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第二の「ソニー」や「ホンダ」を100社つくる

ドリームインキュベータ会長 堀 紘一

ドリームインキュベータ会長 堀 紘一(ほり・こういち)/文・市川昭彦(2007年10月11日更新)

バブル崩壊後の「失われた10年」と呼ばれる経済の低迷期、経営コンサルティングのプロとして知られる堀紘一(62)は壮大な夢を掲げてドリームインキュベータを創業した。日本再生のモデルは戦後、中小企業から世界へと飛躍した企業にあるという信念のもと、ベンチャー企業の株式上場を次々と支援し、東証1部に昇格させる実績も上げている。

ベンチャー企業に足りないのは資金よりも“知恵と人”

堀紘一はボストンコンサルティング日本法人の社長として多くの企業の戦略策定や組織の構築に携わってきた。その堀が自らドリームインキュベータを創業したのは2000年6月。日本経済がバブル崩壊後の先の見えない低迷期にあるなか、日本という国が再び活気を取り戻すにはどうしたらいいかを熟慮しての決断だった。

「戦後、中小から出発した企業が世界的な大企業に成長していったように、優秀でやる気のあるベンチャーが一定数出てこないと、この国はもう成り立たないのではないかと考えました。それでベンチャー企業を支援・育成して『第二のソニーやホンダを100社つくる』という目標を掲げ、起業したのです」

同社の事業は、最大の目的であるベンチャー企業の支援・育成に加え、主に大企業の経営相談や指導に当たるコンサルティング、そして企業を資金面から支援する投資という単に3本柱からなる。弁護士、公認会計士、経営コンサルタント、投資銀行家、術者などのプロたちが、あらゆる面でベンチャー企業から大企業までを支援する仕組みだ。

社名の「ドリームインキュベータ」の「ドリーム」は夢。「インキュベータ」はもともと卵をふ化する器という意味だ。いわば「夢のふか器」。ベンチャーを支援し、育てるという創業の精神が込められている。ベンチャーへの支援といえば、投資によって資金を提供するベンチャー・キャピタルを思い浮かべがちだが、ドリームインキュベータの行なう支援は、それとは一線を画する。単に資金の提供にとどまらず、企業が大きく発展するまで育て上げるのだ。

「ベンチャー企業は確かにお金を必要としているが、お金よりもっと足りないものがある。それは何かといえば“知恵”と“人”です」
多くのベンチャー企業の経営者は若くて経験も少ない。大企業に比べれば社長を支える人材も限られている。成長を遂げ、株式上場が視野に入っても、上場のために具体的に何をすればいいのかも分からない。下手をすれば、証券会社のいいなりになって不利な条件をのまされることにもなりかねない。

さらに、上場を果たして一時的に株価が上昇しても“ブーム”が終われば株価は落ち着く。投資対象としての魅力が失われ、ベンチャー・キャピタルなどの投資家はいっせいに手を引く。堀の考える支援は、そこから先が本番だ。「ベンチャー企業が上場するのを支援し、上場した企業がさらに成長して、東証1部に昇格するまで面倒を見る。これが我々のいう『一気通貫のサービス』なんです」

一気通貫といえば、マージャンで同じ種類の牌を一から九まで揃える役。それだけ一貫したサービスを行なうということだ。支援したベンチャー企業が1部上場企業になれば、当然、支援する側にもより大きな利益をもたらすことになる。

ドリームインキュベータはインキュベーション(育成)、コンサルティング、インベストメント(投資)の3本柱よってクライアント企業をベンチャー段階から大企業段階まで、一気通貫でサービスを提供する。
ドリームインキュベータはインキュベーション(育成)、コンサルティング、インベストメント(投資)の3本柱よってクライアント企業をベンチャー段階から大企業段階まで、一気通貫でサービスを提供する。


堀の2通の手紙がきっかけでよみがえった“最後のヒルズ族”

ドリームインキュベータの支援を受け、昨年12月に東証マザーズへの上場を果たしたのがソースネクストだ。パソコン用ソフトを低価格で販売する「コモディティ(日用品)化戦略」で急成長を遂げ、ソフトの販売本数で4年連続の日本一を達成するまでになった。かつて“ヒルズ族”ともてはやされたベンチャー起業家たちが次々と失速するなか、今も六本木ヒルズ(東京都港区)に本拠を構える。着実に業績を伸ばし続けるソースネクストの代表取締役・松田憲幸は、いわば“最後のヒルズ族”である。

堀のことを、松田は「感謝という言葉で済ませるには申し訳ないくらい、かけがえのない人」と言う。この言葉は決して大げさではない。堀の存在がなければ東証マザーズへの上場は実現しなかったかもしれないのだ。2人が最初に出会ったのは、ドリームインキュベータが創業して間もない頃だった。
「その時すぐにご縁ができたわけではありませんが、その後で堀さんからお手紙をいただいたことが強く印象に残っています」(松田)

堀の直筆による手紙にはこう書かれていた。「あなたにはプロデューサーとしての素質を強く感じました」

この後、ソースネクストは発展し、02年2月にナスダック・ジャパン市場に上場する運びとなったが、直前に事件が起き、上場中止に追い込まれる。会計処理の不正を示唆する投書が大阪証券取引所に投げ込まれたのだ。監査法人が「問題なし」と結論を出したのは上場予定日の5日後。調査期間中、投資家の資金を拘束できないため、会社が上場承認を取り下げたあとだった。

堀から2通目の手紙が松田のもとに届いたのはそんな頃だ。そこには独り言のようにこう書いてあった。
「そろそろ私の出番かな」

いったんは上場の夢を絶たれたソースネクストだが、ドリームインキュベータの支援を受け、4年半を経て東証マザーズへの上場を果たした。主幹事は野村證券。監査役には弁護士で企業法務の第一人者である久保利英明が就いた。初値は公開価格の22万円を61%上回る35万5000円を付けた。堀は松田にさらなる目標を示している。その1つが「年度内に東証1部に上場すること」。そしてもう1つが、「売上高1000億円企業を目指す」ことだ。ちなみにこの数字は現在の売上高の10倍にも相当する。

「堀さんのすごいところは自信を与えてくれることです。自分で言うのははばかられますが、私のことを『天才』と持ち上げてくださる。あの堀さんが言うのだからと、不可能なこともだんだん可能になる気がしてくる」と松田は言う。

支援するのは「眼鏡にかなった」企業だけ

ドリームインキュベータが支援するのは「我々の眼鏡にかなった企業だけ」と、堀は明快に言い切る。「ソースネクストの場合は、松田社長に最初にお会いした時に、この会社は伸びるぞ、支援のしがいがあるぞと感じた。から支援したのです」
いうまでもなく、それを見抜くには眼力が必要だ。では、具体的にはどんなベンチャー企業が「眼鏡にかなう」のか。

※MDP(Multi-Disciplinary Practice)とは戦略コンサルタントや技術専門家、公認会計士、弁護士など様々な分野のプロフェッショナルの融合集団のこと。幅広い分野の専門家を擁するのがドリームインキュベータの特徴で、広範な領域にわたってクライアント企業をサポートできる。
※MDP(Multi-Disciplinary Practice)とは戦略コンサルタントや技術専門家、公認会計士、弁護士など様々な分野のプロフェッショナルの融合集団のこと。幅広い分野の専門家を擁するのがドリームインキュベータの特徴で、広範な領域にわたってクライアント企業をサポートできる。


「まずビジネスモデルを見ます。他社の商品なり、サービスなりと明確な違いがあるか、差別化できるか、それにお金がチャリン、チャリンと入ってくるような資金の〝回収エンジン?があるかどうかですね。2番目に、経営者にリーダーとしての器があるか、人望はあるか、人物を見ます。3番目は幹部です。幹部を含めたチームが、現状維持ではなく今後の成長を期待できるようなチームなのかどうかを見ます。4番目が株主構成です。例えば、株主にベンチャー・キャピタルがたくさんいれば、上場しても株がどんどん売られてしまいますから」

支援すると決めた企業に対しては、上場企業としての「社格」を上げることを最重要課題とする。ソースネクストの松田が振り返る。
「堀さんは『上場を甘く見てはいけないよ』が口ぐせでした。そのとき厳しくたたき込まれたことが今も生きています」例えば「決算の下方修正は絶対にしてはいけない」「決算の遅い会社は信用されない。決算は早くしろ」と具体的に助言されたことが、現在の「着実な経営」に生きているというのである。

投資にとどまらずベンチャー企業を育てる目的が認知されてきた

在、ドリームインキュベータの売り上げの7割程度までは、ベンチャー企業のインキュベーション(育成)・ビジネスが占めている。創業当初は大企業向けコンサルティングが約8割を占めていたが、今では約3割。本来の目的であるベンチャー企業の支援・育成が軌道に乗り、比率が逆転するまでになったのだ。大企業向けのコンサルティング料が1社当たり月に2000万~3000万円になることを考慮すると、同社のベンチャー企業支援がいかに実を結んでいるかがうかがえる。



では、大企業のようにコンサルティング料を支払う余力のないベンチャー企業を相手に、いかにして収益を上げるのか――。
これに関しては、2つの手法がとられている。1つはコンサルティング料を受け取る代わりに、社長が持つ株を一部譲渡してもらうというもの。もう1つは、相手先企業に新株予約権を発行してもらう手法。これにより、株式を特定の価格で購入できる権利が得られる。上場によって株価が上がれば、その分がドリームインキュベータの収益になる仕組みだ。

「この2つの手法を使えば、現金を持っていないベンチャーも支援することができます。ただし、上場することが前提条件。あくまで上場を前提にして急成長したいというベンチャー企業を支援するわけです」

ドリームインキュベータの業績は、確実に伸びている。設立2年目の02年には東証マザーズに上場し、わずか5年目の05年9月には東証1部への上場を果たした。売上高を見れば、01年3月期の6億3530万円から06年3月期には41億7500万円へと5年間で6倍にまでふくらんだ。直近の07年3月期は新興市場株価の大幅下落などが要因で売上高が18億6100万円にとどまったものの、「我々のビジネスは確
実に認知されてきた」と堀はあくまで強気だ。

「創業当初は、ベンチャー・キャピタルとどこが違うのかと言われたものです。それが最近では、我々は投資にとどまらず、ベンチャー企業を育てるインキュベータだということが理解されてきました。当社が手がけた企業の中から株式公開した企業も2ケタ以上にのぼり、そのうち2社は東証1部に上場しています。特に、一度は上場に失敗したソースネクストを上場させた昨年末あたりから市場の反応が変わり、契約件数が飛躍的に増えてきました。1年前に比べて数倍増の手応えがあります」
もちろん「第二のソニーやホンダを100社つくる」という当初からの夢を、単なる夢で終わらせるつもりはない。

「ソニーやホンダも5年や10年であそこまでになったわけではない。まずは、優秀なベンチャー企業をどんどん東証1部に上場させるところから始めていきます。将来、必ず第二のソニーやホンダが続々と出てくると私は信じていますよ」

今の日本に何より求められているのは、誰もが共有できる「夢」ではないか。堀に共感する起業家たちの輪は少しずつだが確実に広がっている。(敬称略)



【プロフィール】
堀紘一(ほり・こういち)
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞社に入社。経済部記者として活躍する。73年三菱商事に入社。ハーバード大学に留学して80年経営学修士(MBA)を取得する。81年からボストンコンサルティンググループ(BCG)に勤務し、89年社長に就任。00年にBCGを退社し、ドリームインキュベ―タを創業。経営コンサルティング業界の草分けとして知られ、財界に広く人脈を持つ。ビジネスマン向けの著書も多数。

【会社クレジット】ドリームインキュベータ
【本 社】〒153-0051 東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー14F
【創 業】2000年6月
【T E L】 03-5773-8700
【資本金】45億9880万円(07年3月末)
【従業員】68人(07年6月)
【事業内容】ベンチャーの支援・育成を行うインキュベーション、大企業向けコンサルティング、ベンチャーの事業、成長の加速を目的とするインベストメント(投資)
【URL】http://www.dreamincubator.co.jp/

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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