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液体が市場シェアを拡大

<これを読めば業界通【洗濯洗剤】>高付加価値とライフスタイル提案型でますます多様化するニーズをとらえる

月刊ベンチャー・リンク2009年4月号掲載

洗濯洗剤の市場が変わりつつある。顕著なのが液体洗剤のシェア拡大だ。スーパーなどの洗濯洗剤売り場を見ても、従来の粉末洗剤に加えて多種類の液体洗剤が並んでいる。

液体が急伸するも市場規模は横ばい

洗剤市場は大手3社のブランドが9割以上を占めている。中小メーカーは、環境性能が高いといった個性的な商品など、大手と競合しない分野で独自路線を展開。
洗剤市場は大手3社のブランドが9割以上を占めている。中小メーカーは、環境性能が高いといった個性的な商品など、大手と競合しない分野で独自路線を展開。
 経済産業省の『化学工業統計』を見ると、2005年から07年まで毎年、粉末洗剤の販売金額は前年割れだったのに対し、液体洗剤は年平均10%増の伸びを示している。08年になると伸び率の差はさらに拡大し、粉末の10%減を尻目に、液体は30%増と急伸した。現在、洗濯洗剤市場の約34%を液体が占めている。

 洗濯洗剤は、80年代前半までは粉末の4.1kgの大箱タイプが主流だったが、80年代後半、花王が小型の「アタック」を発売すると、大手メーカーが競ってコンパクト洗剤を投入し、商品の小型化が一気に進んだ。その後、水溶けと汚れ落ちと消臭効果に優れるなど、高付加価値化競争が続く。液体洗剤に目を向けると、90年代に「液体アタック」「液体トップ」などがあったものの、本格的に市場をにぎわせ始めたのはここ3年ほどのことだ。

 その理由について、トイレタリー・化粧品の専門紙『洗剤日用品粧報』を発行する洗剤新報社の袖山洋社長が説明する。

 「まず経済性。以前は、液体の方が割高でしたが、今は洗濯1回当たりのコストに差がなくなっています。次に利便性。粉末洗剤の溶け残りを気にする消費者を中心に、液体洗剤が売れているようです」

 水にさっとなじむ使い心地に加え、節水型のドラム式洗濯機が普及してきたことも、液体の伸びを後押ししているようだ。

 液体洗剤の好調でこの業界は活況のように見えるが、実際には決して楽観視できる状況ではない。液体の伸びに反比例するかのように、粉末の販売金額は減少しており、市場規模は拡大しているわけではないからだ。

 「洗剤の市場規模は約1600億~1800億円で、ここ10年ほどほぼ横ばいです。不況下でも影響を受けにくいので安定しているといえますが、半面、成熟して伸びしろがあまりない業界ともいえます」
そう袖山社長は指摘する。さらに07年からの石油高騰で原材料費が値上がりし、その余波がおさまっていない。

 「原料の買い入れは長期契約を基本とするので、価格が下がった今も高値で仕入れたものを使わざるをえません。販売価格に上乗せするわけにもいかず、コストダウンでしのいでいる状態です。この状況が早くても今年秋までは続くと思われます」(袖山社長)

 採算悪化を懸念しつつ、限られた市場のなかでシェア獲得をめぐって各社がしのぎを削っている。


現代人の生活と志向を反映させた商品が人気

 これまでの市場の変遷を振り返ると、80年代後半にもボールペンが脚光を浴びた。従来にない書き味のゲルインク(半固形状のインク)が登場したからだ。それまで不可能だった微妙な色合いも出せるようになり、特に女子中高生に支持されてカラフルな商品がヒットを飛ばした。

 その後、研究開発が加速したことで、水性インクと油性インクのそれぞれの欠点が補われ、ゲルインクに特有の優位性は今では失われつつある。これらのインクの種類の違いに代わって消費者の関心を引き寄せているのが、新たな素材、コンセプトを持った画期的な商品だ。

 パッケージには「消せるボールペン」「油性なのに滑らか」「何万通りもの組み合わせから自分流に改造できる」「軸の外装に天然素材を採用」「ガラスにも書ける」「0.25mmという極細のペン先」といった宣伝文句が躍る。

 「不良品率は極限にまで低下しています。つまり『書く』というボールペンの利用目的に関しては、差別化しにくいところまで品質レベルが到達しているのです」と神谷編集長は解説する。

 メーカーがボールペンの使い心地について調査しても、消費者から不満の声はほとんど上がらないという。このため、不便とか、わずらわしいといった問題を解決する形での商品提案ではなく、消費者の潜在的ニーズを掘り起こし、その付加価値により強烈な印象を与え、購買意欲を喚起させる手法が求められているのだ。

費用対効果に優れた中価格帯商品が人気

洗剤新報社の袖山洋社長
洗剤新報社の袖山洋社長
 「現在の市場で主流となっているのは、『高機能化、ライフスタイル提案、香りで訴求する商品』です」(袖山社長)

 漂白・除菌・防臭・柔軟効果を加え、06年に発売された「アタック ALLin」(花王)、少ない水でも洗える「アタック バイオジェル」(同、08年)、目に見えない洗剤カスまで残さない「アリエール イオンパワー ジェル」(P&G、08年)などは、洗浄力にプラスアルファの特性を付加した高機能化商品だ。

 ライフスタイル提案型商品は、洗濯をする時間帯など生活の変化に対応している。01年にライオンが売り出した「部屋干しトップ」、夜洗いにターゲットを絞った「スタイルフィット」(花王、07年)などがそうだ。

 香りは各社が力を入れている。例えば、ライオンの「香りつづくトップ」(08年)は香りが長続きする効果で消費者を引き付けてヒットしている。

 いずれも、市場を席巻(せっけん)しているのは、ほとんどが大手3社の商品だ。
 「洗濯洗剤は、花王、ライオン、P&Gの3社のブランドが9割以上を占める」(同)という寡占状態だ。一方、中小メーカーは、環境性能が高いといった個性的な商品、OEM(相手先ブランドによる製造)など、大手と競合しない分野で独自路線を展開して活路を見出している。

 こうしたなか、値頃感で注目されているのが、大手流通グループが自社開発したプライベートブランド(PB)商品だ。

セブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム」の粉末洗濯洗剤は1kg入り198円。低価格で人気がある。
セブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム」の粉末洗濯洗剤は1kg入り198円。低価格で人気がある。
 セブン&アイ・ホールディングスが展開するPBシリーズ「セブンプレミアム」の売れ筋商品に洗濯洗剤の「部屋干しOK!」がある。熊本市の三協油脂と開発し、同社がOEM生産して、08年2月から粉末、同10月から液体を売り出した。セブン&アイ・ホールディングス広報センターの伊藤真由美さんは、「商品を販売するセブン―イレブンでは、ナショナルブランド(国民的商品)の5~6倍の売れ行き」と今後の伸びに期待を寄せる。

 PBは広告宣伝費をかけず、グループ全体で計画生産をするためコスト削減に有利で、ナショナルブランドより2~3割安い価格に抑えられる。伊藤さんは、「委託生産先を明記するという安全性重視の方針に加え、日本全国、どこで買っても粉末で198円という価格も安心感につながるのでは」と分析する。

 洗濯洗剤は洗浄力だけで勝負する時代ではなくなった。機能、ライフスタイル、香り、価格など多岐にわたる消費者ニーズを吸い上げることが勝負のカギを握る。

文・上田里恵


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