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<新商売ウォッチング>「もったいない」の発想が生んだニュービジネス

20089年5月13日更新

年が明けると、各地や各団体で画期的なニュービジネスを表彰しようという式典が多くなる。
このような式典で表彰されるようなニュービジネスこそこの厳しい経済状況を生き抜いていくヒントが隠されているのだ。

今年もニュービジネス大賞の季節が

毎年この季節になると各自治体や商工会議所が主催となって「ニュービジネス大賞」のようなものを発表し、その企業を表彰している。
このような賞をとるということは、当たり前であるが相応の努力と工夫があるのだ。そのような努力、工夫、ひらめきなどは、ビジネスの参考になるし、もしかしたら新たビジネスパートナーの発掘となるかもしれない。
そこで今回は、今年各地の「ニュービジネス大賞」を受賞した新ビジネスを紹介しよう。
既存企業のニュービジネス

まずは、埼玉県のさいたま市産業創造財団(さいたま市中央区、江田元之理事長、048-851-6652)が、優れたビジネスプランを表彰する「2008年度さいたま市ニュービジネス大賞」の受賞者の中から、最優秀賞に、輝いた「おから」を再利用した健康パウダーをご紹介する。

この「おからの健康パウダー」はさいたま市西区のWell(隈川久美子社長、048-623-6887)という会社が開発したもの。同社は、「もったいない」という想いから、産業廃棄物となる“おから”を再利用した幅広い用途に使用できる健康パウダーを開発した。利用方法としてはピザ生地など、様々な食品の原料が考えられる。さいたま市内の豆腐店との連携や、地場の原料を使うなど地産地消の考え方も取り入れている。

おからは、安価で健康的で栄養豊富な食材だが、如何せん「足がはやい(腐敗しやすい)」ことが欠点で、そのため大手豆腐製造企業なども商品化に向けて、いろいろ研究を重ねている。しかし、なかなか商品化に至っていないようだ。

おからは、豆腐の製造過程で大量に発生し、水分を多く含み、腐敗しやすく、そのままでは味が無い。この特徴がある限り廃棄するしかない運命だ。しかし、それをパウダー化という誰でも思い付きそうであるが、実は思い付かない方法で商品化したのが同社なのだ。

次にご紹介するのは、東北地方6県の企業を対象に東北ニュービジネス協議会が選定し、革新的な技術やサービスをつくり出した企業を表彰するニュービジネス大賞の中から「アントレプレナー大賞(起業家精神に富む企業経営者をたたえる賞)」に選ばれたヘイプだ。

ヘイプは、リサイクル古着店「Don Don Down on Wednesday(ドンドンダウンオンウエンズデイ)」を東北を中心に22店舗を展開している。店名からもわかるように同店のコンセプトは、「ドンな服でもドンドン買い取る」。

特に他のリサイクル企業と異なる点は、特定の曜日に買い取り額を1.5倍にすることと、売れ残った服をアフリカなどに輸出し再利用している点。買い取り額の割り増しは、誰でも考え付きそうだが、実入りが薄いリサイクル業で実際に行なうことは、かなり難しい。

また、同社のすごいところは、売れ残りを輸出するところにある。リサイクル業者の大きな悩みのひとつが売れ残りを廃棄することで、その場合少なからず廃棄料金が必要なことだ。

今や家庭ゴミですら有料の時代で、消費者の中には、ゴミ費用を出すくらいなら「無料でも良いのでリサイクル業者に引き取ってもらおう」と思っている人も多いと聞く。そのように引き取られた中古品は、良い物が豊富にある日本においては、購入されることは極めて少ない。

そのため、結局はリサイクル業者が費用負担し廃棄しているのだ。しかし同社は、廃棄せざるを得ない古着などを物が無いアフリカなどに輸出している。費用を掛けて廃棄するものが、小額とはいえ売り上げになっている。もともと仕入れ値はタダなのでこれで十分だそうだ。そしてこのことが、特定の曜日に買い取り額を1.5倍にできる資金になっている。この発想の転換こそ、「起業家精神に富む企業経営」として賞されたのだ。

最後に、表彰されマスコミに語った同社社長岡本氏の喜びの声で締めたいと思う。「たくさんの人に評価してもらい、応援してもらっての受賞で本当にありがたい。今後、また全国に事業を広げていきたい」
夢は全国展開なのだ。

大学生もニュービジネス

企業ばかりではない、これから社会の一員となる大学生、専門学校生などもニュービジネスを生み出しているのだ。その中の大学生のニュービジネス大賞「第5回キャンパスベンチャーグランプリ」の受賞者から、面白いビジネスアイディアを紹介しよう。

大阪大会の大賞を獲得した京都大学の大溝俊充さんらの「学生食堂メディア事業『ナプメディア』」。京都大学といえば、日本最高の大学の一つだ。その京都大学の学生が考案したニュービジネスである、ものすごい技術やものすごい工夫がされていると思いがちだ。

名前も「ナプメディア」と今流行の「ナノテク」を連想させる(実際に検索エンジンで「ナプメディア」と検索すると「ナノメディアの間違いでは」と表示される)。しかし、その実態は、飲食店に置いてある紙ナプキンに広告を入れたものである(彼らは大学生のため学生食堂の紙ナプキンが発想の原点)。「なぜ、それに気づかなかったのだろう。」と思ってしまうような単純なニュービジネス。

日本の飲食店の大部分の店舗で紙ナプキンは使用されて、しかも大量に。時には「すかいらーくグループ」のように自社のブランド名を印刷している企業もある。それなのに、なぜ広告は見かけたことはほとんどない。まさにこれも発想の転換なのである。

「紙ナプキンは使い捨てのゴミ。だから保持してもらう必要のある広告媒体として相応しくない」というのが今までの常識であった。では、路上で配布されているチラシは、企業に大量にくるDMは、新聞折り込み広告は、これらは結局受け取った人が興味を持っている事柄でなければゴミだろう。紙ナプキンと同じではないか。

路上で配布されているチラシは受け取る人さえ少ない。しかし紙ナプキンは違う。飲食店で食事をすれば、必ず使用する。日常の動作の中で、何か書いてあれば読んでしまうのが人間だ。

どうせ、捨てられてしまう運命であれば、必ず受け取ってもらえる紙ナプキンは有効な広告媒体となり得ると彼らは踏んだのだ。しかも飲食店には、若者向けから中高年、高齢者向けとある程度客層が決まっているのでターゲット層に合わせた飲食店にピンスポットで設置できる利点もある。

最後に

今回紹介した3例に共通していることは「もったいない」。おからも日本人は誰も買わない古着も紙ナプキンもそのままではゴミまたはゴミなる運命。しかも処分にお金がかかる産業廃棄物。それを発想の転換とちょっとの工夫でビジネスとして成立できたのだ。

何も難しい技術や天才しか考え付かないようなアイディアでもない。言われてみれば、誰でも思い付くし誰でもできそうなことだ。

今回紹介した企業は、資金が潤沢にある大企業ではない。または学生のアイディアだ。彼らと私たち何が違うのか?何も違わない。ということは、誰でも、日常生活をもう一度見直すことによって、大きなビジネスチャンスを掴む事ができるかもしれない。

物が豊富にあり、余裕がある日本だからこそ、このようなビジネスが生まれてくるのかもしれない。  

※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

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