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酒蔵の伝統の技が突破口に

地域資源が新たな可能性を生む

佐々木酒造株式会社(京都府京都市)

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■酒蔵の長所+課題解決=「白い銀明水」誕生!?
 翌2011年、地域資源活用事業に「白い銀明水」が認定された。京都大学と京都府立大学、京都市産業技術研究所が中心となる産官学の連携による4年にわたる共同研究の賜物だった。「寒仕込み」と言われるように日本酒は秋から冬にかけてが勝負だ。酒蔵で仕込みをする蔵人は冬の間だけ雪深い地方から出稼ぎに来るのが習わしだった。だが、1次産業の後継者不足は酒造業界にも襲い掛かる。
日本酒「聚楽第」
日本酒「聚楽第」

 そこで各蔵元はこぞって職人を社員として雇用したものの、夏場の仕事がない。地ビールや梅酒造りなどを夏の仕事として始めた蔵元もあったが、地ビールには多額の設備投資が必要だ。一方、梅酒造りは長年、酒蔵で培ってきた技術をさほど必要としない。「せっかく造るなら京都の酒蔵ならではの設備と技、職人を活かした新たな商品にしたい」。そんな佐々木社長の熱意が麹糖技術を活かす商品に繋がった。
 今でこそ日本酒の主流はキリッとした辛口だが、京都の造り酒屋には元々甘口の酒を造ってきた伝統がある。そのノウハウを「白い銀明水」に活かした。
 原料は京都産米と佐々木酒造の米麹、そして紀州の梅果汁。「言わば、“飲む梅干しおにぎり”と言ったところでしょうか(笑)」と佐々木氏は言う。
 従来の健康飲料には化学合成物の栄養素を入れたものが多いが、「白い銀明水」は自然のアミノ酸やオリゴ糖といった機能性栄養素が入った“天然のエナジードリンク”とも言える。
 時流も味方した。2011年の塩麹ブームを皮切りに、ノンアルコール飲料、甘酒、エナジードリンクと次々にプロジェクトを後押しするブームが到来する。「白い銀明水」の売れ行きは上々。「地域資源活用事業」の成功例と紹介されることも増えた。
 佐々木酒造初のノンアルコール飲料の未知の可能性に驚いているのは、実は造った本人たち。日本酒は酒類販売免許取得店でしか取り扱えず、未成年は当然のことながら、アルコールに弱い大人もターゲット外。飲む時間帯はほぼ夜に限定される。制限の多い商品とも言える。
 だが、ノンアルコール飲料は取扱店や客層に制限がない。「これほどターゲットの広い商品があったのか!」と佐々木氏は驚いたという。
 顧客のターゲットは広いが誰もが製造できるわけではない点も見逃せない。麹づくりを含めれば製造に一週間はかかるため、通常、製造に1日、2日しかかけない大手飲料メーカーはおそらく手を出さない。
菓子「糀乃菓子」
菓子「糀乃菓子」

 そこへ技術の壁も立ちはだかる。吟醸酒を造れるほどの高品質な麹づくりは清酒メーカー、それも比較的小さな蔵元の専売特許なのだ。「私たちの仕事は“酒造り”とは言うものの、実際に米を酒に変えているのは麹菌や酵母、つまり微生物です。われわれの仕事は彼らが気持ち良く働いてくれる環境づくりなんですね」(佐々木氏)。この環境づくりこそが繊細さを極める。
 例えば佐々木酒造で扱う約1.5トンのタンク内は最大で3~4度違うこともある。大手で使うのはその何10倍もある大型タンク。環境をコントロールするのは至難の業だ。ここにビールメーカーと違い、1200軒もの清酒メーカーがいまだに淘汰されない理由がある。小さな蔵元は少量ながらも高品質の酒を、大手メーカーは大量生産でリーズナブルな酒を、というある程度の棲み分けができているというわけだ。

■目には見えない文化も地域資源に!
 2013年には京都発祥の洋菓子メーカー・小川珈琲と老舗種麹屋・菱六との共同研究で粉状の麹を練り込んだ焼き菓子「糀乃菓」が誕生。
 開発や研究に伴い、酒造りの現場へのフィードバックという副産物も手にした。麹の成分を上手に活かせば機能成分のある日本酒造りも夢ではない。これまで使ってきた酒の好適米とは異なる米を使って新たな日本酒が生まれるかもれない。
佐々木酒造社屋
佐々木酒造社屋

 折も折、2013年には和食のユネスコ無形文化遺産登録、さらに京都市で日本初「日本酒で乾杯条例」が施行され、京都では約30年ぶりに日本酒の出荷量が増加に転じた。政府が日本酒を国酒として売り出そうという動きも追い風になるだろう。「この勢いに乗って、次世代に渡すまでに日本酒を安定的に、まずは国内、そして海外へと広めていきたい」と語る佐々木社長。それには地元の食品メーカーのみならず伝統工芸との連携も視野に入れている。佐々木氏は言う。「京都には清水焼や京漆器など一流の工芸品が揃っています。日本酒と徳利や御猪口、それらを入れる西陣織の袋などを組み合わせて海外に打って出るのも面白い。加えて“おもてなし”の心や室礼など形のない文化まで含めて発信していけたら……。地域資源の可能性は無限に広がっていると思います」


<Company Profile>
 佐々木酒造株式会社
 京都市上京区日暮通椹木町下ル北伊勢屋町727
 TEL:075-841-8106
 資本金2000万円
 従業員数18人(ネコ含む)
 http://jurakudai.com/
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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