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店を出したい若者の希望の光

デザインの力でまちおこし

hickory 03 travelers(新潟県新潟市)

人通りが減り、さびれる一方だった商店街に店舗を構えた若手クリエイター集団がいる。
迫一成氏が代表を務める、hickory 03 travelers(以下、ヒッコリー・スリー・トラベラーズ)(新潟県新潟市中央区)だ。同社が古い商店街に飛び込んだことで、閑散としていた街に次第に人が訪れるようになった。今では、彼らを目標として雑貨店やファッション店などを新たに展開する経営者が次々と生まれている。

■チャレンジショップで感触を得る
 どこか懐かしさを感じさせる新潟県新潟市中央区にある古町商店街。かつては神社から延びる通りに人の賑わいがあふれたが、少し前まではシャッターの閉まった店が多く、シャッター商店街となっていた。
 そんな商店街の一角にたたずむ雑貨・ファッション店「hickory 03 travelers」は、自社制作のTシャツや、新潟でつくられる〝知る人ぞ知る〟モノなどの販売を行っている。一見、単なる雑貨店だが、代表の迫一成氏は、クリエイターでありながら上古町商店街振興組合の理事という二つの顔を持つ。
店内のディスプレイは頻繁に変えている。来店する人に、何度来ても新しい発見ができる店だと思ってもらうことで、店のファンを増やしていく
店内のディスプレイは頻繁に変えている。来店する人に、何度来ても新しい発見ができる店だと思ってもらうことで、店のファンを増やしていく

 地域のマップや情報を載せたフリーペーパー「カミフルチャンネル」の発行、商店街のロゴの製作、展覧会などイベントの企画や運営…。迫氏らはクリエイターの視点から、古町の活性化のために多くの施策を行っている。
 クリエイターが町おこしに協力する事例は数多くある。しかし、その地域に直接店舗を構えて積極的に町おこしの運営にかかわるケースは全国でも珍しい。
 ことの始まりは2001年、同社が新潟市の地下街である西堀ローサ内の、ミニチャレンジショップに出店したことだ。チャレンジショップとは、市内で開業を目指す人が来店客の反応を見るため、低価格で店舗を開くことができる施設のことだ。当時、新潟の大学を卒業したばかりだった迫氏。「実は、最初は絵本作家を目指していた」と語る。自分が表現したいと思ったことを、誰の目にもわかりやすく表現するツールとして、「絵本」をつくりたいと考えたのだ。
 だが、芸術系の大学を出たわけでもなく、作品を発表する場もなかった。当時たまたま新潟市でチャレンジショップの参加者を募集していることを知り、友人2人と参加を決めた。これがヒッコリー・スリー・トラベラーズ誕生の瞬間だった。
 2坪ほどの小さな店舗で、まずは多くの人に買ってもらえるものをと考え、自分たちで描いたイラストをプリントしたTシャツを販売した。「思った以上に人気が出た」(迫氏)。また、作品を展示する場として店舗があることに意義を感じ、本格的な出店を目指すことにしたのだ。

■商店街に恩返しを
 店舗を現在の古町商店街へと移転したのは2003年のことだ。ゲームセンターやファッションビルが並ぶ繁華街とは違う、レトロな雰囲気に魅かれ、店舗を構えた。チャレンジショップ時代に支援を受けた商工会議所の人から、「こんなに人通りが少ない商店街に、本当に店を出すのか?」と何度も聞かれたという。
 だが迫氏は、「自分たちの作品とこのまちの雰囲気がマッチしていると思った」と語る。作品を気に入ってくれる人は、古町のこの雰囲気も好きになってくれるだろうと考えたのだ。
 この移転の時には、市と商店街が共同で行っている家賃補助の制度を利用した。この制度は商店街が認めてくれなければ利用できないものだ。迫氏は、新潟県出身者ではなく、古町に取り立てて縁があったわけでもない。「外から来た若者を受け入れてくれるのか?」そんな想いもあったが、思い切って町内会の会長に申し出た。すると、「快く受け入れてくれた」と迫氏は当時を振り返る。
 自分たちを受け入れてくれた商店街に、恩返しをしたい――。そう考えた迫氏は、積極的に商店街が主催するイベントや勉強会に参加した。得意とするデザインの分野から、町おこしの運営に少しずつ携わるようになっていった。
さまざまなデザインが施されたTシャツ。店内には、Tシャツだけでなく、新潟県内にある地場産品のハサミや果物のジュースなど、新潟の「ちょっといいもの」が販売されている
さまざまなデザインが施されたTシャツ。店内には、Tシャツだけでなく、新潟県内にある地場産品のハサミや果物のジュースなど、新潟の「ちょっといいもの」が販売されている

 自分たちの作品を見てもらいたい、との思いで開店した店舗だが「地域の人に喜んでもらえるものを、自分たちの目線で提案することも重視してきた」と迫氏は語る。店舗では、「日常を楽しもう」をテーマに、新潟県産の野菜でつくったジャムなどのラベルデザインといったものを改善し、お客さまに合うようにつくりかえ、販売している。
 これら商品を購入した人は、次回の来店時には、自社製品のTシャツや雑貨に興味を持ってくれる。こうして、新潟にちなんだものや新潟でつくられているものを同社で改めてデザインし、自社の製品と一緒に広めていった。

■人が出会い学び合う場をつくる
 2006年、店舗の目の前にあった老舗の酒屋が廃業することを聞き、その建物を利用したフリースペース「ワタミチ」を始めた。歴史を感じさせる目の前の建物が使われなくなってしまうことに抵抗を感じたからだ。 迫氏は常々、〝古町〟という場で、つくることや学ぶことに興味を持つ人が出会えるようにしたいと考えていた。ワタミチでは、写真や日本酒のワークショップ、作品の展示会などを行った。これらのイベントを通して「古町を好きになり、僕たちのやっていくことに賛同してくれる人を増やしたかった」と迫氏は言う。同時期に、迫氏が27歳という若さで振興組合の理事に就任したこともあり、この取り組みは瞬く間に注目を浴びた。
ヒッコリー・スリー・トラベラーズ 迫一成代表<br />「落ち着いた商店街の雰囲気が、自分たちには合っていると思った」と寂れた商店街に店を出すことを決めた理由を語る
ヒッコリー・スリー・トラベラーズ 迫一成代表
「落ち着いた商店街の雰囲気が、自分たちには合っていると思った」と寂れた商店街に店を出すことを決めた理由を語る

 ものづくりに取り組む人や生産者が、助言を求めて訪ねて来ることもある。彼らには、どのような製品にすれば売り上げが伸びるかなどのアドバイスを行う。一方で、大きなイベントなどを行う際には、彼らにも協力してもらっている。迫氏の思いに共感する人も増え「いい方向に向かっているという感触を得ている」と自信を見せる。
 今では同社の力を借りたいと、全国各地から依頼が殺到している。障害者施設のブランディングや有機栽培の植物を用いた化粧品のデザイン、町おこしについての講演会など、その依頼は幅広い。
 今後の展開について「新潟、上古町に眠っている良いものを再発見し、皆に伝えていきたい」と迫氏は意気込む。とはいえ、性急に進めるつもりは全くない。焦って自分たちらしさを失っては、元も子もないからだ。地域に根差した同社の取り組みは、全国各地のモデルケースとして広がりつつある。

<Company Profile>
 hickory 03 travelers
 新潟県新潟市中央区古町通3-556
 025-228-5739
 従業員 6人
 資本金100万円
 http://www.h03tr.com/
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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