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月刊ベンチャー・リンク 2008年6月号より

<2008.6月号特集>周囲の理解を得ることが成功への第一歩

(2008年9月11日更新) 文・百瀬崇

事業承継を成功に導くためのツールに「事業承継計画表」がある。これは、大げさに考えてはいけない。まずは、承継に対する思いをメモ書きする程度でいい。経営者が自分の考えを明確にし、自社の現状を正確に把握することから始めよう。

城所(きどころ)弘明 城所会計事務所所長

現経営者と後継者が5年以上は共に働く

仕事に段取りがあるように、事業承継を成功させるためにも計画が必要となる。とはいえ、経営者の多くは計画の作成を難しく考えて尻込みしがちだ。「それは計画の意義を正しく認識していないからです。『事業承継計画表』は事業承継を成功させるためのツール。“うまく作る"のではなく、“うまく使う"ことが重要なのです」。数多くの企業の事業承継のアドバイザー役を務める城所会計事務所の城所弘明所長はこう説明し、軽い気持ちで取り組めばいいとアドバイスする。

事業承継を進めていく過程では、思わぬトラブルや環境の変化が起こる。それに対処するためにも、現経営者と後継者が一緒に働く期間が必要だ。「経営の引き継ぎ期間は短くても5年、できれば10年は欲しいですね。いずれにせよ早めに取り組むことです」(城所所長)

自分の現状や不安を書き出し明確にする

ほとんどの経営者にとって事業承継は初めての体験であり、何からどう手をつけたらいいか分からないのが実状だろう。城所所長は「まずは簡単なメモ程度でいいので、自分の実状や不安を紙に書いて少しずつ明確にしていきましょう」とアドバイスする。具体的には、(1)家族関係、(2)個人の資産状況、(3)会社の経営資源の状況、(4)会社関係者の状況、(5)後継者に関する状況、(6)相続時に予想される問題――である。

家族関係であれば、家族構成と続柄、年齢、現在の職業など。個人の資産であれば株式や不動産、預貯金など、焦らず思いつくことから随時書き出していけばいい。これが、事業承継計画表作成の「ステップ1」で、通常は3.6カ月程度を要すると見ておこう。

家族全員の合意で基本方針を決める

ステップ1で、経営者が事業承継に対する自分の現状や不安を明確にしたら、それを踏まえて「事業承継の基本方針」を決めていく。大きく、次の4項目だ。
(1)後継者候補を決める。(2)家族会議で合意書を作成する。(3)親族内から後継者を選ぶ場合は公正証書遺言を作成する。(4)関係者に告知する。事業承継には家族の協力が不可欠だ。現経営者と後継者だけで話を進めていくと、あとでトラブルの元になる。必ず家族会議を開いて合意書を作るべきだ。

親族内から後継者を選ぶ場合は、合意書をもとに遺言書を作っておこう。遺言書には2種類ある。「自筆証書遺言」は、遺言者が全文を筆記し押印して作成する。手軽に作成できるが、文意不明や形式不備などで無効となる恐れがある。「公正証書遺言」は、遺言者が原則として証人2人とともに公証役場に出かけ、公証人に遺言内容を口述し、公証人が筆記して作成する。手間と費用がかかるが、形式不備などで無効となる恐れがない。城所所長は「残された人が安心できる公正証書遺言を勧めています」と話す。
家族間で決めたことを役員と社員や得意先、取引先、金融機関などに告知して、事業承継の基本方針を定める。これを「ステップ2」とし、1年くらいをかけて行なう。

計画表はあくまでツール、複数用意し変化に備えよ

「ステップ3」では、いよいよ事業承認計画表の作成作業に入る。だが、気負って初めから完璧なものを作ろうとしてはいけない。計画表はオーナーの考えを整理するために作るものであり、作成後も加筆・修正していくので、消しゴムで消せるように鉛筆を使って記入しよう。「計画表は1つだけでなく、誰を後継者にするかなどによって3通り以上あるといいですね。複数案を想定しておけば、事業の環境変化やトラブルが生じた時に、あわてず対処できるからです」(城所所長)計画表は、いわば航海図のようなもの。綿密に練り上げた計画表に基づいて進行させることにより、安全で円滑な事業承継を実現できる。

Profile
城所弘明
横浜国立大学を卒業。80年公認会計士および税理士の登録。城所会計事務所を設立し、現在にいたる。著書に『経理実務がわかる事典』(明日香出版)など。

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