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地道な努力で広めた高機能商品

大阪発ナノテク歯ブラシで世界へ

夢職人(大阪府箕面市)

コップの水に漬けて磨くだけで、歯がツルツルになるというナノテク歯ブラシ「MISOKA(みそか)」。
製造販売するのは夢職人(大阪府箕面市)だ。マンションの一室から始まった小さな企業がつくる高級歯ブラシは、今やビバリーヒルズの住人をはじめ、世界中の富裕層に注目される商品となっている。

■高級歯ブラシが地道な努力で話題に
 1本1050円という高価格にも関わらず、国内のみならず海外でも売れている歯ブラシがある。大阪府箕面市にある夢職人が製造するMISOKAがそれだ。
MISOKA 1050円/1本・化粧箱入り(税込)<br />ブラシに特殊加工が施された高機能の歯ブラシ。歯磨き粉を使わずに、水だけで磨ける。磨いたあとに歯に汚れが付きにくくなると、高額にもかかわらず国内外からリピーターが続出している
MISOKA 1050円/1本・化粧箱入り(税込)
ブラシに特殊加工が施された高機能の歯ブラシ。歯磨き粉を使わずに、水だけで磨ける。磨いたあとに歯に汚れが付きにくくなると、高額にもかかわらず国内外からリピーターが続出している

 MISOKAの特徴は、ブラシの毛先。独自技術によって毛先を特殊コーティングすることで、歯の表面の親水性を高め、汚れを浮き上がらせて除去。さらに歯の表面を水の膜で覆い、次の汚れを付きにくく仕上げてくれる。歯磨き粉を使わずに、歯ブラシを水につけて磨くだけでしっかり磨けるため、環境にも優しいと評判だ。
 創業は2007年。ナノシオンドリーム加工という独自の加工技術を開発した辻陽平社長は、当初「この技術を自動車のコーティングに応用できないか」と考えていた。自動車にこの技術を使ったコーティングをすれば、雨に濡れても汚れが付きにくくなる。しかし自動車産業では、どんなに営業を重ねても実績がない技術は認めてもらえない。そこでこの加工を別の用途で使えないかと考え、思いついたのが歯ブラシだった。
 もともと大阪府は、歯ブラシの一大産地。「どうせなら郷土のもので勝負しようと思った」と辻氏は当時を振り返る。歯ブラシの製造工場に最低ロットである1万本の歯ブラシを発注。マンションの一室につくった事務所兼作業場には、山と積まれた1万本の歯ブラシが納品された。「妻と二人で特殊コーティングや箱詰めを手作業で行った」(辻氏)。こうして同07年に製品化されたのが、高級歯ブラシMISOKAだった。
 辻氏は、早速小売店に売り込みを開始した。だが、安い時には1本100円程度で売られている歯ブラシだ。MISOKAを見た小売店の担当者は「1050円の歯ブラシを買う人はいない」と笑うばかりだった。1050円という高価格に加え、高級感を出すために選んだ白い紙の箱も裏目に出た。「汚れやすいし、中身も見えない。これでは売り物にならない」と否定されたという。
 しかしそんな中でも、一店だけ「おもしろいじゃないか」と辻氏の言葉に耳を傾けてくれる店があった。生活雑貨大手の東急ハンズ 心斎橋店だ。「歯ブラシの品揃えの一つとして売り場に置いてもらえることになった」(辻氏)。こうしてなんとか販売にこぎつけた。
 だが、やはり1050円という歯ブラシは、なかなか売れず、当初は1日7本程度が売れるのみ。だが、辻氏は「よさが分かればリピーターになってもらえるはず」と自ら売り場に立ち、店頭販売を行った。必死になって効果を説明していると、「そんなに言うなら試しに買ってみよう」と少しずつ購入者は増えていった。地道な努力が功を奏し、次第にリピーターが増加。発売から1年が経つ頃には、取り扱い店舗も増え、月の売り上げが1万本を超すようになっていた。

■一本の動画から世界へと人気が拡大
 折しも、中国や台湾、韓国などのアジア各国では日本ブームが起きていた。「ブランド品だけでなく、歯ブラシやタオルなど『メイド・イン・ジャパン』の生活雑貨が欲しいという外国人が増えていた」(辻氏)。同社にも、国外からの問い合わせが少しずつ増えた。日本に来た観光客が「お土産」として買って帰り、それをもらった人からウェブサイトに追加購入の依頼が来ることが多くなったのだ。
夢職人 陽平社長<br />「最高級歯ブラシで世界へ」。氏の言葉には、日本のモノづくりに対する自負と、感謝の思いが込められている
夢職人 陽平社長
「最高級歯ブラシで世界へ」。氏の言葉には、日本のモノづくりに対する自負と、感謝の思いが込められている

 さらに同社にとって思わぬチャンスが巡ってきた。「東京インターナショナル・ギフト・ショー春2011」に出展したところ、ショーでの実演販売の様子を撮影した動画が、動画投稿サイトにアップされたのだ。すると、その直後からアクセス数が急増。近くは中国、遠くはポーランドやアルゼンチンまで、その動画を見た世界およそ50カ国の企業から、問い合わせが入った。
 しかしその時点では、「海外展開にはそこまで乗り気ではなかった」と辻氏は言う。「日本での認知度もまだまだ。無理に海外に出る必要はない」と考えていたのだ。だが、増え続ける海外からの問い合わせに、辻氏は次第に供給責任を感じるようになっていった。
 最初は、頭を下げても誰ひとり買ってくれなかった。それが、外国人も「ほしい」と言ってくれるまでになった。「その声を無視してはいけないと思った」(辻氏)。
 こうして各国との取り引きを始めるとともに、2011年6月には、現地在住の知人を代表としたアメリカ法人を設立。貧富の差が激しいアメリカにおいて、高級歯ブラシを購入できる層が多いのはどこかを考え、ロサンゼルスのビバリーヒルズに窓口を置いた。
 その判断が功を奏し、12年にグラミー賞の公式イベント「2012ミュージケア パーソン オブ ザイヤー」のギフトバッグの中の1アイテムとして選ばれ、約3000人のゲストに配られることになった。「ビバリーヒルズは小さな町。一風変わった商品の情報は自然と伝わる。MISOKAについても、そうした噂がアイテムを探していたエージェントに届いたのだろう」と辻氏は予想する。

■中国での成功が日本への恩返しになる
 海外展開をしていく上で、同社がとくに力を入れようと考えているのが中国だ。「中国の富裕層は日本に対する関心が高く、マーケットも大きい」と辻氏はその理由を語る。
 しかし同社の中国進出には、大きな壁があった。それがパートナー企業の選定だ。「ウチのような中小企業が、自分たちの力だけで巨大なマーケットを持つ中国に進出するには、無理があると思った」(辻氏)。
 ところがここでも追い風が吹く。友人に、たまたまMISOKAの話をしたところ、友人の勤める日本の大手企業の取締役を紹介され、そこがパートナー企業としてサポートしてくれることになったのだ。「誰にでも等しく情報発信をしていれば、思ってもみないところから、チャンスが飛び込んでくる」と辻氏は言う。
 同社の本格的な中国進出はこれからだ。しかし、辻氏には考えていることがある。「中国での展開が成功したら、次は海外展開を考える日本の中小企業のサポート事業を行いたい」(辻氏)。確かな品質を持つ日本の中小企業の製品を海外に輸出し、売り上げを上げる。輸出によって日本の中小企業が潤うことで日本全体を豊かにする。「それは、ひいてはウチの製品を買ってくれた日本の顧客への恩返しになる」と言う辻氏。求められる分だけを供出していた同社が、自ら海外へ打って出ようという背景には、日本を豊かにしたいという辻氏の大きな願いがある。

<Company Profile>
株式会社夢職人
大阪府箕面市桜井2-4-5 2F
資本金 2445万円
072-720-7703
http://yumeshokunin.jp/
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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