法改正で中心市街地は今が活性化のチャンス
特集 がんばれ商店街
B STYLE26月号より(2007年9月11日発行)
郊外の幹線道路沿いに次々とオープンする大規模商業施設に客足が流れ、駅前など街の中心部にある商店街は閑古鳥が鳴く――。全国の商店街で、シャッターが閉まったままの“シャッター通り”が増えている。活気を取り戻すためのさまざまな努力や創意工夫でがんばる商店街に焦点を当てた。
■多角的なアプローチを目指した新3法が制定
商店街やターミナル駅などを中心に、住居・商業・行政が集約された中心市街地。各地方の顔として長年の歴史と文化を育んできた街並みも、昨今では衰退の一途をたどっている。交通網の整備や大規模小売店舗出店などに伴い、居住者や就業者の流出による生活圏が拡散していったことや、高齢化や人材不足による従来商店街の空き店舗の増加、地価や賃貸料の高止まり、老舗百貨店の撤退などで中心市街地は活力を失っていった。
地域経済基盤である中心市街地の衰退を食い止めるべく、国が制定したのが「改正都市計画法」「中心市街地活性化法」「大規模小売店舗立地法」の、いわゆる「まちづくり3法(以下、旧3法)」だ。まちづくりに関する権限を国から地方へ大幅に委譲し、巨額の財源投入が主な柱だ。しかし、この旧3法によっても、中心市街地の衰退に歯止めがかからなかった。04年の総務省の調査でも、中心市街地の衰退状況が改善されていないことが明らかとなった。そのため、06年に「新まちづくり3法(以下、新3法)」への改正へと踏み切った。新3法を推進する中小企業庁経営支援部商業課・企画官の朝稲秀男氏は、改正のポイントを次のように話す。
「これまでの中心市街地活性化では、商業を活性化する組織(TMO)の活動が中心でしたが、改正中心市街地活性化法では中心市街地活性化協議会という、商業の活性化から都市機能の整備など、まちづくり全般に関する事業を一体的に推進する組織を法制化しました。また、基本計画についても国が認定を行ない、集中して支援を行なうとともに、実施状況についての評価の実施など市町村等が事業効果を把握出来る仕組みになっています」
[都市計画法]
市街化区域や市街化調整区域の区分など、都市地域内の土地の利用方法を定めた法律で、68年に制定された。もともと土地用途規制は全国で画一的に運営されていたが、01年の法改正により、都道府県や市町村の判断で用途制限を強化したり緩和したりすることが可能となった。これにより、大規模小売店舗の郊外立地を市町村がコントロールしやすくなった。
[大規模小売店舗立地方(大店立地法)]
1000㎡を超える店舗面積を持つ大規模小売店舗を新設する際、交通や騒音、廃棄物などによる周辺生活環境への影響を緩和し、調和を図ることを求めた法律。00年に施行された。地域住民や事業者、商工会議所、市町村の意見を聴き、出店による悪影響に配慮する必要があり、利潤追求一辺倒の出店を制限する。一方で、法律の手続を経れば、中心市街地に大規模小売店舗を出店することもできる。
[中心市街地活性化法]
空洞化が進行している中心市街地の活性化を図るため、「市街地の整備改善」「商業等の活性化」を総合的一体的に推進することを目的とした法律。98年施行、06年に一部改正。8府省庁、地方自治体、民間事業者などがハード、ソフト両面にわたる施策で連携して地域の振興と整備を図り、生活向上と経済発展を目的とする。国が基本方針を作成、それに即して地方自治体が基本計画を作成し、国の認定を得ることで支援を受ける。
■大型小売店舗の郊外出店の規制を地方自治体が行なう
中心市街地の活性化のために強化された新3法は、どのような特徴をもつのか。まず、基本的な方向として「コンパクトなまちづくり」構想がある。少子高齢化や人口減少を踏まえ、生活に必要な施設などを整備し、都市機能の郊外への拡散を抑制しようとする考えだ。自動車の運転が困難になった高齢者への福祉などを考えると、広範囲で公共交通網を整備して行政サービスを行き届かせるのには、巨額の財政投資が必要となってしまう。このため、生活基盤の整備・維持コストを抑えながら中長期的なまちづくりを図るうえで、コンパクトなまちづくりへの取り組みが有効だ。また中心市街地の活性化とにぎわい再生のために、大規模小売店舗をはじめとする大規模集客施設の郊外立地を規制することとした。これは、旧3法では、地価が安く、規制も少ない郊外への出店の流れを食い止めるまでには至らなかったため、新3法(都市計画法)ではこれまでの土地利用の原則を逆転し、郊外開発に都市計画の手続を経させることで、地域の判断を反映した適正な立地を確保するようにした。具体的には、大規模小売店舗が出店可能だった第2種住居地域、準住居地域、工業地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域のうち、前者3つの用途地域で自治体から特別に承認(用途変更など)されない限り出店できず、出店可能地域が激減する。このほかにも、幅広い分野で中心市街地の機能集中化、郊外進出の抑制が行なわれる。
「06年8月に施行されたばかりでまだ日も浅いのですが、すでに30を超える地域から基本計画に関する相談を受けており、新3法は順調に運用されていると考えています」(朝稲氏)
■大型店への規制がある今が商店街の正念場
では、どのように法制度を利用すれば、中心市街地を活性化して商店街が元気を取り戻すことができるのか。現状で郊外の大規模小売店舗から中心市街地に消費者を呼び戻すには、さまざまな施策を講じて商店街が魅力あふれるサービスを提供し、新たな価値観を創造していかなければならない。それには、各地域の特性に合わせた戦略を練る必要がある。
参考となるのが、まちづくりの成功事例として著名な青森市だ。具体的には、店舗ごとに魅力ある商品を開発した「一店逸品運動」、商店街共通の無料駐車券システム、どの店からも即日で商品を地域の消費者の自宅に配達する「買物宅配事業」などを展開している。また、商店街の道路を歩行者優先とするために、車道の縮小や歩道の拡張も行なった。富山市では、路面電車が進化した次世代型新交通システムを導入し、中心市街地での市民の足として利便性を高めた。香川県高松市では、まちづくりの非営利法人が定期借地権制度を活用して低コストで土地の活用・流動化を促進している。島根県松江市などは、地域の高齢者向けに商品や施設を拡充。福島県会津若松市や埼玉県川越市などは、商店街の歩道整備とあわせ、街の景観を歴史情緒あふれるものへと変えてテーマ性をアピールした。このほか、中心市街地全体をひとつのショッピングセンターと見立てて各種専門店を形成し、多彩な商品やサービスを提供する「テナントミックス」や、インターネットを積極的に導入する方法なども有効だ。都市開発に詳しい東京大学先端科学技術研究センター教授の大西隆氏は、次のように話す。
「新3法によって、無秩序な郊外開発を防ぐ環境が整いましたが、それだけで自動的に消費者が戻って活性化が図れるわけではありません。地域コミュニティの魅力改善など地域一体となった取り組みが求められています。中心市街地にとっては今がチャンスであり、正念場でもあります」
■支援策を徹底活用し中長期視野での再編を
中心市街地の活性化を担う商店街では、新3法の仕組みを理解し、まずは積極的に国の優遇・支援制度を活用していくべきだ。街がどのような状況にあり、どのように改善していけばいいのかを把握するための調査や、アドバイザーの派遣を中小企業庁が行なっている。また、基本計画が国の承認を得られれば、関係省庁からの支援も受けられる。
総合的な視点から、新しいまちづくりを模索する新3法では、民間事業者による協力も必須であり、街の活性化にプラスになると判断されれば、地元に招かれる形で事業を展開することができる。大規模小売店舗であっても同様だ。商店街のなかには、リーダーシップを発揮できる人材や店舗経営の後継者の不足、大規模な再編を嫌う地権者などによって足並みをそろえられないなどの問題を抱えるところも多い。これらを放置すれば、空洞化が加速するばかりだ。
「消費スタイルから移動手段まで時代は変化し、中心市街地は新たな役割を見つめ直す必要があります。場合によっては、周辺住民のためだけの近隣店として割り切ったり、大規模小売店舗と共存したりするなど、誰に選ばれ、どんな役目を果たせるのかを考えていくことが活性化への近道となるでしょう」(大西氏)
新3法によって郊外の無秩序な開発を抑制するとともに、中心市街地の商店街が中長期的な視野に立って再編に着手すれば、新たなまちづくりへの扉が開くはずだ。
※「がんばれ商店街」は、月刊ベンチャー・リンク誌07年4月号の同名の特集から一部記事を抜粋したものです。
![]() まちづくり事業を推進する組織を法制化し、基本計画の認定制度を設けた新3法について、「すでに順調に機能している」と中小企業庁経営支援部商業課・企画官の朝稲秀男氏。 |
地域経済基盤である中心市街地の衰退を食い止めるべく、国が制定したのが「改正都市計画法」「中心市街地活性化法」「大規模小売店舗立地法」の、いわゆる「まちづくり3法(以下、旧3法)」だ。まちづくりに関する権限を国から地方へ大幅に委譲し、巨額の財源投入が主な柱だ。しかし、この旧3法によっても、中心市街地の衰退に歯止めがかからなかった。04年の総務省の調査でも、中心市街地の衰退状況が改善されていないことが明らかとなった。そのため、06年に「新まちづくり3法(以下、新3法)」への改正へと踏み切った。新3法を推進する中小企業庁経営支援部商業課・企画官の朝稲秀男氏は、改正のポイントを次のように話す。
「これまでの中心市街地活性化では、商業を活性化する組織(TMO)の活動が中心でしたが、改正中心市街地活性化法では中心市街地活性化協議会という、商業の活性化から都市機能の整備など、まちづくり全般に関する事業を一体的に推進する組織を法制化しました。また、基本計画についても国が認定を行ない、集中して支援を行なうとともに、実施状況についての評価の実施など市町村等が事業効果を把握出来る仕組みになっています」
[都市計画法]
市街化区域や市街化調整区域の区分など、都市地域内の土地の利用方法を定めた法律で、68年に制定された。もともと土地用途規制は全国で画一的に運営されていたが、01年の法改正により、都道府県や市町村の判断で用途制限を強化したり緩和したりすることが可能となった。これにより、大規模小売店舗の郊外立地を市町村がコントロールしやすくなった。
[大規模小売店舗立地方(大店立地法)]
1000㎡を超える店舗面積を持つ大規模小売店舗を新設する際、交通や騒音、廃棄物などによる周辺生活環境への影響を緩和し、調和を図ることを求めた法律。00年に施行された。地域住民や事業者、商工会議所、市町村の意見を聴き、出店による悪影響に配慮する必要があり、利潤追求一辺倒の出店を制限する。一方で、法律の手続を経れば、中心市街地に大規模小売店舗を出店することもできる。
[中心市街地活性化法]
空洞化が進行している中心市街地の活性化を図るため、「市街地の整備改善」「商業等の活性化」を総合的一体的に推進することを目的とした法律。98年施行、06年に一部改正。8府省庁、地方自治体、民間事業者などがハード、ソフト両面にわたる施策で連携して地域の振興と整備を図り、生活向上と経済発展を目的とする。国が基本方針を作成、それに即して地方自治体が基本計画を作成し、国の認定を得ることで支援を受ける。
■大型小売店舗の郊外出店の規制を地方自治体が行なう
中心市街地の活性化のために強化された新3法は、どのような特徴をもつのか。まず、基本的な方向として「コンパクトなまちづくり」構想がある。少子高齢化や人口減少を踏まえ、生活に必要な施設などを整備し、都市機能の郊外への拡散を抑制しようとする考えだ。自動車の運転が困難になった高齢者への福祉などを考えると、広範囲で公共交通網を整備して行政サービスを行き届かせるのには、巨額の財政投資が必要となってしまう。このため、生活基盤の整備・維持コストを抑えながら中長期的なまちづくりを図るうえで、コンパクトなまちづくりへの取り組みが有効だ。また中心市街地の活性化とにぎわい再生のために、大規模小売店舗をはじめとする大規模集客施設の郊外立地を規制することとした。これは、旧3法では、地価が安く、規制も少ない郊外への出店の流れを食い止めるまでには至らなかったため、新3法(都市計画法)ではこれまでの土地利用の原則を逆転し、郊外開発に都市計画の手続を経させることで、地域の判断を反映した適正な立地を確保するようにした。具体的には、大規模小売店舗が出店可能だった第2種住居地域、準住居地域、工業地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域のうち、前者3つの用途地域で自治体から特別に承認(用途変更など)されない限り出店できず、出店可能地域が激減する。このほかにも、幅広い分野で中心市街地の機能集中化、郊外進出の抑制が行なわれる。
「06年8月に施行されたばかりでまだ日も浅いのですが、すでに30を超える地域から基本計画に関する相談を受けており、新3法は順調に運用されていると考えています」(朝稲氏)
■大型店への規制がある今が商店街の正念場
![]() 都市人口規模別の中心部の販売額の推移(平均) ※三大都市圏以外の地域における人口20万人以上の都市(政令指定都市を除く)と対象として国勢調査と集計※過年度の販売額データについては、02年度の消費者物価指数を100として補正 |
参考となるのが、まちづくりの成功事例として著名な青森市だ。具体的には、店舗ごとに魅力ある商品を開発した「一店逸品運動」、商店街共通の無料駐車券システム、どの店からも即日で商品を地域の消費者の自宅に配達する「買物宅配事業」などを展開している。また、商店街の道路を歩行者優先とするために、車道の縮小や歩道の拡張も行なった。富山市では、路面電車が進化した次世代型新交通システムを導入し、中心市街地での市民の足として利便性を高めた。香川県高松市では、まちづくりの非営利法人が定期借地権制度を活用して低コストで土地の活用・流動化を促進している。島根県松江市などは、地域の高齢者向けに商品や施設を拡充。福島県会津若松市や埼玉県川越市などは、商店街の歩道整備とあわせ、街の景観を歴史情緒あふれるものへと変えてテーマ性をアピールした。このほか、中心市街地全体をひとつのショッピングセンターと見立てて各種専門店を形成し、多彩な商品やサービスを提供する「テナントミックス」や、インターネットを積極的に導入する方法なども有効だ。都市開発に詳しい東京大学先端科学技術研究センター教授の大西隆氏は、次のように話す。
「新3法によって、無秩序な郊外開発を防ぐ環境が整いましたが、それだけで自動的に消費者が戻って活性化が図れるわけではありません。地域コミュニティの魅力改善など地域一体となった取り組みが求められています。中心市街地にとっては今がチャンスであり、正念場でもあります」
■支援策を徹底活用し中長期視野での再編を
![]() 都市開発に詳しい東京大学先端科学技術研究センター教授の大西隆氏。「今後、商店街は誰に選ばれ、どんな役割を果たせるのかを考えていくことが活性化への近道となる」と言う。 |
総合的な視点から、新しいまちづくりを模索する新3法では、民間事業者による協力も必須であり、街の活性化にプラスになると判断されれば、地元に招かれる形で事業を展開することができる。大規模小売店舗であっても同様だ。商店街のなかには、リーダーシップを発揮できる人材や店舗経営の後継者の不足、大規模な再編を嫌う地権者などによって足並みをそろえられないなどの問題を抱えるところも多い。これらを放置すれば、空洞化が加速するばかりだ。
「消費スタイルから移動手段まで時代は変化し、中心市街地は新たな役割を見つめ直す必要があります。場合によっては、周辺住民のためだけの近隣店として割り切ったり、大規模小売店舗と共存したりするなど、誰に選ばれ、どんな役目を果たせるのかを考えていくことが活性化への近道となるでしょう」(大西氏)
新3法によって郊外の無秩序な開発を抑制するとともに、中心市街地の商店街が中長期的な視野に立って再編に着手すれば、新たなまちづくりへの扉が開くはずだ。
※「がんばれ商店街」は、月刊ベンチャー・リンク誌07年4月号の同名の特集から一部記事を抜粋したものです。
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

















