mt(エムティー)/カモ井加工紙
<ヒットの証>業務用から大変身! 1億円売れたマスキングテープ
ベンチャー・リンク2009年8月号掲載
「おしゃれなマスキングテープ」として女性やクリエーターに支持されている「mt」。塗装時のはみ出しを防ぐために使用されていた「マスキングテープ」を、カモ井加工紙(岡山県倉敷市)が女性ファンの要望を受けて雑貨用に変身させた。
女性ファンの声を機に商品化
「手帳の付箋代わり」「ラッピングのリボン代わり」「ちょっとしたメモを貼るとき」││。さまざまな用途で小物や机回りをカラフルに彩ることができる「mt」。「身近なものをかわいらしく見せたい」という女性の心をつかみ、ファンを増やしている。
全国の雑貨屋や文具店での人気にとどまらず海外からも注文が入る。同社広報・企画の高塚新氏は「これほど売れるとは想像していなかった」と驚きを隠さない。
「マスキングテープ」は本来「業務用」のもの。主に工事や、プラモデル製作の際、塗装に使用されていた。女性が使うシーンはこれまであまりなかった。
それがなぜ雑貨店で、一般の女性向けに販売することになったのか。きっかけは同社に届いた熱心なファンからのメールだった。
「私たち、マスキングテープが大好きなんです」──。ある日、同社にこんなメールが届いた。送信者は東京に住む3人の女性。「マスキングテープ」のガイドブックを作るために、工場見学をさせてほしい、という内容だった。同社は戸惑ったという。
対応を検討していたところ、追いかけるように1冊の本が本社に届いた。マスキングテープをアート風にあしらった装丁のガイドブックだった。マスキングテープを使ったラッピング方法や、メモ用紙代わりに使う方法がふんだんに紹介されていた。
それを見た同社の女性社員は「かわいい」と絶賛。見慣れていたマスキングテープの新たな一面が明らかになった瞬間だった。これを受け、東京から彼女たちを工場に招待することが決まった。
マスキングテープメーカーは国内に数社ある。しかし工場見学の希望に応じた会社はカモ井加工紙だけだった。結果的にこの対応がヒットの種となった。
同社は高塚氏と販売・企画担当者の2人で、本社の工場を案内した。ゴム加工、のり塗工、テープの切断など、普段見ることができない生産工程を紹介した。
一方で彼女たちから、各社のマスキングテープの色の違い、日本にマスキングテープは何色あるかなど、貴重な情報を得た。そして「もっと色を増やしてほしい」と相談を持ちかけられた。「雑貨としてのニーズがある」と2人は確信を持った。
ファンに学ぶ広め方
どうやって「マスキングテープ」を雑貨として魅力あるものにするのか。見当もつかないことだった。そこで、発案者である女性ファンの意見を積極的に取り入れることにした。
まず色鉛筆をイメージして20色ほど作った。意見を聞き、和紙のような紙質を活かすため、渋い色を増やした。
「マスキングテープ」は粘着の質により2タイプあった。はがれにくいタイプと、付箋のようにはがしやすいタイプだ。雑貨としては「はがしやすさ」に魅力があるとの意見を受け、簡単にはがせるタイプののりを使った。
こんな意見交換を通じて新商品を完成した。「mt」と名付けたのは、偶然にも両者がマスキングテープをこう呼んでいたからだ。
世界が認めた美しさ
「mt」は2008年2月に発売された。商品の包装や商品紹介のパンフレットは、見た目がかわいらしくなるようデザインした。商品のディスプレーも工夫した。業務用とはおよそ似ても似つかないものになった。ガイドブックにあったような「mt」の使い方を、店頭でも紹介した。販売店も「こういう見せ方もあるのでは」と提案を出してくれたという。
「mt」発売後、ファンサイトが開設され、ガイドブックも発売された。さらにファンレターが本社に届き、展示会では差し入れをもらうこともあったという。
「mt」は08年のグッドデザイン賞を受賞した。09年1月には、パリで行われた世界的なインテリアの見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展した。
日本の伝統的な模様を施した柄が「きれい」と評価され、有名ファッション誌「エル」で紹介された。今では1日2~3件は海外から注文が入るようになったという。
発売から1年を経ずして、世界へ躍り出た「mt」。しかし高塚氏は「今はブームだが、去ったときに忘れられないよう、定番化したい」と慎重だ。
熱心なファンの声を大切にしながら作り上げた「mt」。頼もしい味方を持つその歴史は、まだ始まったばかりだ。
Company Profile
カモ井加工紙
岡山県倉敷市片島町236
資本金 2400万円
売上高 59億円(08年11月期)
従業員 202人
086-465-5812
http://www.masking-tape.jp/
![]() 雑貨用に販売した「mt」。おしゃれに包装されている。 |
全国の雑貨屋や文具店での人気にとどまらず海外からも注文が入る。同社広報・企画の高塚新氏は「これほど売れるとは想像していなかった」と驚きを隠さない。
「マスキングテープ」は本来「業務用」のもの。主に工事や、プラモデル製作の際、塗装に使用されていた。女性が使うシーンはこれまであまりなかった。
それがなぜ雑貨店で、一般の女性向けに販売することになったのか。きっかけは同社に届いた熱心なファンからのメールだった。
「私たち、マスキングテープが大好きなんです」──。ある日、同社にこんなメールが届いた。送信者は東京に住む3人の女性。「マスキングテープ」のガイドブックを作るために、工場見学をさせてほしい、という内容だった。同社は戸惑ったという。
対応を検討していたところ、追いかけるように1冊の本が本社に届いた。マスキングテープをアート風にあしらった装丁のガイドブックだった。マスキングテープを使ったラッピング方法や、メモ用紙代わりに使う方法がふんだんに紹介されていた。
それを見た同社の女性社員は「かわいい」と絶賛。見慣れていたマスキングテープの新たな一面が明らかになった瞬間だった。これを受け、東京から彼女たちを工場に招待することが決まった。
マスキングテープメーカーは国内に数社ある。しかし工場見学の希望に応じた会社はカモ井加工紙だけだった。結果的にこの対応がヒットの種となった。
同社は高塚氏と販売・企画担当者の2人で、本社の工場を案内した。ゴム加工、のり塗工、テープの切断など、普段見ることができない生産工程を紹介した。
一方で彼女たちから、各社のマスキングテープの色の違い、日本にマスキングテープは何色あるかなど、貴重な情報を得た。そして「もっと色を増やしてほしい」と相談を持ちかけられた。「雑貨としてのニーズがある」と2人は確信を持った。
ファンに学ぶ広め方
![]() 「スイート」の組み合わせでラッピングした5色セットの「mt」(850円)。ほかに「渋い色」「明るい色」などがある。 |
まず色鉛筆をイメージして20色ほど作った。意見を聞き、和紙のような紙質を活かすため、渋い色を増やした。
「マスキングテープ」は粘着の質により2タイプあった。はがれにくいタイプと、付箋のようにはがしやすいタイプだ。雑貨としては「はがしやすさ」に魅力があるとの意見を受け、簡単にはがせるタイプののりを使った。
こんな意見交換を通じて新商品を完成した。「mt」と名付けたのは、偶然にも両者がマスキングテープをこう呼んでいたからだ。
世界が認めた美しさ
![]() カモ井加工紙広報・企画の高塚新氏。「自社だけではここまでヒットしなかった。ファンが支えてくれた」 |
「mt」発売後、ファンサイトが開設され、ガイドブックも発売された。さらにファンレターが本社に届き、展示会では差し入れをもらうこともあったという。
「mt」は08年のグッドデザイン賞を受賞した。09年1月には、パリで行われた世界的なインテリアの見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展した。
日本の伝統的な模様を施した柄が「きれい」と評価され、有名ファッション誌「エル」で紹介された。今では1日2~3件は海外から注文が入るようになったという。
発売から1年を経ずして、世界へ躍り出た「mt」。しかし高塚氏は「今はブームだが、去ったときに忘れられないよう、定番化したい」と慎重だ。
熱心なファンの声を大切にしながら作り上げた「mt」。頼もしい味方を持つその歴史は、まだ始まったばかりだ。
Company Profile
カモ井加工紙
岡山県倉敷市片島町236
資本金 2400万円
売上高 59億円(08年11月期)
従業員 202人
086-465-5812
http://www.masking-tape.jp/
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。


















