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草木染めを未来へ

マイトデザインワークス(東京都台東区)

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■10年後を見据えた未来の顧客づくり
 小室氏の実家は父親が創業した染色工房の「株式会社工房夢細工」(福岡県朝倉市)。小室氏は幼少の頃から、家の手伝いで草木染めに触れていた。それが本格的に草木染めを志すようになったのは、東京藝術大学に進んでから。美術学部工芸科で染色を選択。だが、大学では草木染めを教わることはなかった。教えられる教師がいなかったからだ。
 「草木染めは楽しい。その魅力を若い人たちにも伝えたい」と小室氏は考え、卒業後、家業を手伝いながら、そのための方法を模索した。
 草木染めの愛用者は年配者が多く、顧客も年齢層が高い。だが、このままの状態でいたら、いつか顧客はいなくなってしまう。「10年後を見据えて顧客を作っていかなければいけない」(小室氏)。
 そこで2008年、小室氏は家業の傍らで「MAITO」ブランドを立ち上げる。百貨店やセレクトショップからの反応は上々。ブランドにつくファンも増え、2010年同社を設立し、東京での出店を果たした。
技術の高い職人との出会いが、草木染めの新たな可能性を引き出している
技術の高い職人との出会いが、草木染めの新たな可能性を引き出している

 東京の蔵前本店では、売り場の一角に染め工房を設置。東京の水はあまり草木染めには適してないため、染め工程の中心は工房夢細工で行っているが、商品開発など実験的な染めに取り組む際に使用している。それがまた、来店客の評価につながった。
 衣料品の店ではあまり見かけない光景だが、パン屋や蕎麦屋のように作業場が見えるのは、「顧客にとっては、作り手との距離が近くなることでて安心感を与える効果がある。のみならず草木染めの工程そのものに関心を持っていただく機会になる」(小室氏)。
 そこで生まれたのがワークショップ。同店の価格帯にはなかなか手が出せない若い世代でも、ワークショップになら気軽に参加できる。若い人を取り込みたいという小室氏の希望もかなう。
 「癒されたいとか、自分の手で作りたいという人が参加してくれる。参加すると草木染めに対する距離感が変わる」と小室氏。実際に体験することで参加者が得るのは「共感」。自ら染めたものを自らの目で確認できる。その体験は、草木染めへの関心をより高めていく。ワークショップは実際の売り上げとは別に、「共感」を呼び起こす未来向けた戦略とも言えるだろう。
 実際、ワークショップにはリピーターが多く、月2回(各3時間、15名で4セッション)行われ、毎回告知してすぐに予約が埋まってしまう状況にある。参加者の年齢層も購買者層と比べて若く、なかには大学生の参加者も見られる。「草木染めに興味を持った方が“未来の顧客”になってくれれば」と小室氏も期待する。

■顧客と職人をつないで
 新たな価値を見出す「MAITO」の製品は、同社が企画デザイン、草木染め、ニット編みを担当し、その他の過程は全国各地の職人とコラボレーションする形で進めている。その際、小室氏は必ず現地を訪れ、職人と直に話をするという。
マイトデザインワークス 小室 真以人社長<br />「まだ小さな取り組みだが、糸偏業界を盛り上げるインパクトを持つ事業に育てていきたい」
マイトデザインワークス 小室 真以人社長
「まだ小さな取り組みだが、糸偏業界を盛り上げるインパクトを持つ事業に育てていきたい」

 職人の多くは、百貨店などから送られてくる注文書通りにつくっては納品するという“下請け”仕事を長年続けてきたこともあり、往々にして彼ら自身、自らの技術力の高さに気づいていないことがある。そんな彼らが手がけた仕事をつぶさに見て回っていると、さまざまなイマジネーションが湧いてくるという。「とくに無造作に捨てられた失敗作とか、何かの端切れとかにヒントがある」(小室氏)。そこから「これはなぜ、こんなふうにつくっているのか?」「だったら、あんなこともできるのか」……と会話を進めていくうちに、次第に職人たちも乗ってきてくれる。小 室氏自身が染め職人ということもあるのだろう。こういうものをつくりたいという話に、職人の多くは共感してくれる。「私はMAITOブランドを楽しんでつくっている。そこに職人さんが『おもしろそうだね』と参加してくれている」と小室氏は語る。その「おもしろさ」は職人たちとの共有にとどまらず、前述したようにワークショップに参加する人々や、一般のお客様へと伝えていく。それが同社の共感戦略と言えるだろう。
 その姿勢は、同社のホームページづくりにも現れている。単に製品を紹介するではなく、どのようにつくられたかを顧客に伝える一方、職人たちには顧客からの反応や「どんなモデルさんに着てもらったか」など報告する。これにより、職人たちのモチベーションにもつながっている。
 小室氏が同ブランドを立ち上げた理由のもうひとつが「業界の後継者不足」の解決。草木染めはもちろんのこと、糸偏業界自体、後継者不足は大きな問題になっている。知識や職人技を後世に伝えていくのは、業界の急務だ。
 「最終的には福岡にファクトリーを設立することを目指している」という小室氏。染色だけではなく、編み、織り、縫い、製品化なども含めた総合的なファクトリーだ。「若い人たちに職人の技を学んでもらい、ゆくゆくは独り立ちしていくような場にしたい」と小室氏は語る。
 つくり手と買い手の「共感」を広げていくことで、同社のブランドや「草木染め」の技術のみならず、糸業界全体を盛り上げていこうとする小室氏。その視線は、国内テキスタイル産業復活の未来を見据えている。
 

<Company Profile>
 株式会社マイトデザインワークス
 東京都台東区蔵前4-14 -12 1F
 TEL 03-3863-1128
 資本金 300万円
 従業員数6人
 http://maitokomuro.com/

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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