“忍者文字トイレットペーパー”が人気 | Biz STYLE

Biz STYLE 経営者・経営幹部のための総合経営情報サイト

Biz STYLEホーム > ビジネスマガジン > “忍者文字トイレットペーパー”が人気

ビジネスマガジン

読めないから楽しい!

“忍者文字トイレットペーパー”が人気

月刊「WizBiz」2011年1月号より

日本に漢字が渡来する以前から存在していたとされる神代文字。
伊賀忍者は極秘事項を伝達する際に、この文字を使用したという。彼らのふるさとにある上野印刷(三重県伊賀市)では、そんな忍者文字を印刷したトイレットペーパーを発売、注目を集めている。

■忍者文字が町を盛り上げる
 伊賀忍者のふるさととして知られる三重県伊賀市。2010年に入って、町のいたるところで謎の文字を目にする機会が増えている。

 蛇のような曲線を組み合せた文字。これこそ伊賀忍者が解読を防ぐために使用したとされる「忍者文字」だ。
 上野印刷の池澤素直社長はその特徴について「パッと見て文字だということは理解できると思うが、書いてある内容まで解読できる人は絶対にいない」と語る。
 この文字が広まるきっかけは、2009年の地元商工会議所の観光部会で持たれた会合にある。伊賀忍者で「まちおこし」の企画を議論する中で、ある参加者から「〝忍者文字〟を使ってみてはどうか」という案が出た。
 かつて伊賀忍者が日本古来の神代文字を使用したという話はほぼ全員が知っていた。ただ〝忍者文字〟の響きに新鮮さがあった。
 こうして観光客に楽しんでもらうことを目的に、町中を忍者文字で埋め尽くすための取り組みが始まった。
 この部会のことを聞いた、伊賀上野観光協会副会長でもある池澤氏も「地元に育ててもらった会社である以上、これに印刷会社として貢献したい」と考えた。そこで神代文字のフォント作成に着手、完成したフォントはウェブサイトから無料ダウンロードできるシステムを運営主体の商工会議所に提供した。無料としたのは、全国に〝忍者文字〟の存在を知ってもらうために自由な利用がなされなければと考えたからだ。
 また商工会議所は地元企業を対象に、店頭看板に忍者文字の使用を促した。同所の募集に応じた企業に対し、上野印刷では看板に業種を忍者文字で書き変えた。
 忍者文字を使おうとする企業が増え、看板から和菓子屋の饅頭にまで、町中に忍者文字が広まった。

■巻物をモチーフに商品を開発
忍者文字が刻まれた“クリアファイル”のカタログ。藤林左武次保武著の忍術兵法書『萬川集海』の一節が忍者文字で書かれている
忍者文字が刻まれた“クリアファイル”のカタログ。藤林左武次保武著の忍術兵法書『萬川集海』の一節が忍者文字で書かれている
 上野印刷は、看板の仕事を請け負うだけでなく、印刷技術を生かした商品開発にも取りかかった。
 最初は、Tシャツやクリアファイルなどに忍者文字を加え、身近なものから商品化した。
 ただ「これらの商品だけではインパクトを欠いていた」と池澤氏は振り返る。
 より忍者文字を生かした商品を開発すべく、上野印刷では連日のようにアイデア会議を開いた。
 そんな中、営業担当者から巻物をモチーフにしたトイレットペーパーの案が出された。池澤氏は「売れるかどうかではなく、見た人を楽しませる商品になれば」とこの案を採用。
 試作を重ね、しっくりくる大きさやデザインを確かめた。
伊賀忍者が用いた文字を解読する手引きとなる「忍法 虎之巻」。パッケージも忍者をイメージした白地と黒地で統一されている
伊賀忍者が用いた文字を解読する手引きとなる「忍法 虎之巻」。パッケージも忍者をイメージした白地と黒地で統一されている
 制作開始から約3カ月。忍者文字を50音順に印刷したトイレットペーパー「忍法 虎之巻」はこうして2010年8月に完成した。

■話題性が売り上げにつながる
「忍法 虎之巻」に書いてある忍者文字は、ほとんど解読不可能だ。だが読めないことが逆に好奇心を掻き立てるのか、地元商店やインターネット通販での反響は当初から大きかった。忍者の里という地域性を生かした商品としてメディアにも取り上げられ、話題づくりという当初の目的は達成された。
 この商品はセールスよりも「楽しませること」を念頭につくられた。そのため初回生産は1000個と少なかった。ところが発売から3カ月たった10月時点で完売。当初の予想を裏切る売れ行きを示している。
 池澤氏はこうした反響に関し、伊賀出身の松尾芭蕉が自身の俳諧のことを論じた言葉「夏炉冬扇(かろとうせん)」を借りてこう解説する。
「情報という漢字は、情けに報いると書く。情報社会といわれる現代にあっても、気持ちを後世まで伝えられる仕事がしたい」(池澤氏)
「情報という漢字は、情けに報いると書く。情報社会といわれる現代にあっても、気持ちを後世まで伝えられる仕事がしたい」(池澤氏)

「開発したトイレットペーパーは、夏の囲炉裏や冬の扇と同じで、必要なものではないかもしれない。ただ、芭蕉さんのこころと同じように、〝楽しもう〟とする気持ちを本来、誰もが持っていることを実感した」(池澤氏)
 今後は、地元の財産である忍者文字のアイテムを増やし、商品展開の幅を広げていくつもりだ。池澤氏は言う。
「観光客の訪れをただ待っているだけでは、地域はダメになってしまう。こちらから積極的にきっかけをつくり、人と交わりながら地域活性化につなげていく。
厳しい時代だが、地域と一体になって取り組めば、そのつながりがいつか会社を守ってくれるはず」
 上野印刷はすでに次なる〝忍者商品〟の秘策を練っている。その全容は、忍者文字のようにまだ誰にも読めない。

<Company Profile>
上野印刷
三重県伊賀市四十九町2110
資本金 1000万円
従業員 30人
0595-21-0801
http://www.ueno-pri.co.jp/

月刊「WizBiz」2011年1月号より抜粋
定期購読の詳細はこちら(Fujisanへ)
定期購読の詳細はこちら(Fujisanへ)

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

関連カテゴリ

関連記事

関連記事

RSS Feed

Biz STYLE RSS
RSSについて
“忍者文字トイレットペーパー”が人気:中小企業経営・新規事業ほか企業経営に今すぐ役立つ! | Biz STYLE

新規事業/フランチャイズ情報:外食 | 美と健康 | 教育 | 食品流通 | 保険・不動産 | 支援ブランド
セミナー/イベント情報:経営セミナー | 事業説明会 | 経営課題別研修

Copyright ©2014 Link Solution Co.,Ltd.

経営者と経営幹部のための、経営情報・経営セミナーの「Biz STYLE | ビズスタイル」