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CASE STUDY

こんな手!あんな手!有力企業が取り組む資金調達術

世界ブランドとの取引開始が決断を早めた 株式会社日本ホームスパン /B STYLE15月号より(2005年8月15日発行)

有力企業が取り組む資金調達術 CASE 1 『グリーンシート』

投資家から資金を直接集める直接金融の波が地方の有力中小企業にも広がりはじめている。 その手法はさまざまだが、いずれも資金調達を縁故に頼むなど身の丈にあった施策が大きな特徴だ。その実例を紹介します。

シャネル社との取引開始がグリーンシート登録の後押しとなった菊池社長
シャネル社との取引開始がグリーンシート登録の後押しとなった菊池社長
「どうあがいても収支はとんとん。銀行の融資枠はすでにいっぱいだし、このままではいずれ資金がショートし経営が行き詰まることは目に見えていた」そう語るのは、日本ホームスパンの菊池完之社長。同社は、菊池社長のもと、2004年8月、岩手県でははじめてグリーンシートの登録企業となった。
【グリーンシート】
日本証券業協会が、将来性のある未上場企業の資金調達の場として1997年に開設。証券取引法上の正式な市場ではないが、登録企業の株式は特定の証券会社を通じて売買される。将来、東証やジャスダックにステップアップすれば値上がり益を期待できる半面、投資リスクもあるとされる。4区分85銘柄が登録。

■低価格競争による売り上げの減少 どう資金を調達するか
700万円の資金を投じて中古品ではあるが設備投資を行なった
700万円の資金を投じて中古品ではあるが設備投資を行なった
 同社の社名ともなっているホームスパンとは、羊毛を手で紡いだ糸を織った、ざっくりとした生地の総称で、ツイードの生地がほぼそれに該当する。
 このスコットランド生まれのホームスパンが岩手県東和町にもたらされたのは昭和初期のこと。国策として同地で振興が図られ、農家の農閑期の副業として盛んになった。
 1955年には菊池社長の父が、民芸としてホームスパンを製造するメーカーとして同社を創業。その後、単なる民芸品から、よりファッション性、デザイン性を重視した工業製品としての商品開発を進めてきた。現在では岩手県内の同社を含めた数社だけが、ホームスパンの生産に取り組んでいる。

 菊池社長がグリーンシートへの公開を考えはじめたのは、2003年の夏のことだ。当時は社会全体が低価格路線をひた走る最中であり、手づくりを主とする同社としては競争がきつく売り上げが減少。冒頭で菊池社長が述べている通り、いずれは資金繰りが悪化し、ショートするのは免れない状況であった。
 菊池社長が資金調達の相談に県中小企業振興センターに赴くと、提案されたのがグリーンシートへの登録だった。

 97年にグリーンシートが開設されて以来、県としてもセミナーを実施し、普及に努めていた。そこで知己を得ていた証券会社の担当者を菊池社長が紹介されたのだ。
 グリーンシートは、登録後店頭での株売買となるため流通性は低いが、それでも株主による増資がしやすくなる。また株主への責任は重くなるが、融資とは違い、償還がない分、経営負担は軽くなる。
 そして同社自身が、フランスのブランドメーカー、シャネル社との取り引きを開始していたことが決断の後押しをした。

■世界の一流ブランドが認めた商品力 それが決断を後押ししたか
人間の手によって紡ぎ出される糸がパリやミラノのコレクションに使われる生地を生む
人間の手によって紡ぎ出される糸がパリやミラノのコレクションに使われる生地を生む
じつは同社は、日本で唯一、シャネル社と取り引きをするホームスパンメーカー。
 01年暮れに開催された見本市で、製品がシャネル社の目に留まり、翌年にはシャネル社から生地のサンプル提供を求められた。それが見事採用となり、菊池社長がグリーンシートを考えはじめた頃には、次年度のオーダーがシャネル社から入ってきたところだったのだ。
 「一流ブランドからの打診は夢のようでしたが、新たにオーダーがきたことで勝負を賭けるしかないと思いを定めた。そのためにもグリーンシートに公開をして、資金調達を図ろうと腹を決めました」

 東証マザーズや大証ヘラクレスなどの新興市場に比べて、比較的公開が簡単といわれるグリーンシートであるが、それでも事前審査は同社にとって厳しいものだったという。
 監査法人による仮審査では、取締役会の議事録が揃っているか、会計上や商法上の不備がないかなどが徹底的に調べられた。
 その次には証券会社審査部から、120問にもおよぶ質問が寄せられ、その一つひとつをクリアしていかなければならなかった。
 菊池社長が中心となって作った事業計画のなかに出てくる売上数値の根拠は何か、そのさいの原価率の根拠は何かなどが、細かくチェックされたという。
シャネル社のさまざまな要求に迅速に応える技術力が同社の武器だ
シャネル社のさまざまな要求に迅速に応える技術力が同社の武器だ
 「従来の手織りだけでは、今後シャネル社の要求に応えられない。

 結局家内制手工業からの脱却を図らなければならなかったのだが、仮審査・審査のプロセスのなかで、経営的にも企業へ脱却できたと実感しています」
 約半年にわたる審査を経て、晴れて04年8月20日に登録が決定。
 その後県内2カ所で個人投資家向けの説明会を開催する。両会場あわせて約50名の参加があったというが、結局のところ、「会社説明書をもって、私自身が取引先や個人的な知人・友人のところに、新株購入をお願いしに歩きました」。
 周囲の反応はおおむね好評。最終的に約200名が新株購入に応じ、5472株が新株として発行された。この時点で同社として5400万円の資金が調達できたことになる。

 調達した資金のうち、約700万円を設備投資し、残りを運転資金としてプールした。
 「こんな小さな会社の新規株式を購入してもらえたことは、当社の将来性を見込んでのことだと思います。株主への責任を果たすためにも、近い将来は流通性のある札幌や福岡などの上位市場の進出をめざしていきたいですね」
 直営店2店の小売販売もあわせ、シャネル社との取り引きをバネに、今後は国内市場のさらなる開拓も果たしていくことを考えている。

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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