21世紀の大国・中国を見つめる
<莫邦富的視点>ビジネス現場からのニュースレター
●莫 邦富(Mo Bang-Fu)(2009年3月4日更新)
知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続ける莫氏によるコラムです。
寸暇を惜しんで大量に届くビジネスレターに目を通しているという筆者。今回は、そのなかから得た収穫をもとに、上海で成功した企業と失敗した企業の違いを分析している。
上海で成功した日系企業と失敗した日系企業
私のところには雑誌や新聞など月に60点ほどの印刷刊行物が届く。月刊誌や週刊誌、新聞から、宗教団体や市民団体が発行するニュースレターまでさまざまなものがあり、すべてに目を通すのは到底不可能である。それでもできるだけ情報を広く吸収したいという思いで、それこそトイレに行く時も利用するほど、なるべく時間を作っていろいろな書物を読むよう努力している。そこから意外な収穫を得ることも多い。
例えば、先日、高井伸夫法律事務所のニュースレター「Management Law Letter」09年新春号を読んだが、そこに掲載された文章に感銘を受けた。
ひとつは食品関連の日系企業のアンテナショップが集まる上海久光百貨店の営業部長永井竜司氏が書いた文章だ。同百貨店で成功した日系企業を通した、中国でのビジネスの成功と失敗の分水嶺についての永井氏の分析は面白い。
世界各国を回っている中国人富裕層は目が肥えている。成功企業の場合は、こうした客を満足させるために、「お客様の嗜好の二歩も三歩も先を考えて商品を企画し、生産ルートに乗せています」「現地用に企画対応した商品の取り揃えも怠りません。高いグレードを常に維持する努力を行なっております」
逆に失敗企業の場合は、「来店数、地域消費者年収、同業他社売上、商品回転数などの効率を求めた数字に振り回され、適正な商品内容での出店ができていない」「売れ筋の商品も日本本社に押さえられてしまい、不人気商品か安価商品で売り場を回そうとする」といった特徴をもつ。つまり、「日本本社の上海に対するコンセンサスが欠け、現地化が進んでいない」のだ。
成功例の多い台湾企業や韓国企業に学ぶべきだと暗に呼びかけると同時に、物があり余る中国で成功するためには、「日本では成功している一流ブランド商品であっても、こちら(中国)に入った瞬間はブランドではないこと」を認識すべきだ、とアドバイスしている。
日系企業はなぜ人気がないのか
もうひとつの文章もなかなか示唆的である。高井伸夫法律事務所北京代表所の六本昌平顧問が書いたものである。日系企業の人材と人気の問題にメスを入れている。
中国に進出して十数年も経過しているのに、中国人への技術移転が進んでいない問題を取り上げ、「いまだに核心技術は日本人が握って離さない」という現象を指摘した。「砂の中の金」と形容されている中国の人材だが、実際は「溝に掃いて捨てるほどいる、世界レベルから見ても高度な教育を受けた若者が、明日を夢見て磨かれるのを待っている」と力説している。
日系企業の人気のなさについては、その最大の理由は「すべての点で日本を前提としたシステムがそのまま中国に持ち込まれている(日本離れしていない)点にあり、中国人を生かす道が見えてこないからである」と分析し、「技術指導する日本人も“日本ではこうです”の一点張りである」と問題の核心に迫る。
中国人を日本人化するのもひとつの道だが、「日本人の若者に将来を託さないのなら、日本の技術を中国人に合うように進化させる道を探るしかない」と提案も出している。
●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』『日中「アジア・トップ」への条件』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
著者新刊
中国ビジネスはネーミングで決まる
(平凡社新書 428)
莫邦富著
価格¥735(税込)
十三億の人口を抱え、各国の企業が熾烈なシェア争いを繰り広げる巨大市場・中国。 その消費者の心をつかむにはどうしたらいいか。「三得利」(サントリー)、「馬自達」(マツダ)、「可口可楽」(コカコーラ)など、企業やブランドのネーミングから中国ビジネス成功の鍵を探る。
![]() 莫邦富氏 |
例えば、先日、高井伸夫法律事務所のニュースレター「Management Law Letter」09年新春号を読んだが、そこに掲載された文章に感銘を受けた。
ひとつは食品関連の日系企業のアンテナショップが集まる上海久光百貨店の営業部長永井竜司氏が書いた文章だ。同百貨店で成功した日系企業を通した、中国でのビジネスの成功と失敗の分水嶺についての永井氏の分析は面白い。
世界各国を回っている中国人富裕層は目が肥えている。成功企業の場合は、こうした客を満足させるために、「お客様の嗜好の二歩も三歩も先を考えて商品を企画し、生産ルートに乗せています」「現地用に企画対応した商品の取り揃えも怠りません。高いグレードを常に維持する努力を行なっております」
逆に失敗企業の場合は、「来店数、地域消費者年収、同業他社売上、商品回転数などの効率を求めた数字に振り回され、適正な商品内容での出店ができていない」「売れ筋の商品も日本本社に押さえられてしまい、不人気商品か安価商品で売り場を回そうとする」といった特徴をもつ。つまり、「日本本社の上海に対するコンセンサスが欠け、現地化が進んでいない」のだ。
成功例の多い台湾企業や韓国企業に学ぶべきだと暗に呼びかけると同時に、物があり余る中国で成功するためには、「日本では成功している一流ブランド商品であっても、こちら(中国)に入った瞬間はブランドではないこと」を認識すべきだ、とアドバイスしている。
日系企業はなぜ人気がないのか
もうひとつの文章もなかなか示唆的である。高井伸夫法律事務所北京代表所の六本昌平顧問が書いたものである。日系企業の人材と人気の問題にメスを入れている。
中国に進出して十数年も経過しているのに、中国人への技術移転が進んでいない問題を取り上げ、「いまだに核心技術は日本人が握って離さない」という現象を指摘した。「砂の中の金」と形容されている中国の人材だが、実際は「溝に掃いて捨てるほどいる、世界レベルから見ても高度な教育を受けた若者が、明日を夢見て磨かれるのを待っている」と力説している。
日系企業の人気のなさについては、その最大の理由は「すべての点で日本を前提としたシステムがそのまま中国に持ち込まれている(日本離れしていない)点にあり、中国人を生かす道が見えてこないからである」と分析し、「技術指導する日本人も“日本ではこうです”の一点張りである」と問題の核心に迫る。
中国人を日本人化するのもひとつの道だが、「日本人の若者に将来を託さないのなら、日本の技術を中国人に合うように進化させる道を探るしかない」と提案も出している。
●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』『日中「アジア・トップ」への条件』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
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(平凡社新書 428)
莫邦富著
価格¥735(税込)
十三億の人口を抱え、各国の企業が熾烈なシェア争いを繰り広げる巨大市場・中国。 その消費者の心をつかむにはどうしたらいいか。「三得利」(サントリー)、「馬自達」(マツダ)、「可口可楽」(コカコーラ)など、企業やブランドのネーミングから中国ビジネス成功の鍵を探る。
※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。
















