月刊ベンチャー・リンク 2008年7月号より
<2008.7月号特集>case1希望社(岐阜県)
(2008年9月11日更新)
不常識な経営術により社員が進んで働く会社
「働かせている会社」と「働かされている社員」。ありがちな負の構造にメスを入れ、希望社の桑原耕司会長は「社員が進んで働ける場」を作り上げた。常識にとらわれない「不常識」の経営術が注目を浴びている。
談合を完全否定し利益を顧客に還元
「談合しない」。希望社の本社社屋には通りすがりでもひと目で分かるほどの大きな垂れ幕が掛かっている。競争入札で参加者が事前に入札価格と落札者を裏取り引きする談合は、公共事業にはびこる悪習だが、民間工事の受注でも行なわれることがあるという。ただ、談合は建設会社が共存共栄を図る手段としての側面もあることから、なかなか排除できないのが実情だ。日本の建設業界では、談合を表立って真正面から否定する会社は異端視されかねない。
「非常識は常識を知らないことですが、私は不常識。つまり常識にとらわれないことを実践していきたいのです」
きっぱりと言う桑原耕司会長が、あえて業界の常識を打ち破ろうとしている根底には、会社創業の目的を「よい建築を安く実現して世の中に役立つこと」と定めたことがある。ゼネコン(総合建設会社)とその系列業者、設計事務所などの馴れ合いにより割高になる建築費。希望社は、綿々と続いてきた悪しき構図を否定し、施主に代わって、設計者、総合建設会社、専門工事業者などを選定・監理することで建築費の大幅な引き下げを実現した。
希望社では、儲け第一主義に走ることがないよう徹底している。健全に経営していくための利益は確保するが、それ以上の利益は求めず、顧客に還元するのが希望社の経営方針だ。売り上げを維持するための赤字仕事はせず、余分に稼げるチャンスがあっても、適正利潤にとどめた仕事をする。今の建設業界では常識とされる企業活動とは逆をいくのが、希望社の「不常識な経営」なのである。
適正な利潤を目指す希望社だからこそ、仕事の成果はそっちのけで給料をもらうことが目的の「ぐうたら社員」は徹底的に排除している。
また、既成概念にとらわれず、色々な取り組みを実験していることから、桑原会長は自分の会社を「実験牧場」と呼ぶ。
就業時間を定めず労働意欲を高める
桑原会長が希望社を創業したのは1988年。大手ゼネコンの清水建設に28年間勤めてからの起業であった。サラリーマン生活を送る中で感じたことは、働かされている社員が、いかに多いかということだ。会社と社員は「働かせる」と「働かされる」の関係にあることを思い知らされる場面を嫌というほど見てきた。
「社員が進んで働く会社を作りたい。それが希望社創業のきっかけの1つでした」
そう振り返る桑原会長が希望社を創業して打ち出した経営方針の1つが、「社員には時間でお金を払わない」である。仕事の実績に応じて給料を支払う仕組みとして、就業時間は特に定めない。年齢、性別、学歴の差もなく、好きな時間だけ働けばいい。
この自由さが様々な社員の特性を引き出した。ある社員は、部下をつけると体調が悪くなるが、法務関係には秀でていて、毎日、午後出社でコツコツと自分の役割を果たしている。また、フラメンコで世界コンクールに出場する夢を抱いた女性社員は、仕事の時間を制限しながらも自らの役割はきちんとこなして、仕事とフラメンコを両立し、見事に世界コンクール出場を成し遂げた。さらに、経費をすべて自分で負担し、営業から受注、売り上まですべてを1人で行なう営業報酬型の社員もいる。
春夏秋冬には8~10日の大型連休、業績目標を達成した人には8日間のボーナス休暇、隔週で土日月の3連休が与えられる。一見すると破格の高待遇のようだが、裏を返せば各社員が求められる仕事の成果は厳しい。
就業時間は決まっていないが、仕事を終えることができなければ休日もなく、残業しても手当てなどは出ない。時間を自由に使えるようになるためには、仕事の効率を自ら高めていかなければならない。
自動リストラ装置で不要社員を排除する
社員が自ら進んで働く会社。桑原会長が描いていた自立した働き方は今や会社全体にすっかり浸透している。出産してからも働く女性が多いのも、その1つの表れといっていいだろう。育児をしながら働きたい女性には、就業時間の規則がない希望社は、まさにぴったりの会社だ。一方で、各社員が自ら働き方を決めて達成目標を設定する高い意識がなければ、希望社で働くことはできない。
そうした自立した考え方によって導かれたものの1つとしてユニークな賃金体系が挙げられる。まずは総売り上げから10%を会社の利益として計上。そこから経費を引いた残りを給料として分配する。仕事で成果を上げるほどに給料が上がる全社員納得済みのシステムだ。
別の角度から見れば、人件費を固定費として考えないため、給料は定期的に変動。毎年一定の昇給も確約されていない。だからこそ社員は、給料や待遇は自分たちで生み出すものだという共通認識を持ち、コストを抑えていかに賃金を増やすかという原価管理意識も強化される。希望社は、働くことに対して高い意識を持った集団を作り上げることで、低コスト高生産を追求しているわけだ。
よい建築を安く実現するために、適正利潤だけで仕事をする同社にとって、大きな障害となるのは仕事をしているふりだけの社員だ。そこで採用しているのが、自動リストラ装置という仕組み。
かつて、仕事量に対して社員数が過剰となった時がある。そこで売り上げと社員数を数式化して過剰人数を割り出した。そうして売り上げに貢献していない社員は、解雇せずに社外でアルバイトなどをさせて給料を稼がせた。「会社に給料を求めず、自ら働き場所を探せ」ということだ。結果として50人ほどが退職し、収支バランスが整い、経営も正常化したという。
まさに不常識ともいえる試みだが、経営陣が厳格に勤務評価をしていることに全社員が満足している。彼ら社員の奮闘努力により、ここ5年間、希望社は増益を継続中だ。
【会社概要】
希望社
【所在地】〒500-8262 岐阜県岐阜市茜部本郷1-63-3
【設立】1988年9月
【TEL】058-272-9730
【資本金】1億4200万円
【売上高】41億9400万円(06年)
【従業員】161人(07年6月)
【事業内容】日本型コンストラクション・マネジメントを主体とした建設業、ゼネコン支援サービス、住宅関連サービス
【URL】http://www.kibousha.co.jp/
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「非常識は常識を知らないことですが、私は不常識。つまり常識にとらわれないことを実践していきたいのです」
きっぱりと言う桑原耕司会長が、あえて業界の常識を打ち破ろうとしている根底には、会社創業の目的を「よい建築を安く実現して世の中に役立つこと」と定めたことがある。ゼネコン(総合建設会社)とその系列業者、設計事務所などの馴れ合いにより割高になる建築費。希望社は、綿々と続いてきた悪しき構図を否定し、施主に代わって、設計者、総合建設会社、専門工事業者などを選定・監理することで建築費の大幅な引き下げを実現した。
希望社では、儲け第一主義に走ることがないよう徹底している。健全に経営していくための利益は確保するが、それ以上の利益は求めず、顧客に還元するのが希望社の経営方針だ。売り上げを維持するための赤字仕事はせず、余分に稼げるチャンスがあっても、適正利潤にとどめた仕事をする。今の建設業界では常識とされる企業活動とは逆をいくのが、希望社の「不常識な経営」なのである。
適正な利潤を目指す希望社だからこそ、仕事の成果はそっちのけで給料をもらうことが目的の「ぐうたら社員」は徹底的に排除している。
また、既成概念にとらわれず、色々な取り組みを実験していることから、桑原会長は自分の会社を「実験牧場」と呼ぶ。
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就業時間を定めず労働意欲を高める
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「社員が進んで働く会社を作りたい。それが希望社創業のきっかけの1つでした」
そう振り返る桑原会長が希望社を創業して打ち出した経営方針の1つが、「社員には時間でお金を払わない」である。仕事の実績に応じて給料を支払う仕組みとして、就業時間は特に定めない。年齢、性別、学歴の差もなく、好きな時間だけ働けばいい。
この自由さが様々な社員の特性を引き出した。ある社員は、部下をつけると体調が悪くなるが、法務関係には秀でていて、毎日、午後出社でコツコツと自分の役割を果たしている。また、フラメンコで世界コンクールに出場する夢を抱いた女性社員は、仕事の時間を制限しながらも自らの役割はきちんとこなして、仕事とフラメンコを両立し、見事に世界コンクール出場を成し遂げた。さらに、経費をすべて自分で負担し、営業から受注、売り上まですべてを1人で行なう営業報酬型の社員もいる。
春夏秋冬には8~10日の大型連休、業績目標を達成した人には8日間のボーナス休暇、隔週で土日月の3連休が与えられる。一見すると破格の高待遇のようだが、裏を返せば各社員が求められる仕事の成果は厳しい。
就業時間は決まっていないが、仕事を終えることができなければ休日もなく、残業しても手当てなどは出ない。時間を自由に使えるようになるためには、仕事の効率を自ら高めていかなければならない。
自動リストラ装置で不要社員を排除する
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そうした自立した考え方によって導かれたものの1つとしてユニークな賃金体系が挙げられる。まずは総売り上げから10%を会社の利益として計上。そこから経費を引いた残りを給料として分配する。仕事で成果を上げるほどに給料が上がる全社員納得済みのシステムだ。
別の角度から見れば、人件費を固定費として考えないため、給料は定期的に変動。毎年一定の昇給も確約されていない。だからこそ社員は、給料や待遇は自分たちで生み出すものだという共通認識を持ち、コストを抑えていかに賃金を増やすかという原価管理意識も強化される。希望社は、働くことに対して高い意識を持った集団を作り上げることで、低コスト高生産を追求しているわけだ。
よい建築を安く実現するために、適正利潤だけで仕事をする同社にとって、大きな障害となるのは仕事をしているふりだけの社員だ。そこで採用しているのが、自動リストラ装置という仕組み。
かつて、仕事量に対して社員数が過剰となった時がある。そこで売り上げと社員数を数式化して過剰人数を割り出した。そうして売り上げに貢献していない社員は、解雇せずに社外でアルバイトなどをさせて給料を稼がせた。「会社に給料を求めず、自ら働き場所を探せ」ということだ。結果として50人ほどが退職し、収支バランスが整い、経営も正常化したという。
まさに不常識ともいえる試みだが、経営陣が厳格に勤務評価をしていることに全社員が満足している。彼ら社員の奮闘努力により、ここ5年間、希望社は増益を継続中だ。
【会社概要】
希望社
【所在地】〒500-8262 岐阜県岐阜市茜部本郷1-63-3
【設立】1988年9月
【TEL】058-272-9730
【資本金】1億4200万円
【売上高】41億9400万円(06年)
【従業員】161人(07年6月)
【事業内容】日本型コンストラクション・マネジメントを主体とした建設業、ゼネコン支援サービス、住宅関連サービス
【URL】http://www.kibousha.co.jp/
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。



















