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地場産業の振興は、個々の産業・産地の自主的努力による部分が大きい

<朝礼ネタ>「真珠産業の発展を目的とした「真珠振興法」が成立」

株式会社リンク・ソリューション Biz STYLE編集部

2016年6月1日、真珠振興法が与野党も含めた全会一致で可決・成立しました。

■真珠振興法とは
 真珠振興法は十六の条文で構成されたシンプルな法律です。まず、真珠産業と真珠関連の宝飾文化の振興を目的としており、農林水産大臣と経済産業大臣が策定する基本方針に沿って、真珠の生産者の経営の安定や輸出の促進などの措置を講じていくとしています。
 真珠業界には、かつて、品質基準や参入制限を定めていた法律がありましたが、今回の真珠振興法では、そのような義務的規定や規制規定のない、振興に向けた理念を中心に構成されているのが特徴的です。

■地場産業としての真珠
 真珠振興法の目的のひとつに、「真珠の生産性向上」が挙げられていますが、日本での真珠養殖の歴史は明治時代にまでさかのぼるなど、世界に先駆けて産業化に成功した一面があります。
 元々、日本は真珠の産地として有名であり、『魏志倭人伝』にも、卑弥呼の後継者である壱与という女王が中国に対して五千個の真珠を献上した記録が残っています。真珠は美の象徴としてその時々の権力者に愛されてきましたが、天然の真珠は、一万個のアコヤ貝の中から一つ~二つ程度しか採取されることがなく、産業というよりは、滅多に見つけることのできない天然資源という性格が強くありました。
 このような真珠の特性を根本から変え、輸出品としての真珠の地位を確立させていったのは、ミキモトの創業者であり真珠王とも呼ばれた御木本幸吉氏です。伊勢志摩地方の海産物商人として活躍していた御木本幸吉氏は、明治23年に真珠の養殖実験を開始し、明治29年には半円真珠の養殖技法の特許を取得し、日本のみならず世界の宝飾業界に、その名前を知らしめました。この特許取得をきっかけに、真珠の養殖が本格化し、運に頼った特産物から、安定的に生産可能な産業物品に転換していったのです。大正7年には良質な真珠を大量に生産できるようになり、ロンドンの宝石市場にも商品供給を開始、輸出産業の花形にまで育っていきます。
 現在も、ミキモト発祥の地である伊勢志摩地方はもちろんのこと、日本各地で真珠が養殖されており、その多くは輸出港のある神戸に集約され、世界各地に輸出されています。2016年5月に開催された伊勢志摩サミットでも、各国首脳に真珠のラベルピンが配られるなど、真珠は日本を代表する宝石として世界的に知られており、高いブランド力を誇っています。

■真珠振興に向けた課題
 日本各地で地場産業として定着、輸出の花形にまで成長した養殖真珠ですが、その道のりは平坦なものではありませんでした。まず、鉱山技術が進化したことによってダイヤモンドやルビーといった鉱石由来の宝石の産出量が増加していくにつれ、宝飾品全体に占める真珠のシェアは低下していきました。また、これは他の宝飾品にも言えることですが、消費者の嗜好も多様化し、かつての作れば作るほど売れるという時代は過ぎ去ってしまったのです。さらに、真珠の養殖漁場を病禍が襲うなど、真珠養殖業者のおかれた立場は年を追うにつれ、厳しいものになっていったのです。加えて、日本以外の国にも真珠の養殖が広まるとともに、生産量を管理することも不可能となり、宝石としての希少性が薄れ、価格も暴落していきました。
 今後、日本の真珠産業が輸出産業として再出発していくためには、①他国産真珠との差別化、②希少価値の確立、③ブランド力の向上、が必須ですが、今回成立した真珠振興法がどのような役割を果たしていくかは、正直なところ未知数です。
 成立した法律の条文を見ても、その多くは理念・努力規定に留まっているため、法律としての実効性にも疑問符がつきます。真珠振興法では、農林水産大臣・経済産業大臣が定めた真珠産業の振興に向けた基本方針に沿って、都道府県は振興計画を作成することになっていますが、例えば海に面していない長野県、寒くて真珠養殖に向かない北海道にとって、はたして振興計画を作成するだけのメリットはあるのでしょうか。また、国や都道府県は、真珠産業の振興に向けた施策を講じるように努めるといった規定がありますが、あくまで「努める」であり、義務的規定ではないため、確実に予算化されるかどうかも不明瞭なところです。
 真珠振興法は、衆議院農林水産委員長提出の議員立法ということもあり、衆議院・参議院の両院では実質的な議論が行われることなく、このような課題が俎上にのぼることもなく、法律として成立しました。

■地場産業振興の難しさ
 真珠振興法と似た構成の法律として、平成23年に成立した「お茶の振興に関する法律」、平成26年成立した「花きの振興に関する法律」がありますが、これらの法律が成立したことによって、お茶産業や花き産業が成長したという感覚を持つ人は少ないでしょう。もちろん、売上を伸ばした生産者もいるでしょうが、法律の効果というよりも、各社の営業努力に由来する面が大きいのではないでしょうか。地場産業の振興は、国が旗を振るよりも、個々の産業・産地の自主的努力による部分が大きいのです。
参考:財務省貿易統計から作成
参考:財務省貿易統計から作成


 真珠養殖業者・輸出業者の自主的努力によって真珠の輸出金額は回復傾向にあります。真珠振興法は成立しましたが、真珠業界は同法に頼ろうとするのではなく、自主的な努力を忘れることのないように努力していく必要があるでしょう。




※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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