることとなる。はじめての世界コンクールに集った作品群は、どれもありったけの趣向を凝らしたもので、飴細工のきらびやかな作品が並ぶなか、姫路城はなんとも地味で、みすぼらしくさえ見えた。

消え入りたい気持ちで立っていると、思いもがけず銅賞で「KIKUJIRO YOSHIDA」の名前が出てきた。その後、コンクールづき、コンクールの常連たちと仲良くなって、「またジャポネきたか」「カミカーズ(神風)吉田」と呼ばれるようになった。

帰国後初のクリスマスには、渋谷駅構内で500台を販売

日本に帰ってきて、東京・渋谷に店を出したのは1973年3月、29才の時だった。場所は渋谷あたりがいいと思ったが、人のにぎわう道玄坂は高くて出せない。駅裏にまわり、当時まだひっそりとしていた区役所通り(現公園通り)に建設中の賃貸ビルをみつけ、そこの中2階でスタートした。

ブールミッシュの代表的菓子。世界食品コンテスト モンド・セレクションで2007年にはトリュフケーキ、ガトー・オ・マロンいずれも最高金賞を受賞した
ブールミッシュの代表的菓子。世界食品コンテスト モンド・セレクションで2007年にはトリュフケーキ、ガトー・オ・マロンいずれも最高金賞を受賞した
オープン初日の売り上げは、友人を除くと3000円。隣にあったイタリアンレストランに挨拶に行き、毎日5コずつデザートを買ってもらうことにした。これが当時の貴重な売り上げとなった。
そのうち渋谷公会堂、NHKと次々に引っ越してきて、通りがにぎわうようになった。区役所通りはおしゃれな「公園通り」へと変貌し、特集記事も組まれるようになり、ブールミッシュも時々は、そこで小さく紹介されるようになった。

ところで、はじめてのクリスマスには、もうひとりいた職人と2人で気負って800台ものクリスマスケーキを作った。閉店時間までに300台は売ったが、まだ500台も残っている。
「そうだ!渋谷の駅に行ってみよう」と飛び込みで駅長さんを尋ね、「いいとはいえないけれど、わたしは知らないことにしよう」と話がついた。酔っぱらい相手に値切られながらの販売となったが、ともかく8台を残してあとはすべてお金にかわった。「何もないと、何でもできるんですね」と吉田社長は当時を振り返る。

デパートへの出店100店舗までの道のり

どういう菓子店をめざすかは、「最初の志ひとつだと思います」と吉田社長はいう。菓子店のめざす道はいろいろある。こだわりの一店を作り込むもよし、多店舗、他業種に展開するもよし。吉田社長は、父が手広くやっていたので、全国をカバーする形にしたい、と最初から思っていた。

2004年7月、父がかつて商いをしていた銀座に本店を構えた。このとき、ブールミッシュの第2ラウンドがはじまった
2004年7月、父がかつて商いをしていた銀座に本店を構えた。このとき、ブールミッシュの第2ラウンドがはじまった
しかし、最初は失敗の連続だった。なんとかデパートに出店するも、ギフト商品をもっていなかったので、売り上げが伸びず、出店した順に退店を言い渡された。

あるとき、吉田社長のテレビ出演を見たと、渋谷西武から出店の声がかかった。ありがたい話には違いないのだが、「また失敗したら」と思うと怖くて返事ができない。その頃には5坪の渋谷工場から15坪の都立大の工場に移っていた。最後には、「渋谷の店まで運んでるんでしょ、ついでに置いてってくれればこっちで売りますから」と言ってもらい、ようやく出店を決めた。

出店は、菓子売り場リニューアル時となった。有名どころのきれいな菓子店が並ぶなかで、似たようなきれいな店では目立たない。焼き菓子専門の茶色い店にしよう、と決めた。

最新の著書「クリムとドリムのお菓子を巡る冒険」。『なんでドーナツってあながあるの?』はじめ、大人も子供も楽しめる人気シリーズの3冊目。写真入りレシピでは、吉田社長本人が腕をふるっている
最新の著書「クリムとドリムのお菓子を巡る冒険」。『なんでドーナツってあながあるの?』はじめ、大人も子供も楽しめる人気シリーズの3冊目。写真入りレシピでは、吉田社長本人が腕をふるっている
ところが、決めはしたが自信はない。色とりどりのきれいな店のなかにある茶色い店はいかにも地味で、人が集まるとは思えない。オープンに立ち会うのも避け、お昼頃、おそるおそる店長に電話すると、「売れてますよ」という。「うそ、売れてるわけないだろう」と見に行くと、エスカレーターを下りきらないうちに、黒山の人だかりが見えた。うちの店だった。
このとき、ほかと違うことをするのはよいことなのだ、と改めて思った。ほかと異なるを良しとする、これは、フランス的な考えで思いついたアイデアだった。

「なくてもいいけど、あるともっと楽しい。お菓子は文化」

今後の事業展開について吉田社長に伺った。
「日本の場合、ひとつのブランドで50~60億円ぐらいがいいところだと思う。もっと大きくできなくはないが、それではどこにでもある店になってしまう。どこに出店するかについては、今思い出しても胸のいたくなるような思いをしたことがある。私も古い人間、義理人情は貫きたいので、それ以降は1地域1店舗を徹底している。どうしても出す必要が出た場合のために、2番目のブランドを作った。これが、ガトー・ド・ボワイヤージュ。こちらも、いまは10数億円規模にまで育ってきた。その次のブランドは、種をまいたところ」

南舟子という俳号ももつ。49才になって、父の趣味であった俳句をはじめた。今年7月にははじめての句集を発行している。ここには、ブールミッシュ創業直後に亡くなった父への思いのほか、公私にわたる吉田社長の素顔が垣間見える
南舟子という俳号ももつ。49才になって、父の趣味であった俳句をはじめた。今年7月にははじめての句集を発行している。ここには、ブールミッシュ創業直後に亡くなった父への思いのほか、公私にわたる吉田社長の素顔が垣間見える
「お菓子というのは、つねに変化を求められるが、流行に振り回されてはいけない。流行をおさえ、自らが流行をつくっていく。すごくエキサイティングな世界。
そして、残らない世界でもある。音楽や演劇と同じで、終わった後、ステージにはなにも残らない。我々も食べ終わったあとに、お客様にどれだけのインプレッションを残せるかが勝負です。だから、想像力と創造力、どちらも必要なんです。
ある時、ふと『あーあのお菓子、また食べたいな』と思い出していただく。そこまでの仕掛けをするのが、我々の仕事です」

「人間も動物ですから、保守的です。たとえばケーキを買うとなると、ひとつしか食べないのだから、失敗のないよう、いつもの食べ慣れた味を選びます。しかし、提案する我々は、新しい味を試して欲しい。それがおいしかったとなると、お客様の味覚の幅を広めていただくことができる。お客様の味覚の幅を広げ、よりクオリティの高い生活をしていただく。そのための伝道者でありたいと思っています」

「今年10月からは、兼ねてから準備してきた学校をはじめました。ブールミッシュ製菓アカデミーは、現在はアマチュア向けコースだけですが、プロ向けのコースもそのうちはじめます。ここでは、菓子店の経営も教えたい。
自分のところからも独立していく人は多いが、2、3年後には音信不通になることも少なくない。独立するとなると、ご両親が喜びいさんで退職金をつぎ込まれるケースも多い。しかし、じつのところは、店をもつことは誰にもできるが、継続することが難しい。これまでは菓子店が経営の勉強をする場所はなかったが、途中で挫折する菓子職人を増やしたくはない。経営のことや資金の集め方、お金の借り方なども教えていきたい」

会社概要
商号:株式会社ブールミッシュ
創業:昭和48年3月3日
設立:昭和57年12月15日
従業員数:330名
代表取締役社長:吉田菊次郎
事業内容:洋菓子製造販売および飲食店経営
本社所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座1-2-3
URL:https://www.boulmich.co.jp/top.html

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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