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さかもと未明の言わずにいられない

<さかもと未明>今こそ新しい時代のために見直しを

月刊ベンチャー・リンク2009年3月号

 

波乱含みで新年が明けた。年末の株価は終値が8859円56銭で年間下落率は42.12%だったという。外食産業が続々と店舗数削減を発表。トヨタ自動車も今期は空前の損失が見込まれ減産を発表した。これからますますリストラや派遣切りも行なわれそうである。

こんなご時勢なので、私も一度はアシスタントの半減、人材整理に傾きかけた。しかし、と私は考えたのだ。アシスタントを減らせば経営は一時的に楽になるが、彼女たちの受け入れ先はそうそうあるまい。ここは身を小さくして皆で乗り切るあらゆる手段を考える時だと思った。人数を減らすのではなく、それぞれの最低保障額を決めて、事業体としての資金繰りを最低限度まで下げる。原稿料の安い仕事でも請けるためのシステムを話し合いながら、今こそ新しい時代のため、新しい絵柄を模索しながら新技術を勉強することにした。年賀状も可能な限り多く出した。

そんななかで思ったのは、「不況とはいえ、最初に仕事を始めた時よりは売り上げも人脈もノウハウもある。むしろ自分にとっての『売り上げ目標』が上がりすぎて、苦しいのではないか」ということである。私は20年前、たった1枚の名刺を頼りに、漫画家になった。それが今は千枚近い年賀状をやりとりしている。むしろ1人ひとりの方との関係を粗末にし、心を失ってきた部分はなかったか。

そして連想したのは、この不況がサブプライムローンに代表される「信用経済」の失敗に起因していることだ。サブプライムだけが悪いような風潮だが、私は元々「デリバティブ」といった、実際の資金の数倍の取り引きをすること自体に疑問を持っている。そう考えれば、経済だけではない、車も、外食産業の店も、本当に必要な数より過剰に存在し、消費をあおられて取り引きされていたことも反省する時期なのではないか。

例えばお正月。40年前なら、お店が開いてなく、独身者はお惣菜も買えず、かなり困ったろう。ところが「単身者にもつらくない正月」を可能にしたのが、あらゆる意味で膨張した経済と生活習慣だ。我々はそろそろすべての過剰な達成目標や肥大化した生活を改め、あらゆる意味での「適正規模」「適正価格」を取り戻していく時期なのではないか。

どんなに不況が深刻化しても、人は食事をし、働き、家に帰り、最低限の清潔な衣服はまとう。戦争の合間でも子供は生まれ、私たちは生きていかねばならぬのだ。そのなかで役に立つこと、人の心に訴えるものを作ったり行なったりできれば、必ず道は開けるはずだ。

私は、いざとなったらアシスタントを含む仲間で寄り添って暮らそうとも考えている。「一人口は食えないが、二人口は食える」とは、最初の結婚をした時、親に言われた言葉だが、家族や仲間で寄り添って暮らせないことなどあるまい。人が集まれば気持ちに余裕も生まれ、そこからいい仕事、いい時期をうかがうこともできるだろう。食事だって自炊なら安くて栄養も十分にとれる。私も含め、女が料理しないのは反省すべきことである。そんなものは自由でも文化でもないだろう。

大切なのはそういう「表向きの自由」には見切りをつけ、本当に健康な体と経済生活を取り戻すライフスタイルを回復することだ。それが必ずや一番の景気回復策にもなる。国家もこんな時に今までどおり税金を徴収しようとしてはいけない。そんなことよりも企業の存続を助け、政府を小さくしていくことである。私も事業を縮小しながら、「どんな恐慌の波が来ても目減りしない資産」を真剣に作りたいと思う。変わらぬ資産とは「人」である。

「兵士で富は作れるが、富で兵士は作れない」とはローマの諺(ことわざ)だが、本当に追い詰められた時に、私たちは生涯の宝となる「戦友」や「家族」を探し得る。それを思えば、今はむしろ最良の仲間や家族などの関係を取り戻すのに最良の時なのである。戦後の過ちを正し、今こそ牛のように一徹に歩みだそう。



1988年玉川大学文学部英文科卒。商社OLを経て24歳で漫画家デビュー。レディスコミック誌を中心に活躍するかたわらルポやエッセイも執筆し、売れっ子となる。00年、「文学界」にて『花悩』で作家デビュー。現在、日本テレビ『スッキリ!!』(月~金、午前8時~)のレギュラーコメンテーター。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1~3』(講談社)、『右よりですが、何か?』(ワック)など。
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