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こけし×漆×鳴子温泉という融合

伝統工芸をブランド化して世界へ発信

NARUKOプロジェクト実行委員会(宮城県仙台市)

二つの伝統的工芸品を組み合わせた、新たなインテリアが人気だ。
日本独自の文化が生み出した伝統工芸を新たにデザインし、現代のライフスタイルに合わせてアレンジした「NARUKO」は海外展開を視野に、売り出している。

■二つの伝統工芸を一つに
 「鳴子こけし」と「鳴子漆器」。宮城県大崎市鳴子地区(温泉)には、経済産業省が認定した二つの伝統的工芸品がある。だが、多くの伝統産業がそうであるように、鳴子の伝統工芸品も、後継者不足や販路の縮小により、産業として下降線をたどっていた。
 「受注は低迷し、20年前と比べるとおよそ半分の出荷額となっていた」。NARUKOプロジェクト実行委員の熊谷弘夫氏は、2006年のプロジェクト発足時の現状をこう語る。後継者不足も問題となっていた。「このままでは伝統が消えてしまう」との危機感から、鳴子の工芸品を新たにデザインし、「NARUKO」ブランドとして再生させるNARUKOプロジェクト(以後、NARUKO)が立ち上がった。
積み木のような遊び心で多くのバリエーションを可能にするNARUKO。曲線的なフォルムが特徴的だ
積み木のような遊び心で多くのバリエーションを可能にするNARUKO。曲線的なフォルムが特徴的だ

 東北地方には経済産業省が認定する伝統的工芸品は21品目ある。だが、鳴子のように一地域に二つの伝統的工芸品があるのはめずらしい。そこで、「この二つのよさを生かし、従来にない新しい商品をつくろう」と発想した。そんな中、中小企業庁が04年に開設した「JAPANブランド育成支援事業」に採択されたことも追い風となった。これにより、国からの補助金を受け、じっくりと商品開発を行うことができるようになったのだ。
 商品を開発するにあたり、まず考えたのは「誰を」ターゲットに設定するかだ。景気の低迷で国内の需要は落ち込んでいた。日本の伝統工芸品が海外、特に欧米に人気があるという現状もあった。そこで、欧米に目をつけ、どんなスタイルが好まれるか綿密に調査した。「どこをターゲットにするかで、商品のコンセプトが変わる。一番重要な作業として時間をかけた」(熊谷氏)。ここまでの作業に実に1年をかけたという。

■生活スタイルに合うデザインを
 ヨーロッパ、特にフランスでは「ロハス(※)」という、自然と共生しながら健康的に暮らすスタイルが流行していた。こけしや漆器のように、木と漆という自然素材を扱う商品は、ロハスの考え方とマッチする。また、鳴子には豊かな自然がある。その背景にあるストーリーを併せてブランド化することで、ロハスを好む人たちに受け入れられるだろうと考えたのだ。こうしてターゲットをヨーロッパのロハスを好む層に設定し、漆器とこけしの技術を使った新たな商品づくりが開始された。
 ロハスという生活の中で使うものをつくることを考えると、日本の昔ながらの生活様式とはもちろん違う。さらに、ロハス層には自分らしい個性的な生活空間を演出したいと考える人が多いことを知った。
 そこで家の中でも特に「個人で使う」商品に注目。クリスマスや感謝祭などのイベントで一人1個ずつ使用するキャンドルホルダーや、一人用のコーヒーテーブルなどが商品として考えられた。 また、こけしはもともと木地玩具、子どものおもちゃだ。遊び心を取り入れて、積み木のようにいくつかのパーツや柄をジョイントし、重ねて一つのものになる形を採用した。各パーツは好きな色や柄を選ぶことができる。こうしてカスタムメイドという「ほかにない自分だけのモノ」を手に入れることができるように工夫した。「カスタムメイドの商品はつくり手にとっては手間のかかるもの。でも使い手の志向を考えた結果生まれた」(熊谷氏)
キャンドルスタンド/1個・27000円(税込)<br />※漆の仕上げ方法、組み合わせにより価格は変動
キャンドルスタンド/1個・27000円(税込)
※漆の仕上げ方法、組み合わせにより価格は変動

 このように綿密なターゲティングと、コンセプトづくりに沿った商品づくりは行われた。だが、職人たちには苦労の連続だったという。とくにパーツを組み立てる方式は、内側にボルトネジを組み込まなければならない。また、テーブルの足や大きなキャンドルスタンドは、ウェーブのかかったデザインが施される。パーツを組み合わせた時、ウェーブがきちんと合わさるようにつくるのは大変だったという。
 さらに、漆器職人とこけし職人という、これまで共同作業をしたことがない職人同士。どう作業を分担していくのか、その仕組みを構築するまでは、ぶつかり合い、話し合いが何度も行われた。だが、「鳴子を世界に広めたい」という思いは一つ。やりながら、新たな関係性を築いていったという。

■手づくりと量産のバランスを
 プロジェクト発足から6年が経過し、ワインクーラーやテーブルランプなど、アイテムは少しずつ増えていった。最近では、アメリカからギフト用に仕入れたいというオーダーもきているという。だが、「アメリカで売るなら量産体制を整えてから」と熊谷氏は言う。
商品だけを売るのではなく、NARUKOというブランドを見せるためのウェブサイト。コンセプトは鳴子の背景を見ることができる
商品だけを売るのではなく、NARUKOというブランドを見せるためのウェブサイト。コンセプトは鳴子の背景を見ることができる

 現在、NARUKOは木地から漆塗りの仕上げまですべて手づくりだ。そのため、発注から商品ができるまで3カ月かかる。特にキャンドルホルダーはクリスマスギフト用にアメリカに輸出すれば、すぐに大量の発注がくることが予想される。そうなると、現在の生産体制ではとても対応できないというのだ。「木地をろくろ挽きで量産することができれば、大量発注に対応できる」(熊谷氏)。今後は木地については、ろくろ挽き機械での生産を可能にし、キャンドルホルダーなど、量産でつくるものと、コーヒーテーブルなどすべて手づくりの一点ものと、二つの方向で生産できるようにしていきたいという。
 日本の伝統的工芸品を融合し、ヨーロッパの生活様式に合う商品へと変換させることで新たなJAPANブランドを構築したNARUKO。和モダンといえるそのスタイルは、現在国内でも高級インテリアとして話題となっている。ヨーロッパをターゲットにしたことで、既存の「和」という枠を越え、現代のスタイルにもマッチした。そのスタイルは、今後もさらに進化していくだろう。

※ロハス(LOHAS):Life of Healthand Sustainabilityの略、持続可能な健康的な生活を重視するライフスタイルを指す

<Organization Profile>
NARUKOプロジェクト
宮城県仙台市泉区福岡字高梨47(売れる店づくり研究所内)
022-275-7171
http://naruko-japan.ureru-mise.com/

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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