社会保険労務士が公的資金の活用方法について解説します。
<助成金Q&A>中小企業緊急雇用安定助成金について
社会保険労務士・中小企業診断士 加藤美香(2009-06-17更新)
事業運営に必要な助成金の知識をわかりやすく説明します。
この助成金は、景気の変動などで生産量が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小企業事業主に支給されるものです。
従業員が50名の会社で、製造業を行なっています。景気の変動により、受注が減少し、従業員の半数を休業させることになりました。また、休業の間に従業員のモチベーション維持のために、教育訓練を行なうなどして、レベルアップもはかっていきたいと思います。このような場合に受給できる助成金がありましたら、教えてください。
中小企業緊急雇用安定助成金をご紹介します。この助成金は、景気の変動などで生産量が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小企業事業主が、その雇用する従業員を一時的に休業、教育訓練または、出向をさせた場合に、休業、教育訓練、出向について支払った手当の一部を助成するものです。
解説
1.受給するための要件
(1)次の範囲の中小企業であること
| 製造業・建設業・運輸業 その他の業種 |
資本金または出資の額が3億円以下、または従業員数が300人以下 |
| 卸売業 | 資本金または出資の額が1億円以下、または従業員数が100人以下 |
| サービス業 | 資本金または出資の額が5000万円以下、または従業員数が100人以下 |
| 小売業 | 資本金または出資の額が5000万円以下、または従業員数が50人以下 |
(2)次の(ア)または(イ)にあてはまること
(ア) 売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3カ月の月平均値がその直前の3カ月または前年同期と比較して減少していること
(イ) 前期決算などの経常利益が赤字であること(ただし、(ア)において、生産量が5%以上減少している場合は除かれます)
■要件を満たしていても次の理由では対象となりません。
○例年繰り返される季節的変動によるもの
○事故または災害により施設または設備が被害を受けたことによるもの
○法令違反、不法行為などによる行政処分または司法処分によって事業活動の全部または一部の停止を命じられたことによるもの(事業主が自主的に行うものを含む)
2.対象となる労働者の要件
(1) 雇用保険の被保険者
(2) 6カ月以上雇用されている雇用保険の被保険者以外の者(週の所定労働時間が20時間以上で、1年以上雇用される見込みのないパートタイムなど)
■雇用保険の被保険者であっても次の者は対象となりません。
○休業などが行なわれる判定基礎期間の初日の前日または出向を開始する日の前日まで同一の事業主に引き続き被保険者として雇用された期間が6カ月未満である者
○解雇を予告されている者
○日雇労働被保険者
○休業などが行なわれる判定基礎期間(※)において特定求職者雇用開発助成金、中核人材活用奨励金、沖縄若年者雇用促進奨励金、地域再生中小企業創業助成金、雇用創造先導的創業等奨励金、中小企業基盤人材確保助成金、介護基盤人材確保助成金、介護未経験者確保等助成金の支給の対象となる者
※判定基礎期間とは?
暦月または賃金締め切りがある場合においては、賃金締め切り期間のことを言います。
3.対象となる休業、教育訓練、出向の内容
(1)休業の場合
(ア)事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に行なわれるものであること
(イ)次のいずれかの休業であること
○所定労働日の全1日にわたるもの
○所定労働時間内にその事業所における対象となる被保険者全員について一斉に1時間以上行なわれるものまたは、被保険者ごとに短時間休業を行なった場合
(ウ)労働基準法に規定する休業手当以上の手当てを支払うこと
(エ)労使間の協定による休業であること
(2)教育訓練
(ア)事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に行なわれるものであること
(イ)所定労働日の所定労働時間に全1日にわたり行なわれるものであること
(ウ)就業規則などに基づいて通常行なわれる教育訓練ではないこと
(エ)労使間の協定による教育訓練であること
(オ)教育訓練実施日に通常支払われる賃金の6割を支払うこと
■対象となる教育訓練の種類
○事業所内訓練(事業所内で、生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して行なわれるもの)
○外部研修(公共能力開発施設、大学、専修学校、各種学校などの施設で実施するもの)
○委託訓練事業主団体などに委託して実施するもの(事業主団体などと委託契約を締結し、その契約に基づいて実施されるものであること)
(3)出向
(ア)事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に開始されるものであること
(イ)出向期間が3カ月以上、1年以内であって出向元に復帰するものであること
(ウ)出向労働者に出向前に支払っていた賃金とおおむね同じ額の賃金を支払うこと
(エ)労使間の協定を結ぶこと
(オ)出向労働者の同意を得たこと
(カ)出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約によるものであること
(キ)中小企業緊急雇用安定助成金及び雇用調整助成金の対象となる出向の終了後6カ月以内に同じ労働者を再度出向させるものではないこと
(ク)人事交流のためなど雇用調整を目的としないで行なわれる出向でなく、かつ、出向労働者を交換しあうような出向ではないこと
(ケ)資本的、経済的・組織的関連性などからみて、出向助成金の支給において独立性を認めることが適当でないと判断される事業主間で行なわれる出向ではないこと
(コ)出向先事業主が、労働者の出向開始日の前日から起算して6カ月前から1年を経過した日までの間に、雇用保険の被保険者を事業主都合により離職させていないこと
4.受給できる額
(1)休業および教育訓練を行なった日
休業手当または賃金に相当する額として厚生労働大臣の定める方法により算定した額の5分の4。ただし、1人1日当たり雇用保険基本手当日額の最高額が限度となります。
(2)教育訓練の訓練費
1人1日当たり、6000円を(1)に加算。
(3)出向の場合
出向元事業主の負担額の5分の4。
(出向元事業主の負担額が、出向前の通常賃金の2分の1を超える時は2分の1が限度)
ただし、1人1日当たり雇用保険基本手当日額の最高額が限度となります。
■支給限度日数
最初の1年間は200日を限度(3年間で300日)
※連続して利用できます。
5.受給するための手続き
(1)休業、教育訓練、出向について、事業所の管轄の都道府県労働局またはハローワークに「計画届」を提出します(1の判定基礎期間、2または3の連続する判定基礎期間ごと)。
(2)計画した休業、教育訓練、出向を実施します。
(3)実施した休業、教育訓練、出向につき支給申請を行ないます(判定基礎期間ごと)。
(4)審査があり助成金が支給されます。

6.よくある質問
Q1 解雇を予告して休業させる従業員については対象になりますか。
A1 対象となりません。
Q2 計画を提出した際に記載した休業日の変更は可能ですか。
A2 休業を実施する前日までに変更届を提出すれば可能です。
Q3 休業をする際に支払わなければならない平均賃金はどのように計算しますか?
A3 休業直前の賃金締切日から遡って3カ月間の賃金を暦日数で割ったものです。
Q4 休業期間中に残業を行なった場合でも助成金を受給できますか?
A4 生産の減少と連動しない突発的なもの、作業の連続性・保全業務など恒常的なものであれば認められますが、それ以外は相殺されます。
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。














