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かばん専門店がつくる防災関連製品

ダイワホーサン(奈良県宇陀市)

従来のランドセルに代わる布製の軽くて丈夫な新しいタイプのランドセルや、サンシェードなどの自動車関連部品……。「縫製」をテーマに製品をつくり続けているメーカー、ダイワホーサン(奈良県宇陀市)。同社は、高性能のライフジャケットの製造を依頼されたことを機に、新たな柱として防災関連の製品を開発。災害に備える社会に貢献すべく、さまざまな商品を生み出している。

■高い縫製技術を駆使
 奈良県宇陀市は、万葉時代の歌人、柿本人麻呂が詠んだ歌にも登場するほど歴史ある地だ。この地に根を下ろすダイワホーサンは、従来のランドセルに代わる布製の軽くて丈夫な新しいタイプのランドセル『Dランド』を開発。ほかに、中高生のための学校指定バッグ『ルートコンパス』など、通学に便利な鞄を中心に開発を行い、製造販売している。『Dランド』は奈良県工業技術センターや信州大学繊維学部との産官学連携事業として開発がなされ、近隣小学校の協力を得て「総合的な学習の時間」を活用し、児童たちに背負心地のテストや歩行実験を実施。その結果を反映し、使いやすい製品を生み出した。
同社の主力製品『Dランド』。従来のランドセルに代わる新しいランドセルとして、軽くて丈夫、雨に濡れても大丈夫な布製のバッグを開発。次世代の通学バッグとして売り出している
同社の主力製品『Dランド』。従来のランドセルに代わる新しいランドセルとして、軽くて丈夫、雨に濡れても大丈夫な布製のバッグを開発。次世代の通学バッグとして売り出している

 『ルートコンパス』は、奈良県内において中高生の通学鞄として50%のシェアを誇るという。ほかに、大手自動車メーカーからの依頼により、サンシェードといった自動車関連部品についても開発から関わるなど、「縫う」をキーワードにさまざまな製品をつくっている。
 そんな同社が数年前から手がけ始めたのが、ライフジャケットをはじめとする防災関連製品だ。2011年に起きた東日本大震災の後、防災関連製品を扱う企業から「ライフジャケットをつくることはできないか?」との依頼が舞い込んだ。それまでライフジャケットをつくっていたメーカーが被災し、事業継続が難しくなってしまったというのだ。依頼されたライフジャケットはレスキュー隊などが使う本格的なもの。使う人の命を守ることに直結するため、高い縫製の技術が必要だった。
 「国内にアパレルメーカーは山ほどあるが、ウチのように厚手の布を扱う会社は少ない」と辻本勝次社長は言う。かつては国内でつくっていた布製の鞄も、多くが海外へと製造拠点を移した。高い縫製技術を擁する国内メーカーで、厚手の布地を扱える会社は少なくなっていた。
 ライフジャケットは形状の違う膨大な数のパーツからなる。しかも、連結部などの樹脂金具やジャケットの中に入れる高性能の浮力材など、布以外の素材でできているものも多い。材料調達力があり国内に製造工場を持つことも、同社に白羽の矢が立った理由だった。

■子どもたちの命を守る
 こうして同社が開発した 11キロの浮力を有する高性能のライフジャケットは、レスキュー隊などに採用された。さらに、高性能ライフジャケットをもとに「学校用の製品を開発した」と辻本氏は言う。
 同社は、もともと通学鞄の企画開発から販売までを独自に行っており、奈良近県を中心に小中学校に営業に行くことが多い。営業先である小中学校が「海に近い場所にあることに気がついた」(辻本氏)。日本では海岸沿いに学校が建てられる傾向があり、海抜ゼロメートルから30メートルほどに位置する学校が、想像以上に多くあるのだ。
 近い将来、日本では高い確率で大地震が起きると言われている。大津波が起きることも想定される。「津波が来た際、このライフジャケットを身につけていれば、少なくとも水に浮くことができる」(辻本氏)。
 開発した子ども用は、装着後脱げてしまわないように、股を通して締める安全帯がついており、広げるとマットレスに変形するなどの工夫もされている。
 辻本氏は「災害の起きていない今だからこそ導入する意味がある」と学校をまわり、販路開拓を行っている。また、地元中心の営業活動と同時に、関東への進出も図る。「南海トラフ地震が起きるという危機感から、関東地域は防災に関する意識が高い」(辻本氏)。児童・生徒の数もほかの地域に比べて多く、東京・千葉・神奈川・埼玉だけで全国の3割ほどを占めるという。関東で売れることで関西での販売が有利になることもある。まずは同社が防災関連製品を企画開発していることを認知させるという。

■階段を降りられる担架を
 さらに「ライフジャケットの販売先として、鉄道会社へもアプローチした」と辻本氏は言う。川や海岸沿いを走る路線も多く、需要が見込めると考えたのだ。
御輿のようにかつげて、左右の持ち手が伸縮することでコンパクトにすることも可能。膝をたてて寝るため、寝ている人が楽な姿勢で運ぶことができる
御輿のようにかつげて、左右の持ち手が伸縮することでコンパクトにすることも可能。膝をたてて寝るため、寝ている人が楽な姿勢で運ぶことができる

 そうした営業活動の中、「階段で使える担架がほしい」との要望があった。人を横たえて運ぶ担架は、持ち手まで含めるとかなりの長さとなり、奥行きのないエレベーターには乗せることができない。また、階段を使って運ぼうにも、カーブの強い螺旋階段などでは、担架の持ち手がひっかかり運べないという事態も生じている。そこで「階段や狭い場所で使うことができる担架がつくれないか」と開発されたのが『らくらく担架』だ。
 この担架は、持ち手のアルミ部分に伸縮機能がついている。階段などの狭い部分では持ち手を短くして使用。膝を折り曲げて乗れるようになっており、階段で頭部を持ち上げて運ぶ際は、椅子に座っているような状態で運ぶことができる。「安定感があり、運ばれている方も安心できる」と辻本氏は語る。
 さらに開発をしていく中で、「人を持ち上げて担架に乗せるのは、かなりの力がいると気がついた」(辻本氏)。意識をなくして横たわる人間は、体重以上に重たく感じる。そこで、まわりに複数の持ち手がついている丈夫な布製のものを使えば、複数の人の手を借りながら、労せず担架に乗せることができると考えた。こうして別途開発されたのが布担架だ。
 クッション性の高い素材を使い、左右に複数の持ち手をつけた。頭部は持ったときに自然に固定されるよう工夫。担架に乗せるための補助ツールとして開発された布担架だが、コンパクトに収納でき、組立の必要もないとのことで、緊急用の担架として単体での需要も増えている。
人を持ち上げずに乗せることができる『布担架』
人を持ち上げずに乗せることができる『布担架』


■〝傍〞を〝楽〞にする
 「防災関連製品、とくに官公庁や学校などがメインの取り引き先となる製品は、浸透するのに時間がかかる」と辻本氏は言う。まずは同社がこうした製品を開発していることを認知させ、性能のよさなどを確かめてもらう。毎年必ず需要がある学生鞄などと比べれば、芽が出るには時間がかかる。だが、確実に必要とされるものだからこそ、あせらずじっくり販路を開拓していく。
 大きな災害が起きたとき、日頃からの備えによってどう対応できるかは変わる。子どもたちを突然の危機から守るためにも「いかに備えるか」の意識を高めてもらう活動を行っていく。
 こうした時間がかかる活動に、あえて同社が取り組んでいるのは、辻本氏に信念があるからだ。「経営の根幹は『はたらく』ということ」(辻本氏)。働くとは「傍(ハタ)」を「楽(ラク)」にすることだ。辻本氏は、子どもの頃、明治生まれの祖母からこう教えられた。自分の〝傍〞は誰かといえば、子どもの頃は父や母。大きくなれば近所や地域。そして偉くなれば、日本国――。「そうした〝傍〞のためになる仕事をしていく」(辻本氏)。「大和の地で縫うことにより新しい価値を生み出す」という意味が込められた「ダイワホーサン(大和縫産)」。その名の通り、高い縫製技術と知恵によって生まれた防災関連製品は、機能性の高い新製品として、いずれ日本を襲う災害から多くの人の命を助けるものになるだろう。
ダイワホーサン 辻本勝次社長<br />「社会貢献度の高い製品をつくり、世の中の役に立つことで、企業としての役割を全うしたい」
ダイワホーサン 辻本勝次社長
「社会貢献度の高い製品をつくり、世の中の役に立つことで、企業としての役割を全うしたい」



<Company Profile>
 株式会社ダイワホーサン
 奈良県宇陀市大宇陀野依220-3
 0745-83-2785
 資本金 3000万円
 従業員 26人
 http://www.h-daiwa.co.jp/
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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