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おむすび専門店がつくった古くて新しいドリンク

和僑商店(新潟県新潟市)

「今や知らない人がいないのでは」というほど、急速に認知度がアップした糀(こうじ)。この糀ブームの一翼を担ったという、「古町糀製造所」。糀を使った甘酒を「糀ドリンク」と称して今風にアレンジし、テイクアウトのドリンクバースタイルで提供するという新たな手法を展開。仕掛けたのは銀座でおむすび専門店「十石」を展開する和僑商店(新潟県新潟市)の、葉葺正幸社長だ。

■糀の可能性に注目
 糀からつくる甘酒を中心に、ショウガやユズ、抹茶などさまざまなフレーバーを加えた〝糀ドリンク〟を提供する「古町糀製造所」。同店誕生のきっかけは、2007年、和僑商店の葉葺正幸社長が「糀」と出会ったことだった。
 和僑商店は、以前から銀座でおむすび専門店「十石」を手がけていた。「米と発酵食品は相性がいい」(葉葺氏)。そこで、おむすびに合う食材を勉強しようと、葉葺氏のふるさとである新潟の味噌蔵や酒蔵を回っていた。そこで糀に出会ったのだ。
「甘酒」という古いイメージを、ヘルシーでおしゃれな飲み物へと一新
「甘酒」という古いイメージを、ヘルシーでおしゃれな飲み物へと一新

 とある味噌蔵で、糀をお湯で溶かして呑む甘酒を飲ませてもらった葉葺氏は、砂糖も何も入れないで飲む糀でつくる甘酒の味に瞠目した。それまで、甘酒は酒粕に砂糖を入れて呑むものだと思っていた。だが、味噌や酒の原料となる糀は、糖分がすべてアルコールに変わってしまった後の酒粕と違い、そのままで十分甘い。
 米だけで砂糖とは違う濃厚な甘さが出せる。米を発酵させたものだけあって、栄養価も高い。「こんなすばらしいものが世の中にあるのに、あまり知られていないのはもったいない」。葉葺氏は、糀を使って何かやってみたいと、約1年かけて糀についての勉強を重ねた。

■商店街活性化のための店
 「新潟の商店街に本店を構える新しい店をつくって欲しい」と新潟の知り合いに頼まれたのは、ちょうどそんな時だった。新潟市内には、かつては町の中心街として栄えた古い商店街があった。だが、賑やかだった通りも、今では人の往来が減り、寂れてしまっていた。そんな商店街に、新潟の特産である米に関係する店を出し、新潟から日本全国に発信できるような事業をつくって欲しいと依頼されたのだ。
和僑商店(わきょうしょうてん) 葉葺正幸社長<br />「時代に合わせて表現方法を変えていくことで、常にいいイメージを与えていくことができる」と語る
和僑商店(わきょうしょうてん) 葉葺正幸社長
「時代に合わせて表現方法を変えていくことで、常にいいイメージを与えていくことができる」と語る

「たとえば甘酒はどうだろう」。依頼主がふと漏らしたその一言に、葉葺氏は運命的なものを感じた。折しも、糀の勉強をしていた最中。おむすびよりもおもしろいかもしれない――。糀のことを知るにつれ、その秘められた可能性をおおいに感じていた時だった。そこで、当時一般的となっていた酒粕に砂糖を入れてつくる甘酒ではなく、糀を使った飲み物を提供する店を開こうと準備を開始した。
 糀は味噌や酒づくりには欠かせない、昔ながらの食材だ。こうした伝統食には「古くさい」という先入観がつきまとう。それを、現代の若者にもわかりやすい形で表現しようと知恵を絞った。
 店舗の外装や内観は、昔ながらの伝統的な食材だということがイメージできるよう、古材を壁に使い店構えも昔の蔵をイメージさせるものにした。それでいて、今風のおしゃれな飲み物という側面を持たせるように、パッケージデザインを考えた。味のバリエーションに関しても、ユズや抹茶、シソなど、糀に合うものを取り揃えた。さらに、味だけでなく、緑や黄色、紫など、ポップな彩りとなることも素材選択のポイントとなった。
東京のデパートにも出店。素材のよさ、味のよさはもちろんのこと、パッケージのデザインもほかの店と並んだ時に「選んでもらえる」ように工夫を重ねている
東京のデパートにも出店。素材のよさ、味のよさはもちろんのこと、パッケージのデザインもほかの店と並んだ時に「選んでもらえる」ように工夫を重ねている


■元からあるイメージを払拭
 また、「〝甘酒〟という言葉のイメージが、糀のよさを押しとどめていると思った」と葉葺氏は言う。
 同社が手がける以前に、糀を使ってつくった甘酒を売り出す店がなかったわけではない。だが、「甘酒」といえば、葉葺氏が最初に思っていたように、酒粕に砂糖を入れたものというイメージが定着していた。しかし糀でつくる甘酒には、アルコール成分は含まれない。〝酒〟という言葉には、そのままアルコールというイメージがある。そのため、ノンアルコールだと説明しても、「車で来たから」「子どもには飲ませられない」と、言葉のイメージだけで購入者を狭めてしまっていたのだ。
 そこで、葉葺氏は、「甘酒」という言葉を廃し、「糀ドリンク」と名付けた。
甘みの強い糀を新たに開発することで、砂糖を一切使わない、糀だけの甘さのアイスクリームをつくることに成功。夏に向けての売れ筋商品だ
甘みの強い糀を新たに開発することで、砂糖を一切使わない、糀だけの甘さのアイスクリームをつくることに成功。夏に向けての売れ筋商品だ

 同社では、新潟に店舗を出してすぐ、東京のデパートなどの催事への出店も行っていた。2009年、まだ糀ブームが訪れる前のことだ。当時、〝糀〟は年輩の人には懐かしい、若い人には耳慣れない言葉だった。「なつかしいわね」と言う人や「コウジって何?」と興味を持ってくれる人が次々と試飲カップを手に取った。そこで「米の甘さだけで砂糖を一切使っていない」、「米を発酵させたもののため、栄養価も高い」とよさを説明した。すると、糀ドリンクは、瞬く間に売り切れた。「催事では、1週間で売る予定で持ってきたものが、3日で売り切れた」と葉葺氏は言う。
 こうして新潟に本店を構える「古町糀製造所」は、都心部でもその名を広めていった。2012年には、自由が丘に出店。現在では、銀座や北千住にも店舗を広げている。
 「古いものを古いままに魅せる」というやり方も一つだろう。だが同社では、昔からあるいいものを、今の時代にあった見せ方でわかりやすく表現した。表現方法を工夫することで、若者にも年配者にも「素敵ね」と言われる商品をつくりだしたのだ。
 時代に受け入れられる新たな製品として「糀」を世に広めている「古町糀製造所」。今後は、ヘルシーな日本の飲み物として、海外への進出を考えているという。新潟から始まった〝糀〟旋風は、世界へと広がっていく。


<Company Profile>
 株式会社和僑商店
 新潟県新潟市中央区古町通二番町533
 025-228-6570
 資本金 4328万円
 従業員 48人
 http://www.furumachi-kouji.com/
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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