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<2008.2月号特集>手作りガラス製品の生産を決断

シャトーヒルズ 沖縄県糸満市(2008年03月13日更新)

熱心で技術が優秀な職人を見て
手作りガラス製品の生産を決断


南国特有の鮮やかな色使いで根強い人気の「琉球ガラス」。その技法を携えてベトナムに進出したのがシャトーヒルズだ。日本の南の小さな島で生まれた工芸品を、“アジア発世界行き”の製品をめざして着実に生産量を増やし続けている。

商品はすべて手作り。現地で採用した職人の指導は、沖縄で琉球ガラスの製造に長年携わってきたベテランがあたる。<br />
商品はすべて手作り。現地で採用した職人の指導は、沖縄で琉球ガラスの製造に長年携わってきたベテランがあたる。

ハノイ市郊外に工場設立95年から現地生産を開始

琉球ガラスは、第2次世界大戦後の復興過程の沖縄で生まれた。派手な色使いと手作りならではの温もりあるデザインが特徴で、日常生活に使えるグラスや器などは観光みやげとしても人気が高い。この琉球ガラスの良さを生かしつつ、廉価で安定供給が可能な商品を開発したいと、1995年に沖縄からベトナムへ進出したのがシャトーヒルズだ。
カップや皿など「南蛮びいどろ」の商品例。ベトナム工場では年間約300万個の製品を製造している。
カップや皿など「南蛮びいどろ」の商品例。ベトナム工場では年間約300万個の製品を製造している。

ハノイ市郊外に100%出資の「ベトナム琉球文化工芸村」を立ち上げ、花瓶やグラス、皿などを年間に約300万個生産している。同社がベトナム進出に踏み切った理由は、90年代に沖縄観光客が増加して手作り品である琉球ガラスの供給が需要に追いつかなくなったことにある。

中国や台湾から類似商品も流れ込み、地元の製造業者たちに危機感が募った。安里(あさと)彰博専務が当時をこう振り返る。「人件費が安い外国へ飛び出して、沖縄発のガラス文化をアジア全体に、そしていずれは『アジアン・ガラス』として世界に広めていくという夢を持ってベトナムに渡りました」

現地では沖縄の熟練した職人が技術指導し、琉球ガラスならではの特色をそのまま生かした手作り品を生産。全商品をシャトーヒルズが買い取る形で沖縄県内を中心に販売している。沖縄県産ではないことから「琉球ガラス」という名称は使わず、「南蛮びいどろ」として取り扱う。

優秀な人材を求め海外進出先を探す

90年代といえば、日本はもちろん世界中の企業が安い労働力を求め、中国に進出していった時期。シャトーヒルズも、当初は沖縄との歴史的な関係も深い福健省を中心に工場の建設を考えていた。しかし、地元で得た情報を精査すると、ビジネスを展開していくうえで様々な問題があることが判明した。そこで中国以外に目を向け、タイに職人を派遣して実際に製品を作ってみたが、なかなか思い通りのものが仕上がらない。そんな折にベトナムの情報が飛び込んできた。
ベトナムでのガラス工場運営に尽力する安里彰博専務。現在も年に10カ月は現地に滞在する。
ベトナムでのガラス工場運営に尽力する安里彰博専務。現在も年に10カ月は現地に滞在する。


「現地のガラス工場を視察に行ってみると、そこにはチェコなど欧州のガラス工場で技術を習得した職人たちがいました。彼らは実に勉強熱心です。そこで沖縄から職人を連れていって指導し、作品を作ってもらったところ、確かな手ごたえを感じ取りました」(安里専務)

シャトーヒルズが海外進出先を選ぶにあたり、低コスト化を優先項目の1つとしたが、それよりも大切な選定基準は「人」だったという。
「なぜ海外に出るのかと問われたとき、我々は『モノを作りたいから』と答えます。『南蛮びいどろ』はすべてが手作りなので、作り手の資質や気質はとても重要。そこが他の進出企業とは目線が違う部分かもしれません」(同)

生産コスト面でも利点は大きい。例えば原料となる珪砂(けいさ)の価格は日本と比べて10年前は約5分の1。現在でも30tで約18万円と約3分の1の価格だ。人件費は、外資系企業が現地の労働者に支払う最低賃金が10年前で月50万ドン(当時の為替レートで約5000円)、08年から改正される予定の最低賃金は月100万ドン(約1万円)だが、それでも沖縄と比べれば約14分の1である。輸送料や事業基盤整備などの費用はかかるが、コストは沖縄でガラス製日用品を作る場合の約3分の1に抑えられているという。

ベトナム工場から世界展開を目指す

だが、ベトナム進出は決して容易だったわけではない。工場建設に着手すると、数多くの難関が現れた。地元企業や大使館を通じての人脈づくり、膨大な提出書類の作成、工場の整備……。すべてをクリアして現地法人を立ち上げてからも、技術指導などに膨大な時間と手間を費やした。当初の3年間は、15人のガラス職人が沖縄から交代で工場を訪れ、指導に明け暮れた。現地で約60人のベトナム人を雇って始めたガラス工場は、設立から12年が経った今では280人まで増えている。

約60人からスタートしたガラス工場も、現在280人のスタッフを雇用するまでの規模に拡大している。
約60人からスタートしたガラス工場も、現在280人のスタッフを雇用するまでの規模に拡大している。

生産したガラス製品のほとんどは沖縄へ出荷しているのが現状だ。中国や台湾、ヨーロッパなどから販売させてほしいという依頼が舞い込むものの、年間300万個の生産規模ではまだ要求に応えられない。全商品が手作りであるがゆえに、大量生産が難しいことが販路拡大の前に立ちはだかる。かといって、世界に通用する品質やデザイン性を高めていくことを目指すため、急激な増産は考えていない。

「現地の人たちとは一緒にヨーロッパやアメリカに工場を持とうとよく夢を語っています。また、ベトナム政府の方々には、日本のちっぽけな島からやってきた小さな企業だけれど、絶対につぶさないでくれとお願いしています。ここは、日本とベトナムの大きな財産になります。ベトナムに作ったこの会社はいわばスタート地点であり、我々は徐々に生産を増やして、一緒にここから世界に飛び出していきたいのだからとね」(安里専務)
沖縄から手作りガラス製作という技術を持ってベトナムへ飛び出した小さな企業は、ゆっくりと、だが着実に世界に向けて歩を進めている。

【会社クレジット】
シャトーヒルズ

【所在地】〒901-0305 沖縄県糸満市西崎4-8-8
【設立】1991年3月
【TEL】098-994-3117
【資本金】2500万円
【売上高】4億5000万円(06年度)
【従業員】20人
【事業内容】グラス、皿、花器などのハンドメード・ガラス製日用品の製造販売、およびそれらの商品開発、陶器商品の製造販売
【現地法人】ベトナム琉球文化工芸村
【設立】1995年4月

文・長嶺哲成
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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