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社員が楽しく働けることが会社の成長につながる

サイボウズ社長 青野慶久(よしひさ)

サイボウズ社長 青野慶久(あおの・よしひさ)/文・上田里恵(2007年10月25日更新)

サイボウズは1997年の創立以来、企業向けソフトウエアの開発・販売を手がけてきた。同社社長で26歳にして独立を果たした青野慶久は、インターネットの特性を活用した独自の販売戦略で大手の独占市場に風穴を開けた。主力商品「サイボウズOffice」シリーズは国内の2万4000社以上に導入され、同社は東証1部に上場を果たし傘下企業10社以上を抱えるまでに躍進を遂げている。

設定も操作も難しい大手のソフトの課題に商機を見出す

97年8月、愛媛県松山市の2DKのマンションでサイボウズは産声を上げた。設立メンバーは、青野慶久と仕事仲間2人。「安い・便利・簡単」の三拍子がそろったソフトウエアの商品開発が目的だ。

「初めから勝算はありました」
青野は穏やかな表情ながらもきっぱり言い切る。事実、創業から2カ月後にはグループウエアの「サイボウズOffice 1」を発売し、好調なスタートを切った。

サイボウズのキャラクター「ボウズマン」。同社の筆頭宣伝マンとして活躍、エントランスでは2mの立像が来客を迎える。
サイボウズのキャラクター「ボウズマン」。同社の筆頭宣伝マンとして活躍、エントランスでは2mの立像が来客を迎える。
グループウエアは、個々の社員のパソコンに蓄積された情報を共有できるようにするソフトだ。例えば、グループ内でほかの人のスケジュールを把握したり伝言したりするのに便利なうえ、顧客とのメール送受信内容なども分かり、作業の進行状況をグループ全体で把握できる。つまり、グループ内の社員のアイデアやノウハウが共有できるようになる。

「誰でも使えるグループウエアを作りたかったのです」
青野が指摘するとおり、「Office 1」は、手頃な価格で操作が簡単なことで評判となり、売り上げが着実に伸びていった。

「開発を思い当たった原点は、松下電工に勤務していたことです。グループウエアの導入を進める仕事をしていたのですが、これが難しかった。時間と労力をかけて100台以上のパソコンに大手メーカーのソフトを設定したのに、結局、使ってもらえず、ショックを受けたことがありました。作業に手間がかかり、専門家ではない一般の社員にとっては使うのが面倒なのです」

札幌、東京、松山……。会議室には日本各地の地名が付けられ、部屋ごとにイメージが違う。写真は和をコンセプトにした「京都」。
札幌、東京、松山……。会議室には日本各地の地名が付けられ、部屋ごとにイメージが違う。写真は和をコンセプトにした「京都」。
青野は、同じようにグループウエアを導入しようとして失敗した企業が多いのではないかと考えた。当時、グループウエアの市場は2大企業の独擅場。「Lotus Notes」を持つロータスディベロップメント(現IBM)と、「Microsoft Exchange」のマイクロソフトである。これらの巨人に果敢に挑んだ青野の読みは当たり、「サイボウズOffice」シリーズは発売から10年で国内企業2万4000社以上に導入されるまでに普及した。

ほかにも大企業向けのグループウエア「サイボウズガルーン2」をはじめ、手軽にデータを管理し集計できる「サイボウズデヂエ」など、8種類の主力ソフトを扱っている。同社のグループウエアの評価は高い。
あるコンピューター雑誌の「顧客満足度調査グループウエア部門」で、7回連続1位を獲得。グループウエアの市場で24.6%のシェアを持ち(06年、ノークリサーチ調べ)、大手企業と肩を並べるまでになった。
07年1月期の売上高は、連結で100億1800万円。前期比68.3%増と今も急成長を続ける。

顧客を絞り込み販売手段をインターネットに限定

サイボウズの誕生と発展は、インターネットを抜きにして語れない。そもそも大手のグループウエアの操作性に頭を悩ませていた時、青野が目をつけたのがインターネットソフトの操作性のよさだった。

「画面の文字をクリックすれば詳細な情報が得られる。非常に簡単で誰でも使えます。グループウエアもそれくらい簡単にできないかと考えました。それで、インターネット閲覧ソフトの機能を使えば、誰でも簡単に使えるグループウエアができると思いついたのです。必ず売れると確信しました」

社員のくつろぎスペースとなっている本社ラウンジ。ドリンクコーナーをはじめダーツ、漫画、マッサージチェアまで用意されている。
社員のくつろぎスペースとなっている本社ラウンジ。ドリンクコーナーをはじめダーツ、漫画、マッサージチェアまで用意されている。
同社が創業したのはインターネットがちょうど普及しはじめた頃だ。
「高校、大学時代はプログラムを書いて小遣い稼ぎをしていたくらいのパソコンおたくでした」こう公言する青野だからこそ、インターネットを見てピンと来て、画期的な製品開発のヒントをつかんだのだろう。だが、仕事仲間3人と起業した会社で青野が担当したのは販売戦略。製品の研究開発はソフトウエアエンジニアである畑慎也(現サイボウズ・ラボ代表取締役)に任せ、どう売るかを考えるのに専念した。

そこで再び注目したのが、インターネット。大手企業のように店頭で商品を売るのではなく、買い手がインターネットを通じてデータを受信するダウンロード形式の販売を考えた。購入希望客は店頭で商品パッケージを手にして主な仕様や特徴を知ることこそできないが、試しに使ってみることができる。

「店に置いてもらうには、CDにして商品パッケージも作らなければなりません。不具合が見つかれば全品回収になる恐れもあり、コストがかかります。それよりも、リスクの少ないダウンロード形式にしようと考えました。インターネットで宣伝して、興味を持ってくれた人に60日間無料で試してもらい、気に入ったら購入してもらう販売方法です」

できるだけ多くの人に使ってもらうため、価格も抑えた。「サイボウズOffice 1」は100人のグループで使う場合、38万円。大手メーカーのグループウエアの約10分の1の価格という。インターネット販売に踏み切ったのは、資金力不足をカバーするほか、顧客ターゲットを見極めたうえでの決断だった。

「会社を設立した当初は資金がなかったので、1社ずつ顧客を説得して回るようなコストはかけられません。そこでポイントになったのは、誰に売るか。私たちが顧客と考えたのは、グループウエアを導入したいけれども大手メーカー品は費用がかかるし難しい、とためらっている人たちでした。また、グループウエアを導入した場合に、費用対効果がどれくらい上がるのかを重視する人たちに狙いを定めました」

97年当時はまだインターネットの草創期で利用者は今とは比べものにならないくらい少ない。それだけに、顧客の絞り込みは奏功した。
「当時、グループウエアの導入を考えていたのは、コンピューターにも比較的詳しい方々で、色々な情報をインターネットから得ようという意識も高かったと思います。インター
ネット広告で興味を引き付ける方法は、そうした方々の志向にぴたりとはまったと思います」

独自のキャラクターによる強烈な印象の広告で顧客の目を引き付ける

青野はさらに大手企業と互角に競い合うための策を練った。無名のベンチャー企業が、どうすれば多くの人々を呼び込めるかをとことん考え、興味をかきたてて強い印象を残すインターネット広告のあり方、イメージ戦略を追求し、試行錯誤を繰り返した。そうして生まれたのが「ボウズマン」というキャラクターだ。

「アメリカンコミックのキャラクター風のイラストを付けて、広告に強烈な印象を与えようと思いつきました。『地球上のビジネスパーソンの危機を救うため、日夜奔走するイントラ星からの使者』という設定のイメージキャラクターです。評判がよかったので、その後、CG(コンピューターグラフィックス)にしました。今では2m大の立像が会社の入り口にあります。テーマソングまで作りました」

ビジネスソフトでこういったキャラクターを持つ会社はほかにない。アニメ世代の受けもよかった。インターネット広告への反響は同社のウェブサイトへのアクセス数の増加として表れ、売り上げも伸びた。同時に「サイボウズOffice」シリーズの機能向上を重ね、会社設立から3年後の2000年には導入企業が5000社を超えた。この年、サイボウズは東証マザーズに上場し、東京に本社を移転した。

「小さな船を海に浮かべたら、追い風が吹いてきただけです」
青野は淡々と語るが、簡単に使えるグループウエアへのニーズが青野の読みどおり存在していたことが成功を呼び込んだ。もちろん、IT(情報技術)の急速な普及拡大が追い風になったのも事実だ。

パソコンが社員1人1台の時代になり、併せて各パソコンをネットワーク化する必要性も生じてきた。データベースをどう活用するかが課題となり、グループウエアの注目度も増してきたのだ。躍進を続けるサイボウズは、02年に東証2部、06年には東証1部への昇格を果たした。

会社設立から10年にして急激な発展を遂げたわけだが、常に先を見据える青野は、事業がさらなる拡大期に入ったと捉えている。例えば、これまであえて避けてきた店頭での商品販売も始めた。今年7月からソフトウエア販売会社のジャングルと業務提携し、家電量販店で「サイボウズOffice 6」のパッケージ販売をスタートした。国内企業の80%までを占める従業員が数十人以下の中小企業にまで販路を広げるのが目的という。

M&A(企業の合併・買収)により業務を拡大し、10社以上の関連子会社を擁する企業集団に成長した。ただし、青野は「あくまで核はグループウエア」と強調する。

「誰もが使えるグループウエアを追求するという、設立当初からの姿勢は崩していません。当社の生命線であるグループウエアをもっと便利にするために、周辺ビジネスを補って体制づくりをしています。ネットワークシステムの保守や運用、携帯電話といった通信サービス、インターネット上での情報サービスなど、派生事業をそれぞれ関連会社で分担しています」

ワクワク感を大切にしながら世界市場を目指す

経営者の立場で、青野が大切にしているのは「ワクワク感」だという。同社のキャラクター「ボウズマン」もその表れだが、ワクワクしながら仕事ができるような環境づくりにも常に取り組んでいる。
「以前は質素倹約を身上とする会社でした。段ボール箱をゴミ箱として再利用したりしてね。でも、社員が楽しく働けることこそ会社の成長につながると考え、長く働いてもらうためにも、社内環境を整えなければならないと思い至ったのです」

こうして生まれたアイデアのひとつが、都市名を付けた会議室。和風の内装でまとめた「京都」、壁が若草色でソファがオレンジの「松山」など、全10都市の個性的な会議室がある。また、ラウンジは社員のリフレッシュスペースとして、マッサージチェアやダーツ、ドリンクコーナーを取りそろえてある。気分転換して仕事の能率を上げるのが狙いだ。サイボウズという社名にも、青野たち創業者の「ワクワク感」が込められている。「電脳」を意味する「cyber」と、親しみを込めた子供の呼び方「坊主(bozu)」の造語だ。

今後の目標を尋ねると、青野は即答した。
「グループウエアで世界一になること」
その地歩を固めるため、5月にサイボウズ上海を設立した。すでに05年1月から10言語対応のグループウエア「サイボウズShare 360」を開発し、インターネットのほか、アメリカ、アジア、ヨーロッパなど世界の販売店を通じて販売している。

「私たちのグループウエアは、まさにアジア企業にマッチすると考えています。アジアには、日本がそうであるようにみんなが見えるところにホワイトボードを置いたり、グラフを掲げたりして〝和.を重んじる文化がありますから。それに対して、欧米は広いオフィスでも各社員が間仕切りに囲まれたスペースで仕事をする〝個.の文化ですよね。でも、将来は、欧米のオフィスのすべての間仕切りを取り払うくらいの勢いで、このチームワーク文化を世界に広げたいですね」世界を見据える青野の目が輝いた。(敬称略)



【プロフィール】
青野慶久(あおの・よしひさ)
1971年愛媛県生まれ。94年大阪大学工学部情報システム工学科卒、松下電工入社。BA・セキュリティシステム事業部営業企画部に在籍、コンピューターシステム構築に携わる。97年「誰でも使えるグループウエアを開発したい」という思いから、仕事仲間2人とともにサイボウズを愛媛県松山市に設立。「サイボウズOffice」シリーズ、「サイボウズガルーン」「サイボウズデヂエ」など、新商品を次々と立ち上げる。趣味は野球。

【会社クレジット】サイボウズ
【本 社】〒112-0004 東京都文京区後楽1-4-14
【創 業】1997年8月
【T E L】 03-5805-9035
【資本金】5億5300万円(2007年1月末)
【売上高】100億1800万円(2007年1月期連結)
【従業員】209人(2007年1月末)
【事業内容】情報通信、情報提供に関するサービス、グループウエアなどソフトウエアの開発、販売、保守
【URL】http://cybozu.co.jp/

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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