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さかもと未明の言わずにいられない

<さかもと未明>“説教一郎”と“言い訳太郎”

月刊ベンチャー・リンク2009年2月号

 

久しぶりに、驚いた。2008年11月23日の記者会見で、民主党の小沢代表は、麻生総理を「チンピラ」呼ばわりしたのである。さすがに麻生氏はそれを黙殺し、改めて党首討論を求めたが、2次補正予算の提出時期や、景気、雇用対策などをしっかりと打ち出せず、さらに小沢氏の反撃を許した。2人のやり取りをして、「説教一郎と言い訳太郎」などとインターネットなどでは書きたてられている。なるほど、うまい言いまわしだと思うが、今はそんなことをおもしろがっている場合ではない。党首ともあろう人物が、国の首相を「チンピラ」扱いするとは何事か。そんな人物の説教など聞く気にはとてもなれぬ。

その後、11月28日に党首討論が行なわれた時も、小沢氏は冒頭から挑発した。「遅まきながら総理就任のお祝いを申し上げたい。就任2年半で(安倍、福田、麻生)の3人の総理にお祝いを申し上げた。近いうちに4官位目のお祝いをしなければいけないと心配している」と。しかし、首相が次々と退陣せざるを得なかったのは、小沢氏を中心とする抵抗勢力によって審議などが進まなかったからである。さらに、そこまでして反対する政党に今だ連立を云々(うんぬん)するのはわけが分からない。

麻生氏にしても記者団に対し、「雇用と賃金は生活基盤の基本だと思う。したがって企業に対しては雇用の確保と賃金の引き上げをぜひお願いしたい」などと眠たい発言をしている。壊滅的不況でそれができないから企業も国民も困っているのではないか。こんな時に一律数万円のばらまきで「景気対策」をしたなどと言われても、“おぼっちゃまのチャリティー”としか感じられぬ。資産もなく、収入激減のなかで家族を養っていく人々に対し、もっと根源的な対策を打ち出せなくて何が政治だ。

吉田茂の血を引く麻生総理は無論、小沢一郎氏も政治家の父を持つ“おぼっちゃま政治家”である。しかし私は、今さら「おぼっちゃまだからだめ」などと言うつもりはない。出自がどうであろうと、立派な政治家であってくれればそれでいいからだ。

一方で、自民党がここまで惨状をさらす現実を前に、政界再編は確かに必要だと感じている。とはいえ、私は今のまま単に数合わせに自民党と民主党が連立していくのには、断固反対である。今はむしろ、政治的信念をしっかり持つ政治家は野に下っている。そういう人々が一丸となり、まったく新しい政党を作っていくことはできないのか。かの小沢氏は、政権を取れたら命が尽きてもいいというようなことを言っているようだが、その言葉に私はまだこの国への十分な思いをまだ感じない。

ただ政権が取れればいいのでなく、この国の未来をどのようにしてよくするのか。問題はそこなのである。麻生氏も、自民党を信じるなら、党再建に向けて人材を集めるべきであるのに、こんな時に限って麻生節も封印している。国民の心にも議員の心にも響く言葉が発せられず、実に惜しい。

かつて55年体制の立役者となった三木武吉は、自民党の結成後、その命を終えている。様々な反対意見を持つ、個性も強い男たちを国のために束ねるのは、どれだけ大変だったろう。

今まさに、そういう人物、そういう方向転換が必要とされているのである。そんな時に、党首同士の論争がただのこき下ろし合戦や子供の喧嘩(けんか)では困る。なぜ、2人の党首はそんな立役者を予感させるような素振りさえ見せぬのか。

戦後、日本は驚異的な復興を成し遂げ、国会も議員宿舎もメディアも実に立派になった。しかしそこに登場する人々、交わされる言葉のレベルが低ければ、戦後の日本を命がけで牽引してきた人々の労苦も報われまい。それを肌で知り、その血脈を継ぐ人々には、それ相応の言葉を語り、国民の痛みを知った改革をしていただきたいものである。



1988年玉川大学文学部英文科卒。商社OLを経て24歳で漫画家デビュー。レディスコミック誌を中心に活躍するかたわらルポやエッセイも執筆し、売れっ子となる。00年、「文学界」にて『花悩』で作家デビュー。現在、日本テレビ『スッキリ!!』(月~金、午前8時~)のレギュラーコメンテーター。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1~3』(講談社)、『右よりですが、何か?』(ワック)など。
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