<ベンチャースピリッツ>省電舎 中村健治社長:中小企業経営・新規事業ほか企業経営に今すぐ役立つ!

見つかる!儲かる!助かる!経営者の味方 WizBiz(ウィズビズ)

WizBiz ホーム > ビジネスマガジン > インタビュー:成長企業インタビュー > <ベンチャースピリッツ>省電舎 中村健治社長

ビジネスマガジン

無駄を省けば客も自分も得をする

<ベンチャースピリッツ>省電舎 中村健治社長

省電舎 中村健治社長/文・上田里恵(2008年04月24日更新)

地球温暖化防止に向けて二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減を定めた国際条約「京都議定書」の第1次約束期間が今年からいよいよスタートした。この京都議定書が採択された1997年より約10年も前から省エネ事業に着手していたのが、省電舎を率いる中村健治だ。「顧客も私たちも得する省エネを」という思いを込めて展開する環境ビジネスは今、時代の追い風を受けて一段と大きく成長しようとしている。

省エネによる経費削減分から設備導入の費用をまかない
削減値も保証するエスコ事業


「そんなうまい話が本当にあるのか?」中村健治が省電舎を起こし、省エネ事業を始めた86年当時、商談の席でエスコ事業の仕組みを説明すると、顧客から決まってこういう声が上がったという。

「今でこそ関心が高まっていますが、認知されていない頃は疑われましたね」
中村はそう振り返る。エスコはESCOとも表記し、Energy Service Companyの頭文字をとった略語だ。

企業のビルや工場などに総合的なエネルギー削減策を提供する省エネビジネスとして、アメリカで発展した。対象施設の現状調査をして削減できる光熱費を割り出し、その方法を提案し、設備の施工・改修、維持管理までを行なう。

照明や空調設備から変電設備、冷温水ポンプなど、施設運営に使われるエネルギーのすべてが削減対象だ。削減値は「10%削減で年間1000万円」というように具体的に弾き出す。新たな設備と改修にかかる費用、エスコ事業者への報酬などはすべて省エネで浮いた経費でまかなわれ、省エネ効果はエスコ事業者が保証する仕組みである。

省電舎の場合、設備はリース契約とし、リース料は省エネ分から捻出するため、顧客は初期投資の必要もなく、省エネによって経費を削減できる。しかも、提案した削減数値の70~80%を保証し、達成できなければ対策として設備を追加するなどして補填している。

「リスクを負うことなく省エネができるため、顧客企業にとっては一石二鳥。そこがうまい話と思われてしまうのでしょう」
これまで手がけた事例は2900件。ホテル、オフィスビル、病院など大規模施設を中心に多岐にわたる。例えば東京都港区のホテルの場合、照明器具の変更、空調用ファンの回転速度調整や出力トルクの調整が容易になるインバーター化、厨房給排気制御などを2期に分けて導入したところ、年間エネルギー消費量の9.4%の削減に成功している。

他社に先駆けて実績を積み重ねた省電舎は、04年にエスコ事業専業者として初の東証マザーズ上場を果たした。07年3月期の売上高は22億8469万円(連結、決算期変更のため6カ月決算)に達している。



顧客に負担をかけず利益を確保する姿勢が省エネ事業でも生きる

中村の起業の原点は、子供の頃から好きだったラジコンなどの模型ビジネスだ。丸正通信精器に入社して設計に携わり、74年にはラジコンのプロショップ「エール・ケン・フォー」を立ち上げ、製品の輸入販売と同時に設計開発も行なった。営業方法にも工夫を凝らした。

「地方に住む人が電話料金を気にしないよう、全国数カ所に中継電話を設置し、受けた電話を東京に転送する仕組みを考えました。支店を置くのと比べて事務所費用がかからないという利点もありました」

顧客が買いやすい環境を整えたことで、業績は着実に上がった。だが、しばらくすると競合他社も通信販売に乗り出してきた。必然的に値引き合戦が始まる。中村の次なる手は「割賦販売」だった。

「値引きで勝負していては会社が損をするだけ。定価でも分割払いにすれば顧客の負担が減るうえ、自社の利益も確保できます」
省電舎が経営理念とする「顧客も自分たちも得をする」との発想は、すでに30年前に生まれていたのだ。

省エネに目を向けたのは、ラジコンの売り上げが順調に伸びて、自社ビルを建てた頃だ。
「自分でビルを管理するようになると光熱費が気になって。電気料金を下げるために空調と照明を工夫してみると、25%くらい節約できたのです。『これはビジネスになる!』とピンときた。ちょうどオイルショック直後で、省エネは世間の関心も高くなっていました」

早速、省エネ事業部を立ち上げた。「無駄を省くことでお客に利益を得てもらおう」という思いから派生した省エネビジネスに着手。13年後には省電舎を設立して新たなスタートを切った。事業の軸を省エネに移すうえで中村が重視したのは、それまでと同様に「顧客に負担をかけず、会社も顧客も儲かる仕組み」だった。

「企業が光熱費を削減したいと思っても省エネは事業の本流ではないので、負担が大きければ、依頼してくるはずがないと考えたからです」

蛍光灯の省エネに威力を発揮する「エコステップセンサー」。オフィスの明るさ、人数を感知し、自動で明るさを調節する。
蛍光灯の省エネに威力を発揮する「エコステップセンサー」。オフィスの明るさ、人数を感知し、自動で明るさを調節する。


そこで編み出したのが、「経費の削減分ですべての費用をまかなう」という方法だ。エスコ事業の根幹をなす考え方だが、中村はエスコという言葉も知らないまま、同様のビジネスモデルを自ら考えついたのである。しかし当時はビジネスモデルを説明してもなかなか信じてもらえない。省エネ事業を売り込む時も初期投資にかかる費用を説明すると「そんなにかけてうまくいかなかったらどうする」と反論された。中村は、ならば効果を保証しようと考えた。

「削減効果を保証すれば、お客さんも受け入れてくれるのではないかと考えました。例えば省エネ事業に取り組むことで電気代が半分になるなど、こちらが提案数字を保証するのです。そうすればお客さんは絶対に損をしない。それほど工夫しなければアピール力はなかったのです」

地道な説得で少しずつ顧客を集めて実績を重ねながら市場を開拓していった。結果を出せば、顧客のつながりで仕事が広がることもある。コスト削減分で必要費用を支払い、お金があまれば利益となる。このビジネスモデルが発展するのは、エスコ事業との出合いからだ。

「アメリカで発達していたエスコ事業のビジネスモデルを日本に持ち込んだのは、日本総合研究所の筒見憲三さん(現・ヴェリア・ラボラトリーズ社長)です。筒見さんも当初は日本でもビジネスとして成立するかどうか迷っていたようです。当社を取り上げた新聞記事を見た筒見さんから、『ビジネスモデルがアメリカのエスコとまったく同じ。日本版エスコを作るために一緒にやりましょう』と声をかけていただいたのがエスコとの接点になりました」

日本総研の呼びかけに賛同した数社を中心にエネルギー事業研究会が発足。中村も自社のノウハウを披露しながらエスコ事業を学んだ。まさに日本版エスコの草創期だ。その後、省電舎の省エネ事業は本格的なエスコ事業へと歩みを進め、日本総研の研究会は8社の出資を得て、97年にファーストエスコとして独立した。国の政策による追い風も吹いた。

京都議定書会議の前年の96年には資源エネルギー庁に「エスコ検討委員会」が発足し、翌97年には資源エネルギーセンターに「エスコ事業導入研究会」が設置されて、事業展開の条件整備に向けた調査が始まる。99年には民間の「エスコ推進協議会」も発足、エスコ事業の紹介と市場開拓への取り組みを始めた。

競合相手が増えるなかスピードと商品開発力で他社に水をあける

地球温暖化対策としてのCO2削減の取り組みに国際的な関心が高まる近年、エスコ事業には多くの企業が参入している。手ごわい競合相手が増えたなか、省電舎の強みはどこにあるのか。中村が真っ先に挙げるのは「スピード」だ。

「このビジネスの生命線は『調査、提案、設計、施工、検証』というプロセスを短期間で行なうこと。顧客が省エネを早く実現し、削減効果を実感できるからです。当社には2900件の改修事例、1万件以上の調査を手がけた実績があります。場数を踏んだ経験から、どこを削減すれば最も効果的かが見極められますから、調査段階から無駄を省き、スピードアップできるわけです」
例えば年間に約5000万円の光熱費がかかる企業の調査なら、2日程度で終えるという。

2つ目は商品開発力だ。
「既存のメーカー商品で省エネ効果が見込めない場合は自社で開発しています。国内外に委託工場があり、オリジナル商品を必要な時に必要なだけ生産する体制を整えています」
直接販売のため、中間マージンが発生せず安く提供できるのもメリットという。そうはいえ、特定の顧客向けの商品を作ると、かえってコスト高にならないのか。

「もちろん、商品開発の際には付加価値とコストのバランスを考えています。その商品を使うことで1000円の省エネが実現できても、開発に1100円を費やしたのでは話にならない。ただ、おもしろいもので、自社開発した省エネ商品は往々にして汎用性が高く、様々な会社に適用できます。ある会社のために開発した照明器具が他社でも使えるケースが出てきます。開発コストは、必ず元が取れます」

こうして生まれたオリジナル商品は、省電力関連、節水関連など20種類以上にのぼる。例えば、蛍光灯の消費電力を削減する電子安定器「エコステップセンサー」。人感センサーと照度センサーを組み合わせ、従業員の在席状況と窓から差し込む光の加減により室内の照明を自動調節して最大で約70%の消費電力を削減できるという。

節水関連では、男性用無水小便器「ウォーターフリー」が話題になった。洗浄に水を使わず、掃除が簡単で、カートリッジ上部の密閉液により悪臭も防ぐ。1個で約36tの節水になるという。現在までにオフィスビルのほか、電車の駅などにも導入されている。
「オフィスビルの場合、使用する水の80%はトイレ用。削減すれば下水処理に電気を使う必要もなくなる。ひいてはCO2削減につながります」

男性用無水小便器「ウォーターフリー」。節水できるだけでなく、水あかが付かかず悪臭もない。衛生面にも優れている。
男性用無水小便器「ウォーターフリー」。節水できるだけでなく、水あかが付かかず悪臭もない。衛生面にも優れている。


廃棄物や施設管理コストの削減にも意欲を燃やし事業体制の構築を推進

省電舎が目指すのは「エネルギー分野のワンストップサービスカンパニー」。ビルや施設にかかわる全エネルギーコストの削減だけでなく、施設管理コスト、産業廃棄物にまで削減対象を広げている。ファシリティマネジメント事業(コスト削減を含めた施設管理業務)を手がけるファシリティパートナーズ(東京都中央区)を子会社化、さらに、ITや最新技術を使って廃棄物処理のコスト削減に取り組むリサイクルワン(東京都渋谷区)と業務提携を結び、グループ力を強めている。なかでも再生可能エネルギーとして下水からの発電、バイオマス発電や熱利用の検討を始めた。

「省エネは、使用エネルギーを効率よく削減するのが第一。次は、捨ててしまうものからエネルギーを取り出す方法を考える。例えば産廃を炭化処理すれば、発生したバイオマスガスを利用して発電機をまわすことも可能です。再生エネルギーを利用する分野は今後ますます必要となる」
事業構想を語りながら目を輝かせる中村は元々、技術者として模型の設計に明け暮れていた。そんな中村が省エネに夢中になったのはなぜか。
「省エネのおもしろさは、削減数値など必ず目に見える結果が出ることです。それから探す楽しみ。調査で削減余地の高い工場に足を踏み入れると、ワクワクします」

好きなことばかりしているから毎日が充実している。多忙のため趣味のラジコン飛行機に時間を割けないのが唯一の不満だという。それでも忙しい合間をぬって、年に数回はラジコン飛行機の競技会に出場する。この競技は、スピードと滞空時間という相反する要素を両立させる絶妙なバランス感覚が問われる。「顧客も自分たちも得する」というエスコ事業と相通じるものがありそうだ。(敬称略)



【プロフィール】
省電舎 中村健治社長
1948年山梨県生まれ。ラジコンなど模型が好きで66年に丸正通信精器に入社。71年にマイクロアビオニクスに入社し無線機の設計などに携わる。74年エール・ケン・フォー設立。ラジコンショップを経営し製品の開発・輸入・販売を手がける。ホビーショップでは他社に先駆けて通信販売を行なった。86年省電舎設立。エスコ事業の草分けとして省エネ事業に取り組む。04年12月マザーズ上場。

【会社クレジット】
省電舎
【本 社】〒130-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-11-12
【設 立】1986年6月
【T E L 】 03-6821-0004
【資本金】6億1602万円(07年3月末)
【売上高】22億8469万円
(07年3月期連結:決算期変更のため6カ月決算)
【従業員】26人(グループ全社210人、07年9月末)
【事業内容】エスコ事業とエスコ事業関連製品製造・販売
【U R L】http://www.shodensya.com/

省電舎の中村社長の提案により
電気、ガス消費量の約25%削減に成功


せんぽ東京高輪病院 施設管理課山本正行係長

せんぽ東京高輪病院(東京都港区)が省電舎に依頼して省エネ改修にとりかかったのは98年。前年に高層棟が完成したのがきっかけだった。省エネ改修工事は約3年にわたるプロジェクトとなった。

「最初は、照明器具に調光安定器を付けてはどうかと考えていましたが、省電舎の中村社長から空調や熱源ポンプなど動力関係に着手した方が節電できると提案されました。まず熱源ポンプや給排気ファンの回転数を調節できるようにインバーター化することから始めました。長期間の改修だっただけに、省エネ効果の高いものから導入し、メリットを生み出す省電舎の手法に満足しています」施設管理課の山本正行係長は太鼓判を押す。

節約できた光熱費で省エネ設備のリース料、省電舎への支払いをまかない、それでもお釣りがくるという。今回の改修により、エネルギー消費量は電気とガスを合わせて約25%削減された。「改修前の電気料金は、高層棟だけで月900万円。今は、99年に完成した低層棟を合わせても700万円以下」と効果が上がっている。今後も「省電舎と手を組み、効果がありそうな部分から着手したい」と山本係長は期待している。

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

がんばる社長を応援するビジネスマガジン地域住民に愛される美味しい食品や海外での展開も見据えて開発した食品などを製造している企業や個人事業主を発掘し、彼らが必要とする経営課題を解決するソリューションサービスを提供することで、成長していただくことを目的としたビジネスコンテストです。

関連カテゴリ

関連記事

<ベンチャースピリッツ>省電舎 中村健治社長:中小企業経営・新規事業ほか企業経営に今すぐ役立つ!

新規事業/フランチャイズ情報:外食 | 美と健康 | 教育 | 食品流通 | 保険・不動産 | 支援ブランド
セミナー/イベント情報:経営セミナー | 事業説明会 | 経営課題別研修

フランチャイズ・経営セミナーの「B STYLE | ビースタイル」は「WizBiz | ウィズビズ」に生まれ変わります。