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それは怖さの追求から始まった

夕張で産声をあげた新キャラクター

月刊「WizBiz」2011年1月号より

「気持ち悪いけどかわいい」。
そんな様子を表す言葉として使われる「キモかわいい」。
北海道夕張市発のキャラクターが、今、「キモかわいい」と人気を集めている。
開発の根底には「かわいさを目指さない」という逆転の発想があった。

■観光客がおみやげを買う様子から商品を考える
 2007年に財政破たんした北海道夕張市。経済状況が冷え込む中、この夕張でしか買えないと、若い女性を中心に人気を集めているキャラクターが「メロン熊」だ。
 メロンを食べ過ぎた熊が突然変異した。そんな設定から生まれた「メロン熊」は、その名の通り、メロンに熊の顔と手足がついた個性的な外観をしている。
人気を集める「メロン熊」。「かわいくないものをつくろうとすると、かわいくなる場合がある」(若狭氏)
人気を集める「メロン熊」。「かわいくないものをつくろうとすると、かわいくなる場合がある」(若狭氏)

 考案したのは、ワカサ観光物産(北海道夕張市)が運営する北海道物産センター夕張店の若狭翁斉店長だ。
 02年頃から店頭に立ち、観光客がみやげを選ぶ姿を毎日見ているうちに、若狭氏は「道内のどこにでも売っているようなものでは売れない」と強く感じるようになった。札幌では売っていない、空港のおみやげ売り場には置いていない。そんな独自性のある商品を店に置く必要があると考えた。
 一体何をつくればよいか。きれいでかわいいものは、ほかの商品に埋没してしまう。そこで考えたのが「メロン熊」だった。

■特産品の組み合わせで「メロン熊」が誕生
 熊をキャラクター化する場合、かわいさを打ち出すのが一般的だ。だが、「メロン熊」はかわいさではなく、本物らしさを追求している。「メロン熊」は来店する若い女性から「キモかわいい」と言われているが、若狭氏は「かわいいという観点からつくったわけではない」と言う。
 というのも、近隣の農家から「畑に熊が出た」「熊の被害にあった」という話を聞くうちに、「熊は、本当は怖いもの。その怖さを表したい」と思うようになったからだ。
 また、夕張の特産品といえば、夕張メロンが全国的に知られている。同店でも、夕張メロンの名前がつく菓子は売れ行きがよい。若狭氏の頭に、この夕張メロンと熊を合わせた「メロン熊」が浮かんだ。
 試しにぬいぐるみをつくってみたが、それでは若狭氏が意図する熊の怖さは表現しにくい。3年ほど企画を温め続けるうちに、マグネットなどに使われる素材であれば細部まで表現できるとわかった。
北海道物産センター夕張店の若狭店長が「メロン熊」のデザインを考えた
北海道物産センター夕張店の若狭店長が「メロン熊」のデザインを考えた

 若狭氏自身は実際に熊を見たことがなかったので、写真などを頼りにデザイン画を作成。夕張メロンは毎年店舗で販売しているため、形を熟知している。そのため「夕張メロンらしさを出せた」(若狭氏)。

■お客さまに疑問を抱かせることが必要
 まず「メロン熊」のマグネットをつくり、09年8月に商品化。製造会社からも「気持ち悪い」と言われながらのことだ。熊の顔のみのこのマグネットを1000個製造したところ、すぐに売り切れた。続いて2010年4月に熊の体がついたマグネットをつくった。すると新聞で取り上げられたのをきっかけにインターネット上で話題となり、4月から8月にかけて品切れ状態となった。
 購入者は若い女性のほか、年配の人が「孫のために」と買うケースも多い。また、外国人も興味を示すという。その一方、中高年の男性は「どこがかわいいのかわからない」と全く異なる反応を見せる。
「メロン熊」がヒットした理由について若狭氏は、「おみやげ売場には、かわいいものしかなく、かわいいものに消費者は飽きている。かわいさを狙ってもうまくいかない」と分析する。怖さや本物らしさを表現しようとしたことが、逆に消費者が求めるかわいさにつながったのだ。
 また、商品が多く並ぶ中、「これは何だろう」とお客さまに考えさせる商品でなければ、手にとってもらえない。「メロン熊」は今までにないキャラクターなので、お客さまに「何だろう」と思わせることが可能となった。

■地域経済活性化を目指しさらなる取り組み
 発売開始から1年経った10年夏には、「メロン熊」の購入目的で夕張を訪れる人の姿が多く見られたという。財政破たんで経済が冷え込む中、「地域の経済活性化につながれば」と若狭氏は期待を寄せる。
パンフレットの表紙に載っているのは、「メロン熊」の着ぐるみだ。宣伝に使用するため、約40万円をかけて制作した
パンフレットの表紙に載っているのは、「メロン熊」の着ぐるみだ。宣伝に使用するため、約40万円をかけて制作した
 この「メロン熊」の知名度を上げ、より多くの人に夕張へ目を向けてもらいたいと、同年12月からゲームセンターの景品としての提供を開始した。景品であれば、お金を出したからといって手に入るわけではなく、「夕張でしか買えない」という付加価値は失われない。しかし知名度を上げることはできる。
 若狭氏は「メロン熊」のヒットにあぐらをかくことなく、次なる商品の構想を練っている。
「これからも夕張に行きたいと思ってもらえるようなものをつくっていきたい」と若狭氏は抱負を語る。
 一見すると奇抜な外観の「メロン熊」。その「キモかわいい」キャラクターが背中に背負うのは、地域経済活性化への熱意だ。

<Company Profile>
ワカサ観光物産
北海道夕張市楓33
資本金 300万円
従業員 25人
0123-58-3331
http://yubariten.com/

月刊「WizBiz」2011年1月号より抜粋
本誌では、「徹底考究!「かわいい」とは何か」と題し、下記企業の事例もご紹介しています。
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※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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