21世紀の大国・中国を見つめる
<莫邦富的視点>訪日中国人観光客にビジネスチャンスあり
●莫 邦富(Mo Bang-Fu)(2009年9月24日更新)
知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続ける莫氏によるコラムです。
08年、日本を訪れた中国人観光客は100万人の大台に載った。日本は観光客を海外に送り出す時代から、海外の観光客を日本に吸い寄せる時代へと変っていくことを踏まえ、莫氏は日本における観光ビジネスのあり方についての所感を述べている。
訪日中国人観光客600万人の時代を迎える
2009年7月1日から、中国人観光客に対し、日本は個人ビザの発行に踏み切った。年収25万元以上という条件付きで、適用地域も上海など3つの都市に限った措置ではあるが、大きな一歩を踏み出したと評価していいだろう。1年間の実施状況を見て、来年7月以降は中国全土に適用範囲を広げるという。
経済低迷という事情もあって、日本各地からの中国人観光客に対する期待が高まっている。地元経済を何とか振興させたいという地方の切実な気持ちも伝わってくる。08年、日本を訪れた中国人観光客は100万人の大台を初めて超えた。20年までに、それを600万人規模にしようと日本側は意気軒高に狙っている。しかし、努力次第で観光ビジネスはもっと大きく発展できると思う。
次のデータを見てほしい。
08年、海外旅行に出かけた中国人は4600万人、香港を訪れた中国本土の観光客は1600万人もいる。つまり、46人に1人しか日本に来ていないことになる。日本が定めた20年の受け入れ目標も、08年に香港を訪問した中国本土の観光客の端数に過ぎないのだ。
そこにさらに、韓国そして世界からの観光客を加えると、ビジネスの規模はいっそう大きくなる。だから、日本の努力次第で観光ビジネスが大きく成長する可能性は十分にある、と私は主張したい。
日本は、日本人観光客を海外に送り出す時代から、海外の観光客を日本に吸い寄せる時代へと変っていく。そこで意識の転換が求められる。いかに外国人観光客の立場に立って、日本の受け入れ態勢を完全なものにするか。それが観光立国を目指す日本の将来を左右する大きな課題だ。
中国人ブロガーでアピールする日本の観光情報
嬉しいことに、ここ最近、いろいろなところで日本側のそうした努力と意欲を感じる場面に出合っている。
まず、ジャパンタイムズからの提案で、莫邦富事務所と共同で『とっさの接客フレーズブック』を出版した。中国語、韓国語、英語、日本語の四カ国を併記し、サービス現場ですぐに役立つ表現を満載している。本が店頭に並ぶと、すぐさま旅行関係者からこうした本がほしかったという声が届いた。
また、「Japan在線」という、中国語で日本の観光や留学などの情報を紹介しているサイトがある。この9月にはブログを立ち上げた。第一陣に登場した5人の書き手は全員、日本滞在期間の長い中国人だ。居住地も南は鹿児島から、北は北海道まで日本全土にわたる。日本通の彼らの目から、彼らの感覚から、日本の観光情報を中国語で日本観光の予備軍となる多くの中国人にアピールしている。
書き手のひとりである“唐辛子”さんは、「鳳凰衛視」(鳳凰衛星テレビ放送)という香港の衛星テレビ局が運営するサイト「鳳凰網」のブログで活躍している人気ブロガーだ。大阪に暮らす彼女は、女性ならではの感覚と視点で、写真を織り交ぜながら、日常生活や町の風景を通して日本社会を紹介する。NHKラジオに相当する中央人民広播電台の「全地球中国語放送ネットワーク」に準レギュラー出演し、ブログに取り上げた日本の紹介を、ラジオの電波に乗せて全世界に広がる中国語圏に届けている。
鹿児島に住む陳躍さんは、南日本新聞に詩を掲載したりしている作家だ。鹿児島の山という山をすべて制覇した、と豪語する彼は九州を熱く語る。
北海道大学の院生である魯強さんは、来日前にTBSテレビの上海支局に記者兼通訳として勤務した経験をもっている。彼は、「北国の春」という歌を通して、また中国映画『非誠勿擾』を通して、中国で広く知られる北海道をさらに生活者として掘り下げて紹介する。北海道の景色も観光ポイントはもちろん、北国の人たちの温かい人情も伝える。
東京の会社員である“桜吹雪”さんは、豊富な医学知識と商品知識を駆使して日本の化粧品や雑貨を紹介する。中国本土で彼女のブログを参考に買い物をしている読者も多い。福井放送局に勤める女性ブロガーは日本海のすべてを中国に紹介したいと意気込む。
ほかにも、私のところに相談に来た企業を見ても、中国人観光客を見つめる日本社会の視線の熱さを感じている。各地方のサインや案内用看板に書かれた中国語表記や表現をチェックするプロジェクトを立ち上げようとする企業もあれば、中国人観光客に群馬県や山梨県を売り出そうとする旅行社もある。
訪日中国人観光客にビジネスチャンスあり、とつくづく感じる。と同時に、観光はビジネスであると同時に、外交と民間交流でもある。こうしたムードを一過性のものでなく、持続的なものにしようと意欲をかきたてられる毎日である。
●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』『日中「アジア・トップ」への条件』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
著者新刊
鯛と羊
日本と中国、食から見る文化の醍醐味
(海竜社)
莫邦富著
価格\1500(税込)
海洋国家と牧畜国家。魚の国と羊の国。食べものの違いでここまで文化が変わる! 生活が変わる! 発想が変わる。
![]() 莫邦富氏 |
経済低迷という事情もあって、日本各地からの中国人観光客に対する期待が高まっている。地元経済を何とか振興させたいという地方の切実な気持ちも伝わってくる。08年、日本を訪れた中国人観光客は100万人の大台を初めて超えた。20年までに、それを600万人規模にしようと日本側は意気軒高に狙っている。しかし、努力次第で観光ビジネスはもっと大きく発展できると思う。
次のデータを見てほしい。
08年、海外旅行に出かけた中国人は4600万人、香港を訪れた中国本土の観光客は1600万人もいる。つまり、46人に1人しか日本に来ていないことになる。日本が定めた20年の受け入れ目標も、08年に香港を訪問した中国本土の観光客の端数に過ぎないのだ。
そこにさらに、韓国そして世界からの観光客を加えると、ビジネスの規模はいっそう大きくなる。だから、日本の努力次第で観光ビジネスが大きく成長する可能性は十分にある、と私は主張したい。
日本は、日本人観光客を海外に送り出す時代から、海外の観光客を日本に吸い寄せる時代へと変っていく。そこで意識の転換が求められる。いかに外国人観光客の立場に立って、日本の受け入れ態勢を完全なものにするか。それが観光立国を目指す日本の将来を左右する大きな課題だ。
中国人ブロガーでアピールする日本の観光情報
嬉しいことに、ここ最近、いろいろなところで日本側のそうした努力と意欲を感じる場面に出合っている。
まず、ジャパンタイムズからの提案で、莫邦富事務所と共同で『とっさの接客フレーズブック』を出版した。中国語、韓国語、英語、日本語の四カ国を併記し、サービス現場ですぐに役立つ表現を満載している。本が店頭に並ぶと、すぐさま旅行関係者からこうした本がほしかったという声が届いた。
また、「Japan在線」という、中国語で日本の観光や留学などの情報を紹介しているサイトがある。この9月にはブログを立ち上げた。第一陣に登場した5人の書き手は全員、日本滞在期間の長い中国人だ。居住地も南は鹿児島から、北は北海道まで日本全土にわたる。日本通の彼らの目から、彼らの感覚から、日本の観光情報を中国語で日本観光の予備軍となる多くの中国人にアピールしている。
書き手のひとりである“唐辛子”さんは、「鳳凰衛視」(鳳凰衛星テレビ放送)という香港の衛星テレビ局が運営するサイト「鳳凰網」のブログで活躍している人気ブロガーだ。大阪に暮らす彼女は、女性ならではの感覚と視点で、写真を織り交ぜながら、日常生活や町の風景を通して日本社会を紹介する。NHKラジオに相当する中央人民広播電台の「全地球中国語放送ネットワーク」に準レギュラー出演し、ブログに取り上げた日本の紹介を、ラジオの電波に乗せて全世界に広がる中国語圏に届けている。
鹿児島に住む陳躍さんは、南日本新聞に詩を掲載したりしている作家だ。鹿児島の山という山をすべて制覇した、と豪語する彼は九州を熱く語る。
北海道大学の院生である魯強さんは、来日前にTBSテレビの上海支局に記者兼通訳として勤務した経験をもっている。彼は、「北国の春」という歌を通して、また中国映画『非誠勿擾』を通して、中国で広く知られる北海道をさらに生活者として掘り下げて紹介する。北海道の景色も観光ポイントはもちろん、北国の人たちの温かい人情も伝える。
東京の会社員である“桜吹雪”さんは、豊富な医学知識と商品知識を駆使して日本の化粧品や雑貨を紹介する。中国本土で彼女のブログを参考に買い物をしている読者も多い。福井放送局に勤める女性ブロガーは日本海のすべてを中国に紹介したいと意気込む。
ほかにも、私のところに相談に来た企業を見ても、中国人観光客を見つめる日本社会の視線の熱さを感じている。各地方のサインや案内用看板に書かれた中国語表記や表現をチェックするプロジェクトを立ち上げようとする企業もあれば、中国人観光客に群馬県や山梨県を売り出そうとする旅行社もある。
訪日中国人観光客にビジネスチャンスあり、とつくづく感じる。と同時に、観光はビジネスであると同時に、外交と民間交流でもある。こうしたムードを一過性のものでなく、持続的なものにしようと意欲をかきたてられる毎日である。
●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』『日中「アジア・トップ」への条件』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
著者新刊
鯛と羊
日本と中国、食から見る文化の醍醐味
(海竜社)
莫邦富著
価格\1500(税込)
海洋国家と牧畜国家。魚の国と羊の国。食べものの違いでここまで文化が変わる! 生活が変わる! 発想が変わる。
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

















